森の中、道なき道を折れは進んでいた。
草をかき分け、枝をくぐり、木の根を跨ぎながら、ただただ進む。
この辺りの森には魔物が出るという話を聞いていたが、街道を進めない以上こうするしかなかった。
やがて、草をかき分けると、背の低い草ばかりが生えた場所に出た。
俺はその場に屈んで、生えている草を調べる。辺りに生えているのは、人や動物の踏みつけに強い、背の低い植物である。
これは、この辺りが獣道であることを示していた。
植物の生えぐワイから見ると、そこまで使われていない獣道であるらしい。
実に運がいい。使わせてもらうことにしよう。
俺は近辺の木々の様子と、木々の間から覗く太陽の位置から方角を定めると、獣道に沿って進み始めた。
この辺りの森は、国境になっている川を跨いでいるが、魔物が出るため警備も甘い。
森の長と国境を接する二国間で、森に立ち入った人間は自由にしていいという協定が結ばれているらしいが、見つからなければいいだけの話だ。
俺は国境向けて、獣道を進み続けた。
だが、辺りに注意を配る俺の耳に、俺の物とは違う足音が届いた。
とっさに足を止め、その場に屈み、耳に意識を集中させる。
二人、いや三人が規則正しく歩いているようだ。訓練を受けた兵士のようだ。
俺は胸中で焦りと疑問を覚えた。
ほぼ両国の不干渉地帯に等しいはずのこの森に、訓練された兵士がいるのだろう?俺を探しているのか?
だが、足音には特に焦りや急いでいる様子はなかった。隣国の兵士が侵略のため辺りを調べているのか、森の魔物が独自に組織した自警団が警邏しているのか。
いずれにせよ、俺がターゲットではないことは確実だ。
だが、見つかったらタダでは済まないことも確実であう。俺は獣道から草むらに入り、近づきつつある足音をやり過ごすことにした。
草を折らぬよう気をつけてかき分け、身を伏せる。
やがて、ガサガサという規則的な足音が、俺の前に近づいた。
呼吸を殺し、気配を可能な限り絶つ。だが、俺の努力も空しく、足音が止まった。
「ん?ん〜?」
疑問符の混じった女の声が一つ響き、スンスンと鼻が鳴った。
「人…?」
俺の臭いをかぎつけたのか、姿の見えぬ彼女はそう呟いた。
仲間に同意を求めるようにも聞こえたが、返答はなかった。
どういうことだ?相手は複数人ではないのか?
疑問が浮かぶが、それより先にすぐそばの何者かをどうにかする必要がある。飛び出して行って連中を倒すか、国境の川まで逃走して、川を泳いで森を抜けるか。
即断すべきところだったが、足音と推定される人数の差異に俺は判断を遅らせてしまった。
がさり、と黒い甲殻に覆われた手が草をかき分け、伏せる俺を手の主が覗きこんだ。
「あ、やっぱり人間だ」
額から二本の触角を生やした、髪の短い少女の姿をした魔物が、俺を目にしてそう言った。
「捕まえたっ!」
彼女は身を強張らせる俺をがっしりと捕まえると、ひょいと持ち上げた。
昆虫を思わせる甲殻に覆われているとはいえ、女の子に持ち上げられてしまったという事実に、俺は彼女が魔物であると再認識した。
「は、放してくれ…!」
「やだよ、わたしが見つけたんだもん」
逃れようとする俺を離すことなく、彼女は退いて草むらから俺を引きずりだした。
同時に、彼女の下半身が俺の目に入る。
彼女の腰から下にあったのは、蟻を思わせる大きく膨れた楕円形の黒い『腹』と、黒くて細い六本の脚だった。
ジャイアントアント、と呼ばれる魔物の特徴に、俺は複数の足音と人数の差異に対する理解を得た。
だが、そんなことが分かったところで、もう遅い。不意を打って襲撃すべきだったと悔やみつつ、俺は逃れようと少女の手を掴み、もがき続けた。
「んもう、暴れないでよ」
彼女は獣道に俺を横たえると、蟻の脚で俺の胸と腹と足を抑え、人の胴と蟻の腹の継ぎ目に掛けていたタオルを手に取った。
「ほら、じっとして」
彼女は俺の口と鼻を覆うように、俺の顔にタオルを巻き付けた。
柔らかな、微かに湿ったタオル地が俺の顔を覆い、吸う息に甘く酸っぱい香りを加える。
彼女が汗をたっぷりと拭ったタオルで、これが彼女の汗の香りだと気が付いた。
だが、汗の臭いをかがされるという行為に嫌悪を抱くよりも先に、甘酸っぱい香りが俺の頭を満たし、思考力を奪った。
何もかもが薄紙一枚隔てたように遠のき、どうでもよくなってしまう。
「ん、大人しくなったね」
彼女が俺の身体から蟻の脚をのけるが、俺は横たわったまま身動きを取らなかった。
取る必要がない、と考えたからだ。
「ふふふ、役得役得ー♪」
彼女はうれしげにそう言いながら向きを変え、俺の胸の上に膨れた蟻腹を置いて屈んだ。
そして、俺のズボンに手を掛け、股間を解放した。
ひんやりとした森の空気が、露わになった肉棒にまとわりつく。
「いただきまーす」
冷気によ
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