『ワタシが一番っ!! ・・・』

『おつかれ〜!』

カチャン! カチャン!

ここは宵ノ宮市のとある居酒屋の一席。

互いに一人の男性を間に挟んでハーピー種用につくられた専用グラスをもって男性のグラスへと乾杯をする二羽。
その顔は共に笑顔であり、男性もとても楽しそうだ。

この街ではありきたりだけど周りの町からは異端な光景ではあるが、店員がローパーだったり店主が稲荷だったり料理長がアルラウネだったり・・・
また客側の方も魔物と人間の比率で言うならば魔物10に対して人間は2くらいと人間が少ないがこの街ではいたって普通である。

「いやぁ〜隼人(はやと)がまた優勝を飾るなんてね。幼馴染として鼻が高いよ♪」
「うんうん♪ 私も!」
「いや、うん・・・なんか微妙な気持ちだわ・・・祝ってくれるのはありがたいがな? ソニカ、ファルコ。」
隼人と呼ばれた男の祝賀会らしい。
にゃはは〜、と笑いながら隼人の肩をバサバサ言わせながらに叩く彼女、ファルコはハーピーである。

ただし羽の色が薄鼠(うすねず)色で羽の縁が灰白色(かいはくしょく)になっており、尾羽が普通のハーピーより長くて翼も遥かに大きい。
露出した鳥部分の地肌は深黄(ふかき)色で染まり下に見える足も同色で且つ鋭い漆塗りのような大きめで黒い鉤爪でテーブル下の床に設けられたハーピー種用の止まり木をしっかり挟み込んでいた。
しかしその鳥部分に対して人肌部は雪のように白く人懐っこいその顔にある閉じた瞳からは時折アメジストの輝きをもつ澄んだ紫色の瞳をのぞかせる。
チャームポイントをあげるとするならば彼女の羽毛と同色の肩口に切りそろえられたショートヘアーの上で輝く銀縁のライダーゴーグルだろう。

彼女の様と色合いに合う鳥をイメージするならば・・・

隼。

そのイメージにそぐわない通りファルコは長距離間で世界最速と謳われているほどの運び屋である。

そしてうんうん、とファルコの意見に相槌を打つ彼女、ソニカもまた人ではない。
鉛白色(えんぱくしょく)の小さめの翼と肩裏までのびた髪と蜥蜴のような鱗をもち、尾羽の変わりに腰からはリザードマンの様な尻尾がぶらり。
また足はクロムイエローの如何にもなと鳥足でありファルコと同じように止まり木をしっかりと乳白色の爪がホールドしている。
また彼女の首にもファルコと同じもので色違いのゴーグルがさがっているのでそれがチャームポイントに違いない。

そう彼女はコカトリス。
種族的に足が速いことで有名です。

そんな彼女は市内で最速の郵便配達員をしています。
…平和的に。

そしてその二羽と幼馴染であり間に挟まれちょっと慌て気味な隼人は若手のモト・ライダー(バイクのレーサー)として今注目の選手である。
モトGPだけでなくダート、ドラッグ、スプリント、耐久・・・と幾多ものレースで表彰台へとあがり今彼の名は全国どころか世界的に有名な人物になっている宵ノ宮市の自慢の人物でもあった。

三人とも仕事帰りの為かそれぞれの服で席に座っている。
隼人は私服。
ファルコは厚手で手足の部分が体に合うようにカットされた運送業のツナギ。
ソニカは郵便配達員の黒服にスパッツとショートパンツ。

「にして遅いねぇ〜マリーナと葵(あおい)と美羽(みう)。」
「まぁ仕方ないよ。マリーナは市役員だし葵は美羽のマネージャーして美羽共々飛び回っているもの。」
「ま、そういうこった。久々に幼馴染が揃うって事だが…んじゃ暫くは三人で飲みますか?」
『おぉ〜♪』
待ち人が3人居るようだがソレを気に留めずバサッと羽を広げて二匹は賛成の意を示してそのまま酒により三人のボルテージは上がっていく。

「にゃはは〜! だよねー!」
「ちょ、おまっ?」
「ふふふ〜ッ♪…ん? あ♪」
小話で盛り上がってきた三人が座るテーブル席へと近づく店員ではない黒い影が一つ。
固い爪で廊下を傷つけないように慎重にコツコツと小走りでその一団へと近づいた影は三人の前に扉を開けて入り口に着くと静かに扉を閉めて振り返り羽と羽をあわせて人で言うところの「ごめんね♪」モーションをする。

「いやぁ〜ゴメンゴメン、市議会がきまらなくて…」
「おぅ、久しぶりだな。」
「やっほー♪ マリーナ。」
マリーナと呼ばれたブラックハーピーは短くそろえているあまりふくらみの無いボブカットを揺らしながらピシッと決めていた羽と同色の黒いスーツを少し崩してあいている席の一角に座り床の止まり木を掴んで「ほふぅ・・・」とこれまた落ち着いたような溜息をいつの間にか注文していたカルーアミルクを飲みながら至福の声を吐き出して顔を綻ばせていた。

「マリーナも大変だな…」
「なぁに、将来を考えたらこれくらい安いものだって。」
「マリーナって彼氏いるの?」
溜息を突き終わるタイミングで空かさず隼人が労いの言葉をかけるも
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