魔王夫妻の第四女、デルエラ。
レスカティエなど、数多くの都市を魔界へと誘い、多くの人々を魔物に堕としていった。
魔王の意志に従い、魔物化を推し進める彼女の姿は、正統なるリリムのそれである。
しかし、魔王の娘達は今現在、数え切れぬほど産れているはずだが、数とは裏腹に魔界の拡大は遅々としている。一体なぜだろうか?
理由は簡単だ。多くのリリムが、伴侶を手に入れると同時に愛の巣にこもりきってしまうからだ。
これらの事実から、二つの可能性が浮かび上がる。
一つは、「デルエラは未だ独身である」。
もう一つは、「デルエラは既婚である」。
独身だと主張する者は、彼女の活発な活動が未だ伴侶を見つけていないためである、と陳述した。
既婚だと主張する者は、信頼できる文献の『彼女は伴侶を得ると引きこもるリリムには珍しく、精力的に活動している』という一節を証拠に掲げている。
独身だと主張する者は、「その一節は『リリムには珍しく、伴侶を得ることなく魔界化活動に勤しんでいる』と言う表現だ」と反論した。
既婚だと主張する者は、彼女の独特な外見は夫の要望によるものである、と声を上げた。
二つの派閥は、正に殴り合いをはじめんばかりであった。
そこで、このたび読者諸君に対し、それぞれの派閥の主張に耳を傾け、どちらが正しいか判じてもらいたいのである。
魔物化を推し進め、次から次に魔物に伴侶を作り出すデルエラ。
彼女の魅力に取りつかれた者たちの言葉に、耳を傾けてほしい。
1.デルエラさんは既婚だよ派
(1)デルエラさんは既婚で、元勇者の旦那様がいるよ派 の主張
デルエラさんには元勇者の旦那がいる、と言うのが我々の主張である。
理由は簡単だ。彼女のように精力的な活動をしていれば、自然と討伐を目的とした勇者が現れるだろう。
そんな勇者の一人と恋におち、生涯の伴侶とする。非常に簡潔で起こりうる未来ではないか。
そして、彼女の現在の活動から、さらに二つの事実が推測できる。
一つは、デルエラさんの旦那は妻の活動に理解がある、というものである。一度魔物に囲われた男性ならばわかると思うが、魔物の巣に囚われただ情交を続けるというのはなかなか辛いものがある。無論体力的な意味も含んでいるが、精神的にも辛い。
これは、自身が社会から隔絶されてしまったことに対する疎外感を由来とする、孤独が原因である。事実、魔物娘に囲い込まれ情交ばかりさせられる男性には、精神後退や反応減少などの症状が報告されている。
精を目的とする魔物娘には問題ないだろうが、伴侶との精神交流に幸福感を得る魔物娘にとっては意に沿わない結果となる。そのため、多くの魔物は伴侶に対しある程度の自由を与えている場合が多い。
これと同様の事例は魔物娘側でも報告されており、フェアリーなど一部の魔物と軟禁同然に生活していたら感情表現が乏しくなった、という事例もある。
つまり、男女共々相手を拘束しすぎるのはやめましょうね、と言うことだ。
そしてデルエラさんの旦那も、デルエラさんからあまり拘束されない代わりに、妻が自由お見合い業に勤しむことを認めているのだ。
相手の自由を認めているのは、相手に対する信頼の証。実に羨ましい夫婦である!
また、彼女の外見からも、旦那様の存在を証明することが出来る。ご存じのとおりデルエラさんの外見は、悪の女幹部然としたスタイルである。
これはおそらく、旦那様の趣味に合わせているものと考えられる。きっと、元勇者の旦那様と、
「うおー悪魔めー!倒すー!負けたー!犯されるー!」プレイ、あるいは、
「うおー勇者めー!倒すー!負けたー!お仕置きされるー!」プレイをしているものと考えられる。
そのため、プレイ時の興奮を煽るためにあのような悪役スタイルを取っているのだ。
我々の言いたいことをまとめると、ただ二つ。
旦那様とイチャイチャするデルエラさんを見たいということと、デルエラさんはかわいいなあ!
(2)デルエラさんは既婚だけど未亡人だよ派
我々の主張はただ一つ。デルエラさんには旦那さんがいたよ。ただこれだけだ。
デルエラさんの旦那の存在可能性については、先ほど主張してくれた派閥と同じである。
だが、我々と彼らの違いは、旦那さんの存在が過去形であったという一点だ。
確かに彼らの言うとおり、デルエラさんは旦那がいるにしては行動が自由すぎるきらいがある。
しかしこれも、旦那さんと既に死別しているとすれば、すべてが解決する。
旦那さんとの死別により、デルエラさんは自由を再び手にした。
しかし旦那さんへの愛情が深すぎたがゆえに、彼女は新たな旦那を見つけたりするのではなく、独身の魔物と男性を引き合わせるお見合い業に勤しむのだ。一度伴侶を手に入れ、共に時間を過ごす素晴らしさを知っているからこそ、他の姉妹とは異なり積極的に魔物に対
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