リリムと白い孤島 〜白銀の世界にて〜

視界に映る景色は白一色だった。
今回、私が散歩に来たのは小さな雪島。
ここ最近雪を見ていないと思い、行き先がこの島になったわけだ。
雪景色というのはいつ見てもいいもので、そこに雪が降っていると更にいい。
静寂とともに降り続ける雪を眺めていると、なぜか心が躍るから。
しかも、嬉しいことに今回の散歩には同行者もいるのだ。
私がつい口元に笑みを浮かべてしまうのも無理はなかった。
「いい景色ね」
「ええ、そうね……」
「それに、とても静か。落ち着くわね」
「そ、そうね……」
いちいち相槌を打ってくれる連れの声は、いまいち元気がない。
その理由は、お互いに手に持った食べ物にある。
「ふふっ、雪景色を見ながら食べるソフトクリームというのもなかなか乙なものね」
「どこがよっ!!」
今度は相槌ではなく、不満の声を返された。
どうやら可愛い連れは我慢の限界を超えたらしい。
「なんで雪島に来てアイスを食べなくちゃいけないのよ!?」
「レナが用意してくれたからね。それに、アイスじゃなくてソフトクリームよ♪ほら、コーンもあるじゃない♪」
「そんなのどうでもいいわよ!アイス食べながら見る景色は他にいくらでもあるでしょ!?なんでよりにもよって雪景色なのよ!?」
「私が雪を見たかったからね」
素直に理由を述べると、ルカの口から白い息が舞い上がった。
「あんたバカでしょ!?そんな理由でここに来たわけ!?」
ルカの不満は大噴火、感情につられて体も温かくなったりはしないのだろうか。
「寒いなら、暖気の魔法を使えばいいじゃない」
「嫌よ!あんたが使ってないのに、アタシだけ使ったらなんか負けた気になるでしょ!!」
いつから我慢勝負になったのだろうか。
仮に勝負だとしても、アイス片手に手足を震わせている時点で勝敗は明らかな気がするが、ルカはまず認めないだろう。
「体、震えてるわよ?」
「歯だってガチガチ、い、言ってるわよ……!なんであんたは平気そうなわけ!?」
本当に歯をかちかち言わせながらこちらを睨んでくる目にいつもの鋭さはなく、感情の火山活動は早くも下火らしい。
それでも断固として魔法を使わないあたり、ルカの負けず嫌いも相当なものだ。
だからこそ笑ってしまう。
「あら、私も寒いとは思ってるわよ?」
言っておくと、私もルカも防寒具の類は一切身につけていない。
私に至ってはリリムの装束で、谷間やお腹回り、太腿などは丸見え状態だ。
単純に一種の痩せ我慢なのだが、ルカは納得いかないらしい。
寒さで震えながらも、胡散臭そうな目で見られた。
「あんたのその格好で、寒さに耐えられてるのが不思議で仕方ないわ……」
「だから寒いとは思ってるわ。でも、そうね、そろそろ暖でも取ろうかしら」
そう言ってルカへと向き直り、胸にかかった服を少しだけ持ち上げ、かなり際どい位置まで肌蹴させる。
それを見て、雪のように白かったルカの顔色が赤へと変色した。
「なにしてんのよ!?なんで脱ごうとしてるわけ!?」
「裸で抱き合った方が温かいって言うじゃない。そういうわけだから、ほら、ルカ」
私の胸に飛び込んでおいでとばかりに両腕を広げてみせる。
「ほらじゃないわよ!!こんなバカなこと言い合ってないで、さっさと温泉に行くわよっ!!」
確かに景色を満喫した後は温泉旅館に行く予定ではある。
ルカはその予定を繰り上げるつもりらしく、私のおふざけを無視して雪原に小さな足跡を残しながら先に行ってしまう。
「あら、残念」
虚しく広げた手を下げ、持っていた残り僅かのソフトクリームを口に放り込む。
途端に口の中に広がる冷たさに、ついため息がでてしまう。
吐いた息が白い煙となって流れていくなか、私はそっと小さな足跡を追い始める。
身を切るような冷気が心地よかった。


「ふぅ…。生き返るわぁ〜」
服を脱ぎ終えて浴場に入ると、一足先に湯舟に浸かっていたルカが至福の表情を浮かべていた。
「気持ち良さそうね。どう、湯加減は?」
「文句なし…って、あんた、堂々としすぎでしょ」
タオルを手にした私を見て、ルカは呆れたように言う。
「あら、他にお客さんもいないんだし、別にいいじゃない。それに、見られたところで減るわけでもないし」
私達が来たのは公衆浴場なのだが、微妙な時間に来たからか、貸し切り状態だった。
それが理由というわけでもないが、私はタオルを手に持っているだけで、大事なところは隠してもいない。
「そうじゃなくて。いくら同じ女でも、目のやり場に困るって言ってんのよ」
「あら、存分に見てくれて構わないわよ?」
裸の付き合いという言葉もあるし、さっきも言ったように見られて困るわけでもない。
そんなわけで、ルカの入っている奥の露天風呂まで行くと、彼女の隣りに体を沈めた。
外の気温を考慮してか、少し熱めの湯に肩から下を浸からせると、体の芯
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