視線はトーマに集まっていたが、当の本人が気にしたのは別の事柄であった。
「そうか…その媒体ってのはどういうものだ?」
「え?」
「もしかしてあまり見た事のない鉱石みたいなもので、失敗した原因ってのは一部の…制御式?っていうのか、それが暴走したんじゃないのか?」
トーマの言いたいことがわかった他の3人が、今度はシャルルを見つめた。そのシャルルは驚いた顔をしている。
「その媒体が何か、知ってるの!?」
「やっぱりそうなんだな…」
トーマはべネールでの出来事と、現在ギルド経由で発令されている回収警告について説明した。
「なるほどね…。ぼくの、師匠のときもそんな感じだったんだ」
シャルルの説明によれば、亜空間を検知する公式とゲートを開く座標の公式に必要以上の魔力が流入。しかもその流入した魔力の振れ分は本来、安全装置となる公式に流れ込むはずの分だったという。
魔法陣が展開された場所を追跡した彼女は、250キロも西側の上空約1000メートルに魔法陣を発見した。
魔女は大慌てで魔法陣を解体。5分ほどでゲートを閉じることに成功したのだという。
地図で確認すると一体は森であり、人的には被害は少ないと判断。実際に当たりまで転移してみて、岩もとい隕石が落下してきた事と人的被害が奇跡的に皆無だったことまでは把握していた。
しかし、転移者の存在までは分からなかった。それも当然、なぜならその転移者であるトーマは更にそこから250キロ西側まで移動してしまっていたのだから。
「それで、ここまで話したわけだけど…君の師匠に会うことは出来るか?」
「…それは…出来ない」
「っ!どうして!」
出来ないという返事に、思わず立ち上がったのはトレアだった。
「えと…師匠は、その、すごく他の人に関わられるのを嫌がるんだ…」
「だからといって、それは余りにも無責任だっ!こっちは、全く知らないところに急に連れてこられたんだぞ!?」
「トレア…」
トーマたちはトレアを丸い目で見つめ、シャルルは怯えるでもなく、ただ俯いたままその言葉を浴びていた。
「トレア、この子にそれを言ってもしょうがないだろ…」
「っ…、あ、そうだな…すまない、シャルル…」
「ううん、いいんだ。なんとか会えるようにするから、少し待っててほしい。こっちにも事情があるんだ…」
改めて連絡をするというシャルルに宿を教えて、トーマたちは家を後にする。ノルヴィは目的の薬草をシャルルから貰っているあたりちゃっかりしていた。
その帰り道。
「魔女のことはシャルルに任せるしかないとして、気になるのは媒体の方ね」
「…そうだな」
「ああ、この当たりにもやはり散らばってるんだな」
「そうじゃないわよ、トレア」
気づいていないらしい彼女に、ミラが苦笑しながら顔を向ける。
「何がだ?」
「トレアっちさ、あの厄介石はトーマにくっついて一緒に来たよねぇ?」
「ああ」
「で、その原因になった魔女っ子の使ったのもその石なわけ?」
「…確かに理屈に合わないな」
はっとしたトレアは顎に手をやる。
他の3人が気付いたのも魔女の家を出てからの事で、シャルルと話している時には本筋の方に気を取られて流してしまっていた。
「それで、いくつか理由が考えられるわけだけど…」
「一つめは、似た効果の別物である説。二つめに、隕石片、小惑星片というのが間違いという説…」
「それで言えば二つめの可能性は低いわね。これまでの町や村でのことがあるもの」
ミラが言う理由は、これまで通過した町村で多くこの媒体が見つかっていることと、落下現場に居合わせた者の証言がある事を指していた。ちなみに全てギルド経由で輸送済みであ。
「そうだな。そして三つめは彼の証言が嘘で、本当はそんな媒体は使用していない説」
「有り得なくはない、が…あの反応を見る限り違うと信じたいな」
「ええ。そして…正直もっとも確率の高い推測は…」
「トーマより前に、同じところから来た説だな…」
一つめの説が当たっているなら、少なくともこの辺りの魔導師にそういう媒体の存在が知れ渡っていないのは不自然であるし、三つめのシャルルが嘘をついたというのも、嘘をつこうとする人間がその矛盾になにも突っ込んでこないというのが逆に説得力にかけて見えた。
「いつ、だれが、なんの目的で…」
「それは今考えてもしょうがないわ」
「ミラっちの言う通り。今は魔女っ子が会ってくれるのを待つしかないね」
「…そうだな」
返事では肯定しつつ、それでもトーマはなんとなく嫌な予感を抱いてしまうのだった。
_
シャルルはトーマたちが帰ったあと、食堂のテーブルにつき紅茶を淹れて一服していた。座った彼の足は床に届いておらず、時折体の動きに合わせて揺れている。
もちろんただ
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