(125)サンダーバード

 大通りから遠く離れた、古ぼけた家屋が窮屈に身を寄せあい、昼なお薄暗い裏通りを作っていた。両隣の家屋との間に隙間がないのはもちろん、向かいの家同士が同時に扉を開けば、ぶつかり合うのが目に見えるほど、家屋がひしめき合っていた。とりあえず住めればよい、をモットーにとにかく詰め込むように建てられた、集合住宅地だ。
 その集合住宅の一軒の、二十はある部屋の一つに、男と魔物がいた。
「ほ、ほんとにやるんだな…?」
「ああ…」
 たった一つの照明が照らす薄暗い部屋の中で、男とサンダーバードが言葉を交わした。サンダーバードは一糸まとわぬ姿で、男の方も股間を覆い隠す下着だけを身につけているばかりだった。そして二人とも薄汚れたベッドの上に腰を下ろしている。
 魔物と人間が、初めての情事を迎えようとしているのだろうか?美しい顔立ちをしているとは言え、異種族である魔物との交わりに男が不安を滲ませ、サンダーバードがそれをぬぐい去ろうとしているのであろうか?
 だが違う。普段は挑発的に辺りを視線をとばすであろうサンダーバードの目には明らかに不安を滲んでいた。一体どういうことなのか?部屋を見ればその答えは明らかだ。ベッドの縁に腰を下ろす男の手には、見慣れぬ形をした金属製の器具が握られているからだ。親指と人差し指で作った輪ほどの太さの金属帽の表面には、小指ほどの幅と深さの溝が刻まれており、室内の明かりをゆらゆらと照り返していた。そして先端に近づくと一度金属棒はその太さを絞り、元の太さに戻ってから、タマネギのように先端をとがらせていた。
「…」
 男は、金属棒の根本付近の黒い樹脂の部分を右手で握り、先端に左の指先で触れた。金属の冷たさは感じるが、先端は丸められており、よほど強く肌に押し当てでもしない限り、痛みを感じることはないだろう。加えて、あらかじめ塗布しておいた潤滑油により、粘膜が巻き込まれてけがをすることもないはずだ。
「ほ、ほんとにそれ…使うのか…?」
 サンダーバードは声を震わせながら、言葉だけは問いつめるような調子で尋ねた。
「ああ…俺たちの未来は、こいつにかかってるんだ…」
 男は手にした金属棒を、右手首のスナップだけで左手の平に軽く打ちつけた。瞬間、ぱちんと小さな音が響き、サンダーバードが体を小さく震わせた。
「…どうする?怖いのなら、やめるが…」
「こっ怖くねえ!」
 男が視線と言葉に心配を滲ませた瞬間、彼女は強気の口調で応じた。
「アタシがこんなことぐらいで怖じ気付くと思うのか!?」
「…そうだな…」
 男は彼女の自らを奮い立たせるような口調に、小さく頷いた。
「それじゃあ、始めるぞ…」
「う、うん…」
 男がそう言うと、サンダーバードは微かに体を震わせながら、ベッドの上で両足を開いた。鋭い爪と鱗に覆われた鳥のような足は、青い羽毛に包まれた脚につながり、いつしか女性的なラインを描きながら彼女の腰へと続いていた。羽毛どころか、体毛も生えていないサンダーバードの両足の付け根では、白い肌に刻まれた亀裂が、微かに粘液を滲ませていた。股間のぬめりは男との情事への期待によるものか、不安や恐怖を生命の危機ととらえた肉体の反応によるものか。
 男にはそのどちらとも分からなかったが、乾ききっているよりかはこれからのことがしやすかった。
「少し、冷たいぞ」
 しばらく握って、僅かばかりとは言え体温を移した金属棒の先端を、男はサンダーバードの亀裂に触れさせた。
「んひっ…!?」
 金属特有の冷たさに、彼女は声を漏らしながら体を跳ねさせる。
「冷たかったか?」
「あ、ああ…でも、思ったよりはないな」
 男の問いかけに一度素直に応えてから、彼女はあわてたように一言付け加えた。サンダーバードの虚勢に男は心が痛んだが、彼は彼女の献身を利用することにした。
「入れるぞ…」
 男はそう言うと、彼女が何か反応するよりも先に、金属棒を彼女の体内に収めていた。
「んっ…ぃ…つ…!」
 サンダーバードは歯をかみしめ、目をつぶりつつ声を漏らした。すでに男と交わったことがあるため、破瓜の痛みはない。それでも、無機質な金属の棒が体内へと入り込んでいく感触には、苦痛とまではいかないものの、あまり心地よさは感じられなかった。
「う…うぅ…」
 男の肉棒以外の物が入ったことのないような、彼女の体内の奥の奥を目指して、ひんやりとした感触が押し入っていく。そして、先端が丸められているが、それでも紡錘状にとがった金属棒の先が、サンダーバードの体奥に触れた。
「っ…!」
「痛かったか?」
 サンダーバードの漏らした吐息に微かな苦痛を嗅ぎとったのだろうか、男がそう問いかけた。
「だ、大丈夫…」
「そうか…」
 男は金属棒の根本から手を離すと、黒い樹脂に覆われた取っ手に軽く指で触れた。サンダーバードの女
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