その少年は、一人山の中で道に迷っていた。
山の奥に入ってはならないという大人たちの言葉に逆らい、友人と連れ立って度胸試しに山に入ったのが昼前のことだ。
友人とはぐれ、道に迷ってしまった今の彼には、大人たちの忠告が痛いほど身にしみていた。
だが、ここでいくら悔やんだところで村に戻れるわけではない。
彼には、ただ森の中をさまよい続けるほかなかった。
『村の周りの山には入ってはいけないよ、魔物が住んでいるからね』
少年の脳裏で、大人たちの言葉がよみがえる。
彼はそう聞かされるたびに、なぜ山の魔物が村を襲わないのか尋ねた。
『魔物は賢人さんと、村と昼間森に入った人間を襲わないよう約束しているんだよ』
顔をあげてみれば、生い茂る葉の間から青空が覗いている。
しかしそれも、じきに赤く染まり真っ暗になってしまうだろう。
『その代わり夜中に森をうろつく人間は、魔物が食べられてしまうよ。そういう約束だからね』
そうなる前に村に戻らねば。
少年は未だ見ぬ魔物に怯えながら、道なき山の中を速足で進み続けた。
そして、どれほど進んだだろうか。
生い茂る背の低い草をかき分けていた彼の手が空を薙ぎ、不意に視界が開けた。
木々の間にある広場のような場所に出たのだ。
森の中の広場の多くは古木が倒れたり、川の流れによってできるものが多いが、少年の目の前にあるのは沼だった。
沼といっても濁った泥水が溜まっているわけではない。
むしろ水は透き通っており、辺りの岩と相まって清浄ささえ感じさせていた。
だが少年はその水たまりを見た瞬間、それを沼だと感じていた。
「……」
彼は突然目に飛び込んできた景色に、一瞬我を奪われながら湿った地面の上へ一歩二歩と踏み出していた。
「だ…れ…?」
茫然と沼を見つめていた少年に、ゆっくりとした声がかけられる。
彼は我に返ると、辺りを見回し声の主を探す。
「エルンデルストの…人?」
女の声が再び彼の耳に届くと同時に、彼は沼の淵に転がる岩の一つにいつの間にか何者かが腰かけているのに気がついた。
それは、髪の長い女性だった。
つま先を水たまりに浸し、やたら長い髪を指先でいじくる、豊満な体つきの女性だ。
だがその長い髪も豊満な体も何もかもが、青く透き通っていた。
つまり、彼女は魔物だ。
「うわぁああっ!魔物だぁぁああああ!」
少年は声をあげると、踵を返し森に向かって走り始めた。
だが数歩と進まぬうちに、彼の足が湿った地面に沈み込み、彼は身動きが取れなくなっていた。
「うわぁあああ!あぁぁ!」
「逃げ…ないで」
足を取られ、必死にもがく少年の側の地面から、青く透き通った女性が生えてきた。
「食べられる!食べられる!いやだぁぁぁ!」
「大丈…夫、食べな…い、落ち…着いて」
魔物に食われると思い込み、恐慌状態で暴れる少年を抱きしめると、彼女は少年の耳元で囁く。
「大丈夫…大丈夫…」
繰り返される、彼女のゆっくりとした言葉が染み込むように、彼の心を次第に恐慌状態から冷ましていった。
「落ち着いた…わね」
「うん…」
少年が答えると、彼女は身を離し、目の高さを合わせるべく屈んだ。
「あなた…エルン…デルストの…子?」
「…うん」
「どうして…こんな…ところに?」
「友達と、度胸試しに来て…はぐれて…」
「森に入っちゃだめだ…って三賢人が…言ってるはず」
「ごめんなさい」
たしなめるような彼女の言葉に、少年は素直に頭を下げた。
「わかったなら…いい…」
反省している様子の少年に頷くと、彼女は立ちあがった。
それによって、彼女のむき出しの乳房が大きく揺れる。
「……」
恐慌状態から抜けた彼は、ようやく彼女の姿をしっかり見ることができた。
毛先が地面に着くほど長い髪の下にある彼女の顔だちは、少年が知る村の女性たちの誰よりも整っている。
彼女が一糸纏わぬ姿のため、豊かな乳房から大きな尻、相対的にくびれて見える腹までよく見える。
そして、彼はつい先ほどまでその乳房が地震に押し当てられていたことに思いが至った。
「それじゃあ…君を村まで……どうしたの…?」
「っ!な、何でもないです!」
彼女に声をかけられ、少年はズボンの下で固くなっている分身を悟られぬよう、とっさにそう答える。
無論それでごまかしきれるわけもなく、彼女は疑念に目を細めた。
同時に、少年の足をとらえたままの地面から水が滲み出し、彼の体を這い上ってきた。
「ひゃ…あ…!」
足を包んでいくひんやりとした感触に、少年は声を漏らした。
だが、水は構うことなく足を這い上り、やがてその付け根にたどり着いた。
屹立した未熟な肉棒に水、いや粘液が絡みつく。
「ひゃう!?」
「…ふぅん…」
彼の興奮を確認すると、彼女は再び軽く屈んだ。
「君は…度胸試しで山に入った…って言ってたよね…?でも、本当は…こうしてほしか
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