『コレが世に言う幸せを呼ぶ白い粉かっ・・・』

「ガッテーム! いちいち人の教会の前でチュッチュッラビュラビュしてんじゃねぇぞ、ゴルァ!!」

…いきなり荒ぶった汚い言葉を吐き出し外のベンチで寄り添いあいベンチに座る数多くのカップル達をコレでもかと威嚇する一人のシスターがいた。
そんな彼女は二階から飛び降り危うく教会の扉を開け放とうと扉に手をかけつつ魔法の準備か…口がモゴモゴと何かを言っているっ!?

そんな危険人物を同教会のシスターたちが黙って見過ごすわけも無く荒ぶる彼女の前に転移魔方陣で瞬間移動をすると数名がかりで彼女を取り押さえることに間一髪で成功するのだが…

「な、何をしているのですっ!? シスターマルゼっ!?」
「うがぁぁ! はなせっ! 離してくれぇぇっ! 私には【殺らねば】なら無いことがっ!だぁぁ! Fuuuu●k!!!!」
「字が違いますよ!? 落ち着いてっ、落ち着いてください!!」
同じ服装をした数人の真っ黒いシスター服を着た女性ら数名で押さえ込んですら動こうとする彼女に更に増員して羽やら尻尾やらすら掴んでなんとか教会の奥へと荒れているシスターを引き戻せたのだが…
そう彼女らは教会は教会でも堕落神の信仰を集めるために作られた教会のシスター、所謂ダークプリーストたちなのだ。

その中でも一際目立つのがショートカットの銀髪で洗濯板控えめな胸をしていた彼女で毎回事あるごとに「リア充爆発しろっ!」とか「うっせ、禿げっ!」とか口を開けば暴言しかはかない問題シスター・マルゼティア=フォーラムである。
…彼女のために言わせていただくと元人間女ですよ?

彼女、数百年前ほどにさかのぼるが元々は反魔物国家の粛々とした教会に勤めていたのだ。
さらには素質があり勇者としてた取り立てられたのだが…あまりの素行の悪さに教会から追放を食らい偶々立ち寄った親魔物国家内で執拗に追いかけてくるリリムに喧嘩を吹っかけて返り討ちに遭いそのまま落ちて今に至る。
…『やだこの娘すごく面白い♪ お姉さんがんばっちゃうわよ♪』とそのときのリリム様はいつも以上に目を輝かせていた、とは近くに居たリリムの従者の談。

暫くは大陸に居たのだが相変わらずの自堕落っぷりに堕落神から直々に「ジパング行って愛を教えて来いや♪」と優しい笑顔とは裏腹に強制転移魔法にてジパングに流れ着いた。
…程なくして見つけた数十人の信者を有する教会(教団でも親魔側)にたどり着いて片っ端から全員堕落させたのだ。自身が楽する為に教義の為に。

そして現在…

「う゛ー! う゛う゛ぅぅぅぅーー!!(外せっ! この猿轡はずせぇぇぇ!!)」
「…はぁ…どうしてアナタはそんなに口が悪いのかしら…」
『『はぁぁ……』』
祭壇のすぐ脇のオルガン奏者用の椅子にグルグル巻きに固定された挙句いやらしいデザインの猿轡を銜えこまされて彼女はやっと沈静化したのであった。
そんな暴れん坊にもれなくダークプリースト全員がため息を漏らすのはこの教会内では常である。



そんな彼女が荒ぶるのも無理は無い。
だっていつもの5倍の人が教会の施設内の公園のベンチ及び草むらの中にいるのだから…



「そう、今日は恋人のための日である【性】バレンタインデーなのだぁ♪」
「あら? マルマルちゃん? どこから入ってきたの? あとそれは字が間違いよ?」
「わはー♪ 玄関からだぁー♪」
そんな(ある意味)しんみりとした空気の教会に一際高い声が響いて皆が皆その声に振り返るとちょうど輪の一番外にいたシスターの目と鼻の先にフワフワと浮かぶものがあり、ソレを認識したそのシスターはさして驚きもせずその白い浮遊物へ柔らかい表情で質問をするとヒョコッと手足とニコニコしている顔が飛び出てピッと教会の玄関口を指差すとちょっとだけ開いていた。

ケサランパサランのマルマル。
何かと教会に遊びにくる常連でマルゼティアとは『ある趣味』が共通している仲間である。

「あら、マルマルちゃん? 入ったら扉は閉めなきゃメッ、ですよ?」
「わはー♪ わかったー♪」
その扉からは肌を凍えらさせるに十分な冷気を教会内へ運んでおりシスターは口は笑ったまましかめっ面をして人差し指でコツンとマルマルの額を突っつくとマルマルは眉尻だけ下げて「ごめんちゃい♪」といってフワフワ飛んでいきちっこい体全体を使って扉を閉めるのだった。

「それでマルマルちゃん? 何か用なの?」
「わははー♪ マルゼを遊びに誘いにきたのらぁー♪」
再びシスターたちの前にたどり着いたマルマルはシスターへの質問にスビシッと擬音がつきそうな勢いでガチガチに縛られたマルゼを指差す。
…勿論顔は笑顔だーわはー♪

「あら…でも今解放すると…」
「マルゼぇ♪ いつものお店に【鉄筋6】入荷したーわはー♪」
「っ!!!…ん゛っ!!(ゴキュリッ!)…それ本当か!?」

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