色々と話は省くが、何の因果か、俺は”不思議の国”に招待と言う名のテレポートを受けた。
そうして、このメルヘンでありつつも、どこか雰囲気的に色に狂っているような世界に誘拐された。
どうしたもんかと頭を掻いていると、突然現れたチェシャ猫が案内してくれると言うので、甘んじて受けてみたら。
そりゃもうエロい光景が目の前に広がる広がる。
『ねぇ、見て、あの男の子。さっきまではお兄さんと同じくらいの男の人だったんだよ? お兄さんもあんな風に、小さくなって、甘えたいよねぇ?』
「バカ野郎! こっちが小さくなって甘えるよりも、小さい女の子に『お兄ちゃん? お兄ちゃん! お兄ちゃん♪ お兄ちゃーん!』と甘えられる方が嬉しいに決まってんだろうが。ついでにツインテールだったら最高だ! あくまで俺の話だけどな!」
などと、普通に考えれば未精通な小さな男の子が、お姉さんな魔物に甘える光景を見ながら一方的に熱い弁論を交え。
『にゃふ、ねぇねぇ、理性も何もかも取っ払って、身も心も文字通り獣になって女の子を犯すの、すっごく気持ちよさそうだよねぇ? セックスじゃなくて、交尾。気持ちのいい、交尾。ねぇ、お兄さん、してみたいよねぇ?』
「アホかタコ助! 獣姦の楽しみ方っつうのはなぁ、女を犯してる犬っころに感情移入するんじゃねぇんだよ。犬に犯されてアヘってる女見ながら、自分でチンコをしごくのが至高の楽しみ方なんだよ! ま、あくまで俺の話だけどな」
とか、犬に腰を振られて喘いでいる女性の光景を見て、俺のあまり知られたくない性癖を自ら暴露し。
『にゃふふ、お兄さんあそこ、見て? あそこの池。あれただの池じゃなくて、媚薬のローションで出来た池だよ。ほら、中に男女が入って、ぬちょぬちょぐちゅぐちゅの蕩けるセックス、してるの見えるよねぇ? あの中でセックスしたら、本当の、本当に気持ちいいと思わない?』
「いや……悪いけど俺、ガキの頃に間違えてローションをがぶ飲みした事があって、その時に喉詰まらせて死ぬ思いしたから、実は全然魅力感じないんだよな。むしろトラウマになってるせいか、見てるだけで如何せんチンコがバッドなエンディングを迎えそうになる」
『…………』
という、飄々と俺に語り掛けてくるチェシャ猫ですらも絶句するような過去で、お涙頂戴、ではなくむしろ個人的に何かお言葉頂戴な話をしてしまったり。
話のネタには事欠かないエロい光景のオンパレードだが、どうも彼女的にはむしろ俺が何がしかの不適合だったらしく。
『お兄さんとは別の場所で会いたかったにゃあ。主にお酒とか飲める場所で』
という言葉を残して、チェシャ猫は俺の案内役を辞退した。
辞退するのは別に構わない。彼女にも色々と事情や都合はあるだろう。
だとしても、ならばどうすればいいのかとか、どっち行けばいいのかくらいは、教えてくれても良かったんじゃないんだろうか。
もしかしたら、新たな案内役がここに来るかもしれない、という限りなく薄い望みを賭けて、その場で座禅を組んで待ってみる。
しかし、現れたのは案内役ではなく、恐らく自分のペットだろう名前を呼びながらチーズのクッションを抱き締めながら半べそをかく、パジャマを着た女の子だった。
どう見ても案内役ではなかった。どちらかと言うと、この子の方が俺よりも緊急感満載だった。
泣いている彼女を呼び止めてから、今まで来た方角を指して、あっちは人が多いから誰か知ってる奴もいるかもしれない、と伝える。
それを聞いて希望を見出した表情になり、ありがとぅ、と一言お礼を言われてとてとてと歩き出した。
そうして歩いていく女の子を見て、自分も待ってばかりはいられないと悟り、その場を後にした。
とは言っても、先ほどの女の子と違うのは、俺には全くあてが無いということである。
それでも、一度歩き出してしまった以上、立ち止まるわけにはいかなかった。
そこで、他の事をしながらなら、歩くのも苦にはならないだろうと思い、白目を剥きながら歩いたり、逆立ちしながら歩いたり、想像上に作ったマス目を実際の光景に当てはめたリアル人生ゲームをエアプレイしたり、と適当に気分転換しながら歩いていた時の事だった。
「……お?」
何だか庭園のような場所があったので、すかさず飛び込んでみると、長テーブルがあり、周りに椅子がいくつも並ぶ中で、ちょうど隅の椅子に座っている人物と出くわした。
「――おや? この時間にお客様とは珍しい」
ところどころキノコの傘のような装飾を施し、青緑色の燕尾服のその人物は、俺が来たことに気付いていても、動じた様子は無い。
また、燕尾服の袖の二の腕に、ダイヤマークのような模様が輪のようになっていた。
シルクハットよりもツバを大きくしたような帽子
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