「一人でおトイレ行けるかな?」「無理じゃ!(きっぱり)」

夜。
目を開くと宵闇に塗りつぶされた天井が目に入った。
窓から差し込むわずかばかりの月明かりが無ければ、つい先ほどまで瞑り続けていた両の目でも何も見えなかっただろう。
「……」
首をひねって横に向ければ、俺の横になっているベッドから少しだけ距離を置いてベッドがもう一台置いてあった。
その上にかけられた毛布には膨らみがあり、ゆっくりと上下していた。
「バフォ様?」
毛布の下の主を小声で呼びかけるが、返事はなく、毛布の上下に変化もなかった。
どうやら本当に眠っているようだ。
俺はゆっくりと身を起こすと、ベッドから降り足音を忍ばせて、隣のベッドに歩み寄った。
床に敷かれた柔らかな絨毯は床板の軋みを殺し、ベッドのクッションとスプリングが俺の体重を受け止める。
ゆっくりとした俺の動作と高級な家具によって、俺が毛布をめくり主の側に身を滑り込ませてもなお、彼女は目を覚ますどころか寝返り一つ打つ様子もなかった。
よほど深い夢の世界にいるのだろう。
昼間は精一杯の”威厳ある表情”を作っている顔が、外見相応の幼い表情に彩られている。
俺は身体を横向きにすると、寝間着のズボンと下着を下ろし、彼女の下半身に自分のそれを寄せた。
そして、僅かに唇を開き、薄い胸を上下させる彼女の顔を見ながら、俺は体内を渦巻いていた欲望を解き放った。



「うぐ…ぐす…」
「バフォ様、ここは俺が片づけておきますので、どうかシャワーを浴びてきてください」
「何でじゃ…何でなんじゃ…」
「泣いていても事態は解決しません。今は洗い物を片付けるのが先決です。反省と備えは、後からしましょう」
「ぐす…ひぐっ…うぅ…」
彼女はすすり泣きながらも一つ頷くと、のろのろとベッドの側から離れ、部屋に併設された専用の浴室へ向かっていった。
結果、後に残されたのは俺と黄色い染みのついたシーツだった。
「よし…」
俺はズボンの下で痛いほどに屹立した肉棒もそのままに、彼女が「おねしょ」したシーツをマットから剥がし始めた。
シーツと寝間着は洗濯し、マットに染みた分は乾いた布と濡れた布で交互に除去すればいい。
少々面倒だが、彼女の泣き顔を見られたのだからどうということはない。
俺は染みが見えないよう丸めたシーツを洗濯場に運びながら、先ほどの彼女の表情を反芻した。
目覚める直前の、穏やかな寝顔。
覚醒直後の、薄く目を開きつつも、やや呆けた顔。
湿った股間から伝わる不快感に、少しだけ顰められた表情。
意識の明瞭とともに、徐々に光が宿っていく瞳。
股間の不快感と、その原因を探ろうと半ば朦朧とした頭を働かせる、怪訝な顔。
湿り気と股間の不快感、そして思いつく限りの原因が結びつき、自分の状況を理解した瞬間の表情。
覚醒する意識に合わせ、膨れ上がる不快感と理解によって羞恥心に塗りつぶされていく表情。
そして、情けなさと悔しさと不快感がごちゃ混ぜになり、ついに涙があふれ出す。
見る見るうちに変わっていく彼女の表情は、愛らしくありながらも、劣情を催させるものだった。
幾人もの魔女たちを従えるサバトの威厳ある長としての顔は欠片も残っておらず、そこにあるのは年相応、いや見た目よりも幼い泣き顔を浮かべる女の子しかいなかった。
挑んできた身の程知らずな冒険者を睨み付け、部下の魔女を震え上がらせる双眸は涙で曇り、
大地を焼き払い海を割る呪言を紡ぎ、男を妖しく誘い魔女を心酔させる彼女の唇は中途半端に開いて嗚咽を漏らし、
身長に合わせて短いながらも細くすらりとした両の足は内股気味に曲げられ、股間の不快感に震えながらも彼女の体躯を支えていた。
言葉一つで地水火風を操り、指先ひとつで魔術の秘儀奥義を導き、視線ひとつで男女を籠絡させる。
強大で高貴な上級魔物のバフォメットであるはずの主が、ベッドの側に立ち尽くしてすすり泣き、失態の証である染みのついたシーツを晒しているのだ。
そして自らの威厳を保つため、俺に泣きついて助けを乞う。
これで興奮しない者がいるだろうか?
いつのことだったかはもう忘れてしまったが、初めて彼女が俺に助けを求めてきた日、俺の意識の中で彼女の表情と震える声が幾たびも反芻し、興奮のあまりシーツを洗いながら達してしまったほどである。
それ以来俺は彼女のおねしょとその片付けに病みつきになってしまったのだ。
彼女の身の回りの世話を俺にとって、彼女におねしょをさせるよう導くのは割と容易いことだった。
寝る前に水分を取らせる。
寝る直前に便所に行かせない。
たったこの二つだけで、彼女は必ずといっていいほど翌朝シーツに染みを作っていた。
無論、やたらと飲み物を勧めたり、トイレに行こうとするのを遮ってはいけない。
飲み物を求めない時は目の前で飲んで見せ、欲しがれば一言軽く窘める。
そして便所に行くときは引き止めず、行きたがらない時は
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