ガーゴイル達の部屋から大分離れた時だった。
不意に、巨大な地震が発生した。
あまりの揺れに、立っているのがやっとなほどだ。
体感でしかないが、震源は自分の来た方角。
つまり、あの部屋。
また天井や壁が崩れたのかもしれない。
「ミリア……!」
一人残してきてしまった連れは無事だろうか。
心配だが、彼女の無事を確認する術はなく、またそんな余裕もない。
ここからはロイド一人で進まなくてはならないのだ。
空気に呑まれないよう自分の頬を強めに叩くと、変哲のない通路を慎重に進んで行く。
通路の果てに待っていたのは緩やかなカーブを描いた螺旋階段だった。
一段一段に等間隔で黒い円が描かれているが、近くで見ても汚れかなにかにしか見えない。
とりあえず、気にしなくてもよさそうだ。
そう思って上り始めたのだが、なかなか終わりが見えてこない。
「まさか、無限に続くわけじゃないよな?」
ため息をつきながら次の段を踏む。
すると、風を切るような音とともに、ロイドの前にいきなり槍が現れた。
「っ!!」
あまりにも唐突な出来事に、体がびくりと硬直する。
恐る恐る槍の発生源へと目をやると、槍は黒い円から飛び出てきていた。
よく見れば、この段だけは黒い円の中心に目立たない穴がある。
もしあのまま進んでいたら、ロイドは間違いなく槍に貫かれていたはずだ。
長い階段を上らせ、辟易してくる頃を見計らっての罠。
よく助かったものだと、長い息をついた。
「心臓に悪い……」
一定時間で引っ込む仕組みになっているらしく、なにも貫けなかった槍が静かに穴の中に戻っていく。
それを見届けると、罠の段は踏まないように飛ばして次の段に足を伸ばした。
しかし、その次は再び罠の段のようで、円に穴がある。
どうやらここからは罠と普通の段が入り混じっているらしく、注意しないとくし刺しになってしまう。
一段上っては次の円を凝視し、安全かを確認する。
どれだけそうしながら上ってきただろうか。
次の段はどっちだと思いながら目を向けるが、そこに黒円がないと気付いて顔を上げると、そこにはようやく通路があった。
その先には新たな部屋。
それを見たロイドの口からは大きなため息が漏れる。
とりあえず、難関を一つ突破だ。
酷使した神経を休めながら通路を進むと、砂の匂いが鼻についた。
それは勘違いなどではなく、次の部屋から漂ってきたようだ。
その証拠に、次の部屋は床が全て白い砂によって覆い尽くされていた。
全体を見渡せるほどの小部屋であり、先へ進む道もすぐに辿り着ける位置にある。
一見すれば、床が砂なだけの小部屋。
しかし、最初の部屋でガーゴイルに襲われたことを考えると、この部屋にも魔物がいる可能性は大いにある。
「お次はなにが出てくるんだ……?」
部屋全体を見回しても隠れられそうな場所はない。あるとすれば砂の中だが、地中に潜るような魔物がいただろうか?
親魔物派の領土に住んでこそいるが、全ての魔物を知っているわけではないし、なにより、この遺跡には旧時代の魔物がいるようなのだ。
現在の魔物ならまだしも、旧時代の魔物となると想像もつかない。
なら、いっそのこと駆け抜けてしまおうか?
それも悪くない選択肢のように思えたが、つい今上ってきたばかりの階段を思い出し、その考えは捨てた。
ぎりっと歯から音がするくらいに噛みしめると、恐る恐る部屋への一歩を踏み出すが、特になにかが襲いかかってくることはなかった。
柔らかい砂の感触を足裏に感じながら、慎重に部屋の出口を目指す。
出口までは僅かな距離でしかないのだが、いつ襲われるか分からないという不安から、やけに遠く感じる。
背中には嫌な汗が流れ、上着が張り付いて気持ち悪い。
加えて、砂を踏む音しかしないこともロイドの不安を煽る。
自分の鼓動がうるさいくらいに聞こえるなか、ロイドは確実に出口に近づいていく。
このままなにも起こってくれるなよ。
そう念じながら進んだおかげか、無事に出口へと到着する。
だが、それを喜ぶことはできなかった。
最初は暗いだけだと思った。
だが、そうではなかった。
部屋から先、通路に当たる部分は床が存在していなかった。
それでもロイドのいる位置からかなり下、向かい側の壁にぽっかりと通路らしきものがある。
しかし、そこに至る道が存在していないのだ。
所々に足場のようなものが浮かんではいるが、それに乗っても大丈夫なのかは分からない。
それ以外は底の見えない闇。
「なんなんだよ、これ……」
ほとんど呆然としてしまう。
謎の部屋を抜けたと思ったら、今度はこの通路だ。
一か八かで足場へ飛び移ろうにも、一番近い足場まではかなり距離がある。
それ以外では少し下の方にもあるが、人一人立つのがやっとしかないような足場にうまく着地できるかは怪しい。
どう見ても、人の進める通路では
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