街の合間を、少年が一人駆けていた。
鎧をまとい、腰に剣を差した彼は、がちゃがちゃと音を立てながら道を走っていた。
「はぁはぁはぁ・・・!」
荒く呼吸を重ねながら、彼は時折前方から顔を逸らし、進行方向とは違うところを見た。
まるで、何者かに追われているかのようだったが、青年の域に足を踏み入れつつある彼の視線の先にあったのは、太陽だった。
冬に入り、日が短くなったためか太陽はすでに街の向こう、建物の合間に沈みつつある。
西の空はまだ赤く明るいが、東から点頂に向けて空が藍色に染まりつつあり、すでに星がちらほらと瞬き始めている。
もうすぐ夜が来る。
振り向く度に沈みつつある太陽におわれるように、少年は通りを駆け抜け、一軒の宿屋に飛び込んだ。
「おう、おつか・・・」
「ただいま!」
一階、酒場をかねた食堂のカウンターの奥からの、宿屋の主人の言葉に短く返すと、少年は二段とばしで階段を駆け上り、ここ一年ほどは借りっぱなしの部屋に飛び込んだ。
「はぁはぁ・・・」
少年は扉を勢いよく閉めると、人心地つける間もなく、部屋の隅に置かれたベッドに手をかけた。
大の男二人で運ぶほどの、しっかりとした作りのベッドを少年は易々と扉の前まで移動させた。そして、ベッドの足を掴み、立てかけるようにして扉を塞ぐ。
「はぁ、はぁ・・・」
少年はベッドの向こうの扉を見据えながら数歩退くと、ようやく立ち止まって言葉を紡いだ。
「これなら・・・」
ちらり、と目をはめごろしの窓の外に向けると、西の空を染めていた赤が、星を散りばめた藍色に塗りつぶされつつあるところが見えた。
日が沈み、夜が来る。
だが、今日は間に合った。
そう少年が胸をなで下ろし、空が完全に夜空となった瞬間、窓が勢いよく弾けた。
ガラスと窓枠が砕けながら部屋の中にまき散らされ、窓から白い影が飛び込んでくる。
勢いのため、輪郭が曖昧になった白い影は、ガラスの破片がまき散らされた床の上におり立った。
影の動きが止まり、ようやく少年の目がその姿をとらえる。
白い、丈の短いワンピースから青白い肌に包まれた四肢を晒し、ふわふわとした短い銀髪の少女。
彼女は、目に喜色を浮かべながら、呆然と立ち尽くす少年に向けてく血を開いた。
「ご褒美の時間よ、オラァァァァ!」
「ぎゃぁぁぁああああ!」
カラスのような、漆黒に染めあげられた翼を広げるダークエンジェルの言葉に、少年は悲鳴を上げた。
「邪魔が入らないようにバリケード?今日は二人で水入らず、ただしお小水マシマシってわけね!」
「違う、違うぅぅぅ!」
少年はきびすを返し、今し方扉に立てかけたベッドに飛びつこうとした。
だが、彼がベッドを倒すよりも早く、ダークエンジェルは少年の背中にしがみついた。
「ガラスが散らばってて床の上は危ないから、ベッドを出してくれるのね!優しい!大好き!」
「違う!違うぅぅ!」
少年はダークエンジェルを振り払おうともがくが、彼女は彼の銅に手を回したまま離れようともしなかった。
数度少年は勢いよく体を振り回していたが、ついに足をもつれさせ、床の上に倒れてしまう。
「ぐ・・・!」
うつ伏せに倒れた衝撃に、息が肺から絞り出される。ガラスや窓枠の破片が散らばっていたが、とっさの受け身と鎧のおかげでけがはなかった。
「ああ、私魔力バリアーあるからガラスぐらいじゃ怪我しないのに・・・押しつぶさないようにかばってくれたのね!もう、ご褒美あげちゃう!」
ダークエンジェルは少年の店頭に一人ヒートアップすると、がばと少年の背中から上半身を離し、少年の腰のあたりを覆う装甲に手をかけた。
ばき、と金具の壊れる音が響き、直後彼の鎧の腰が引きはがされる。
少年はとっさに床にひざを突き、四つん這いになって逃れようとした。しかし、腰が浮かび上がった瞬間ダークエンジェルの足が彼の太腿に絡みつき、無様に尻を掲げた姿勢で動きが封じられた。
そしてズボンに手をかけると、彼女は下着ごと衣服を引きずり下ろした。
「カワイイ桃発見!違った!勇者のお尻でした!んもー、おいしそうな桃のモノマネなんてして!」
ダークエンジェルはなぜかうれしげにケラケラ笑いながら、少年の尻に手のひらをたたきつけた。
「ぎゃっ!」
「はーい、痛いのはこれでおしまい!勇者のお尻ちゃんには一日立つか座るかしていたご褒美として、マッサージしてあげます!」
「うわあああ!」
直接見ることはできないものの、エンジェルの指が少年の尻を遠慮なく這い回り揉み解す感触に、少年は裏返った悲鳴を上げた
太腿と腰の間、尻の筋肉に十本の指が食い込み、ぐにぐにと揉み立てる。少年はダークエンジェルの指が筋肉の筋をこりこりと指で転がすのを感じながら、自身の尻が知らない内に凝っていたのを知った。
だが、凝りがほぐされる快感よりも、背筋をぞわぞわとなでる感覚の
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