青い彼女


「はぁっ!はぁっ!」

俺は全速力で急な坂を下っていた。ふと後ろを振り返る。

「待てやオラァ!」

豚の耳と尻尾がついてる少女達が楽しそうに追ってくるのが見えた。
豚の亜人オーク。訓練された人間の部隊がいればどうということは無いが、
生憎、俺はまだまだ半人前の冒険者。相手が一人だけならまだしも、
何人も同時に相手ができるはずが無い。

(畜生!この街道には魔物なんていねぇって話じゃなかったのかよ!?)

俺が護衛していた馬車の持ち主は自信たっぷりと言っていた。そんなことを真に受けてまんまとつられた俺も悪いが、他の護衛の連中も同じだったらしく、魔物を見るや否や一目散に逃げていった。つまり、今のおれは一人で血気盛んな、オーク達に追われているわけだ。

「くそっ!」

魔物に捕まったものは誰一人帰ってこない。そんな考えが頭をよぎる。
こんなことになるんだったら、もっとちゃんとした職業に就けばよかった。
そんな後悔と共に涙がこみ上げてくる。俺とオーク達の距離がだんだん縮んでいく。
このままだと絶対捕まる。そうなれば死んでしまう。
俺は恐怖に駆られ今付けているものをはずし始めた。
正直言って、惜しい気もするが、死んでしまっては元も子も無い。
装備を脱ぎ捨てるにつれ、体が身軽になっていき、俺とオーク達との距離が開き始め確信した。このままいけば、麓の町まで逃げれる。
そんな希望を持ったのも束の間。

「嘘だろ・・・」

目の前に川が見え始めた。しかもその川は流れがとても速く、とても泳げるようなものではなかった。後ろからはオーク達が獲物を追う狩人の目で俺に向かってくる。一度、足をとめてしまったためか、いきなり体の疲れが押し寄せてくる。気がつけば既にオーク達に囲まれており、その中の頭領格と思われる個体が何か言っている。

「ようやく追い詰めたよ・・・もうあんたは逃げられないよ!おとなしくあたしたちに・・・」

もう選択の余地は無かった。
意を決し、川に飛び込んだ。予想通り川の流れは速く、思うように体を動かせない。しかし、オーク達もさすがに川の中までは追ってこないようで、悔しそうな目でこちらを見ている。ようやくオーク達の間の手から逃れられると思い安堵していたが、不吉な音が耳に入ってくる。それは水が高いところから勢いよく落ちる音で、下流のほうから聞こえていた。
必死にもがいて下流のほうを見ると、案の定 滝がありこのままいけば間違いなく落ちる。だか、川の流れに翻弄されているこの体でいくらもがいても流れに逆らうことはできず、そのまま滝の方へと流されてしまった。

(俺の人生はこんなところで終わるのか・・・)

さっきまであんなに怖かったのに急に恐怖が薄れていく・・・
水面に激しく叩きつけられ音を聞いて、俺は意識を手放した。


◆◆◆◆◆

俺は死んだのか・・・?
意識がはっきりしない。なにやら股間があたたかい・・・
ゆっくりと目を開けようとすると、急に強い快楽に襲われる。うすぼんやりと射精のときの感覚と思った。どうやら俺は裸の状態で仰向けで寝ているようで周りを見るとどこかの洞窟らしく暗く地面がざらざらしている。視線を股間に移すと、何かがいた。そいつは俺が今出したと思われる精液を飲んでいる。
・・・飲んでる?

今まで起きたことを回らない頭で思い出していた。

(俺はギルドの依頼を受けて・・・そこで魔物に追われて・・・んで・・・滝から落ちて・・・)

そうだ俺は滝から落ちたはずだ。何で助かってるんだ。頭がさらに混乱し始める。体を動かそうとしたが、滝に落ちたせいか酷く痛み、思うように体を動かすことができない。
すると、精液をのんでいたヤツが、顔を近ずけてきた。そいつは青色の髪を持ち、目はややつり上がっており、肌は洞窟の中でも見えるくらい白かった。
多分、十人俺がいれば十人とも美少女というだろう。それほどに目の前の少女は顔立ちが整っている。
ぶっちゃけ一目ぼれた。

「あんたが俺を助けてくれたのか・・・?」

その少女は、返事も表情も変えることもせず、ただ首を上下に動かした。その仕草はとても愛らしく、とても精液を飲んでいたとは思えなかった。

「なんであんたは俺の精液を飲んでいたんだ?」

俺は続けて質問した。少女は相変わらず無表情で何を考えているかさっぱりわからない。
前の質問とは違い、首を振るだけでは答えられる質問ではなかったせいか、ただこちらを見ている。
少し長い沈黙が流れた。もしやと思い、

「もしかして、しゃべれないのか?」

この質問に対して、少女は首を横に振り否定する。

「じゃあ、何で俺の精液を飲んでいたんだ・・・?」

少女は答えない。何か言いにくい事情でもあるのだろうか。だとしても初対面のヤツの精液を飲むなんて普通はしない。
むしろ
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