そんなわたし、カリュブディス

 まだ独り身な、そんなわたし、カリュブディス。お隣のスキュラさんからしたら、カリュブディスならしょうがないらしい。
 そんなわたしの最近の流行は、妄想。
 最近はなんか頼れる男の人に襲われる妄想にはまっている。
 厚くてかたい胸板。太くてたくましい腕、わたしよりも二倍くらいの身体。
 そんな男の人でも、わたしがおまたひらいて『くぱぁ♪』ってしてしまえばケダモノのように襲い掛かってくるに違いない。
 いやんいやんと首を振るわたしに構わず、激しくしてくる男の人。最初は痛いだけなのに、どんどん気持ちよくなってきて、わたしはいやんいやんと首を振りながら男の人の腰を両足で捕まえてだいしゅき、なんて。
 想像しただけで息がはすはす荒くなってくる。
 興奮するほど妄想したせいか、うっかり渦潮を起こしてしまった。
 海の上を確認せずに起こした渦潮なので、きっと今回も特に何もない。
 あとでお隣のスキュラさんに謝らなきゃ。
 と思っていた。

「……うぁ!」

 そこに、意外なお客さん。
 何かの破片のような物が入ってくる中、見かけで言えば自分と同じくらい男の子が入ってきた。
 えっ、と思った。まさかのビンゴ。
 この男の子で妄想するなら、わたしの『くぱぁ♪』になす術も無くおちんちんを挿れてきて、あとはもういやんいやんらびゅらびゅだいしゅきせっくす。
 そんなことはどうでも良かった。
 ここに人間の男の人なんて滅多に来ないから、とりあえず妄想を現実に、と思っておまたひらこうとしたら、男の子がわたしを見るなり立ち上がって、両手を上げてこう言った。

「が、がお〜!」

 わたしはびっくりした。
 だってなんか、いきなりがお〜とか言ってきた。

「ひゅぃ!?」

 自分の声にもびっくりした。
 だってなんか、ひゅぃ、とか今まで出したことない声が出た。

「がお〜!!」

 がおがお言いながら男の子が走ってきた。わたしのことを襲ってくれるのかと思ったけど、その目はどう見てもそうじゃない。
 思わず逃げた。だってなんか、怖くないのにいきおいがすごかった。
 それでもがおがお言いながら追ってくる男の子。
 出来る限り全速力で自分の巣穴を逃げ回るわたし。全速力かどうかは分からないけど、距離を一定に保ちながら追いかけてくる男の子。
 最後らへんは、ちょっとだけ楽しかった。


「おなか……へった……」

 しばらくしてから、二人とも走り疲れて、けれども距離を少し離して座ってると、男の子がそう呟いた。
 そう言えば彼は人間だった。このままだと、餓え死にしてしまう。
 それなら、いっその事インキュバスになってわたしとらびゅらびゅせっくすしてればおなかへらないよ、と思っておまたひらこうとしたら、その顔はけっこう本気でお腹減ってる感じだった。
 しょうがないから、巣穴の外にある長い長い海草を抜き取って彼に持っていく。

「えっ」

 男の子に海草を差し出すと、海草とこちらを交互に見て戸惑いを見せた。

「……あげる」

 思えば、彼とのまともなコミュニケーションはこれが初めてだった。
 自分の言葉が、ちょっとだけ照れくさかった。

「えっ、えー……」

 だけど、男の子は受け取る気配が無かった。
 それでも根気強く海草を差し出していると。

「あ、ありがとう……」

 空腹には勝てなかったらしく、渋々と受け取って海草を先から噛み始めた。
 彼の『ありがとう』が、なんかすごく嬉しい。
 あまりに嬉しくて身体中の岩穴からこぽこぽ泡が溢れてきちゃうくらい。

「……(ガジガジ)」

 そのまま海草をガジガジと噛んでるのを見て、海草ってどんな味なんだろうって好奇心が沸いた。
 わたしは彼の隣に座って、彼の噛んでいる海草を反対側からはむはむすることにした。

「……(ガジガジ)」
「……(はむはむ)」

 静かな海草のはむはむタイム。わたしはちょっとだけ照れくさかった。
 だけど、隣の男の子と同じものを食べてることに、なんか心が満たされるような幸せな気持ちもあった。
 海草自体はあまり美味しくなかったけど、彼と一緒にはむはむした時間はわたしにとって、とっても満たされた時間だった。


 男の子は海草を食べてもあまり元気がなかった。今は下を向いて指で地面をなぞっている。
 でも、わたしと男の子の距離はさっきより縮まっていた。
 男の子はちょっといい匂い。潮の匂いの中に、少しだけ男の子自身の匂いがする。それがなんかすごく心がふわふわする。
 ふわふわしてくるし、なんかむらむらしてくる。
 もっともっと匂いを嗅ぎたくて、男の子に少しずつ近付いていく。
 むらむらが強くなる。
 きづいたら、片手がおまたの所に伸びてて、くちゅくちゅなってた。
 だってなんか、いつもよりすごく気持ちいい
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