とある村の一角で遊ぶ多種多様なまだ成人と呼ぶには早すぎる女の子達。
勿論、多種多様ということは何も肌の色でという意味ではない。
ワーウルフ、アラクネ、リザードマン…
人間の女の子もいる。
ただその中でも一際目立つものがいて…
「アリーシアちゃん! 今日は何して遊ぶの!?」
「んー? んー…何がいいかなぁ?」
「私ね、私ねっ! 鬼ごっこがいい♪」
アラクネの子がリーダーの色白なインプに声をかけるとそのインプは皆ヘと視線をぐるりと見渡して人差し指をハートマークのアクセントだろうと思われるへツンと当てると顔を左右へ振り子のように動かし始めて「うーん…」と唸ってしまった。
そこへ「はいはいはーいっ!」と元気良く尻尾を振って声を出すのはワーウルフの活発そうな印象の女の子でありその女の子が意見を出すと黙っていたほかの子達もどんどんしゃべり始めるのは道理である。
「えー、この間は君の一人勝ちだったじゃなーぃ! オママゴトしようよ! リアルな」
「だったら男の子呼んでリアリティを追求しましょ♪」
『おぉ…』
流石は魔物。
リアリティの追求は大切だよね♪
そしてそのリアルオママゴトを提案したアラクネの子を筆頭に魔物の皆は口元が歓喜で歪んでいるのは…しかたないよね♪
「…」
「…ん?」
そんな異常な熱気が出始めつつある集団の中で唯一点だけ温度が違う子がいた。
艶めき立つ周りに対して頬を赤く染めて俯くその子は種族的特長が一切無いのを見ると人間の女の子である。
そしてそういう子を目ざとく見つけるのもまたリーダー格のインプの子が最も早い。
しかし…
「よぉし! みんなで男の子を呼んでこようよぉ!」
『おおおぉぉぉ!!』
「あ、ちょちょっと…」
周りの子達はその温度差に気付くどころか我先にと駆け出してしまいリーダー格がその暴走に気づいたのはまさに数拍後のことであった。
更に静止の声をかけようと言葉を紡ぎだす頃にはワーウルフの子に限っては姿も見えなくなっているくらいの頃で結局インプの子は意図せずして問題の子と取り残されてしまったわけである。
「…あー…リリーテ? どうかしたの? 」
「…うん…」
「…う、うんだけじゃぁ…わかんないよ?」
距離があった二人の間を詰めるようにして腰の少し色素が抜けた羽をはためかせて彼女はその子へ近づいて優しく語り掛けても俄然女の子は俯いたまま。
眉尻をさげて下から覗き込む彼女は二の句が告げなくてもどかしいようでインプやサキュバス種特有のハート型の先端を持つ尻尾をピクリピクリと小刻みに動かしているととうとう決心したのか女の子が顔を上げて彼女の蒼い瞳に視線を合わせる。
「…アリーシアちゃん…私…好きな子がいるの…」
「ふーん…それで?」
「…でもでも…私ってちんまいから…自信ないの…」
女の子は自分の胸や腹、腰、尻などに手を当てて溜息を吐く。
確かに同年代、育ち盛りの女の子にしてはやや発育が悪いようで何所もボリュームが少ないのは確かである。
その恋バナを先ほどの表情とは打って変わって微笑みながら空中で両の手のひらを組んで頬杖をつきあたかもそこに床やクッションがあるようなパントマイムよろしくという芸当をしつつも聞き入っている。
…その態度は嘲笑的だが聞き手の彼女の目は真剣であった。
「…じゃあさ…」
「…ふぇ?」
「取って置きのオマジナイ…教えてあげよっか?」
やがて女の子が話し終えた後の数分の沈黙。
その沈黙を破ったのは相談者の女の子ではなく聞き手の彼女であったがその口元は特徴的な八重歯が唇の隙間から隠す気がないほど出ており…気のせいか目元が少々怪しく光っているようだ。
彼女はズィッ、と女の子の顔に自分の顔をクッションから上半身をせり出すようにしてさきほどの場所から飛び出すと彼女は女の子の耳元でそう呟き更に口角をきゅっと上げたのである。
「え、お、教えてっ! 教えてっっ!!」
「ぅお!? ふふふ…そう急かさないでよ♪ そのオマジナイってさ…ちょっとここじゃあ話せないから…私の部屋に来てよ? ね?」
「え、で、でも皆は…」
女の子はその甘美な誘惑になんの疑いも無く食いつくと彼女の組まれた手を包み込むようにして握り彼女が驚く速度で逆に彼女へと詰め寄るとその予想外の動きに羽や尻尾がアタフタと忙しなく動き出して困り顔な彼女は愛想笑い。
彼女はそんな興奮気味の女の子を宥めるとちらりと後ろの家を見て移動を促したが女の子の方はまだ戻ってきていない皆の心配をしているも彼女が涼しい顔できっぱりと言い切ったのだ。
「皆はもう遊びどころじゃないと思うよ?」
「え?」
「…『遊び』が『本気』になるまで時間がかからないってこと♪」
実際その通りでワーウルフの子やアラクネの子は最初はただの遊び相手だった男の子達を今では異性と意
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