鍛冶屋の玄関先で、二人の男が顔を合わせていた。
「とりあえず、帰ったらサイズが合っているかどうか確認してくれ」
湾曲した鉄板の左右に鎖の輪が取り付けられた、拘束具めいたものを差し出しながら、男がもう一方の男に話しかける。
「ええと・・・たぶんぴったりのはずだ」
器具を受け取った男は、鎖の輪に両手を通し、一瞬目を閉じてからそう答える。
「たいそうなご自信だな」
「まあ、毎晩抱いてる嫁の体だからね」
二人は言葉を交わすと、低く笑った。
「なあに?お客さん?」
すると玄関の奥から高い声が響き、壁に手を添えながら一体のサイクロプスがひょっこり顔を出した。
「ああ。品物の受け取りだ」
「サイクロプスさんですか。今回の受注、ありがとうございました」
鋼鉄の眼帯で目元を覆うサイクロプスに、二人はそう声をかけた。
「それじゃ、今日はここで失礼するな」
「ああ、うまくいくといいな」
「ありがとう」
二人の男は手を握りあうと、くるりと背を向けて歩きだした。
一人はサイクロプスの妻の元へ、もう一人はデュラハンの妻の元へ、だ。
「これがそうか・・・」
鎧を脱ぎ、首元を襟ですっぽりと包む部屋着をまとったデュラハンが、ベッドに腰掛けたまま、夫の差し出した器具を受け取った。
彼女の肩幅ほどの湾曲した鉄板と、左右に鎖の輪が付いた器具だ。
「本当に、これでどうにかなるのか?」
「ああ、絶対大丈夫だ」
「しかし・・・私としては、こんなものに頼りたくはないのだが・・・」
デュラハンが手元の器具に視線を落としながら、困ったような言葉を紡いだ。
「でも、来月の夫婦闘技大会で、一番困るのは首を落とされたときだろ?」
「うむ・・・」
デュラハンに出会ったら首を落とせ。そう書物に記されるほどに、デュラハンにとって頭が落ちることは致命的な弱点であった。
種族的に、感情だとか欲望だとかを内にため込む気質であるため、一度首が外れて解放されてしまえば、歯止めが利かなくなるのだ。
「闘技場で首を落とされて、衆人環視の下夫婦の営み開始で失格負けとか、いやだろう?」
「うむ・・・確かに」
負けるのもイヤだが、夫婦の営みを他の連中に見られるのはもっといやだ。自分が乱れる様子を見るのは、夫だけであってほしい。
その二文を胸の内側にしまい込みながら、デュラハンは頷いた。
「だからこそ、この特注の首ガードをつけた方がいいんだよ」
デュラハンの手の中の器具を示しながら、男はそう言った。
彼女の肩幅と同じ幅の金属版こそ、彼女の肩の上に覆い被さり、胴体の首の継ぎ目を塞ぐ為の器具だった。
一般的に流通する首の固定具と異なり、こちらは首が落ちても、内側にため込んだものが解放されないという一品である。
正直、デュラハンは、自信の首を落とすほどの技量を持った相手ならば、潔く負けを認めるつもりだった。
だが、闘技場という場所で、抑圧していた想いが爆発し、夫婦ともども痴態を晒すのは避けたい。
そこで、夫が鍛冶屋と相談して作り上げたのが、この首ガードだった。
「とりあえず、つけてみようか」
「うむ・・・」
彼女は部屋着の襟を留めるボタンを外し、首を露出させた。
前は鎖骨の少し上から、後ろはうなじと肩の境目に続く線が、デュラハンの首に刻まれていた。
「外すよ」
「頼む」
男がデュラハンの頬に手を添え、力を込めて持ち上げる。
すると、さほど抵抗もなく彼女の首が胴から外れ、胴側の断面から桃色のもやが少しだけ立ち上った。
「どう?」
「大丈夫だ・・・このまま、頭を抱いてほしいが・・・まだ我慢できる」
昨夜の内に一度頭を外したためか、ある程度冷静な口調でデュラハンは答えた。
「首、どうする?」
「見えるところに・・・そうだ、私の膝の上に頼む」
男はデュラハンの首を、ベッドの縁で揃えられた彼女の両足の上に置き、肩のあたりが見えるよう角度を整えた。
「見える?」
「見える」
「じゃ、上脱いで」
「脱がなきゃいけないのか?」
自信の膝の上で、デュラハンが目を丸めた。
「そりゃ、体にフィットするように作ってあるから、服を着たままじゃ装着できないよ」
「・・・わかった」
彼女は男に首ガードを渡して、部屋着の裾に手をかけ、袖から腕を抜きながら、脱いでいった。
上着を脱ぎ、襟の高いシャツを脱ぎ、下着を外す。すると、彼女の乳房が、男の目の前に晒された。
「脱いだぞ」
「じゃあバンザイして」
「バンザイしてる隙に、おっぱい触っていいのだぞ」
「はいはい」
首が外れ、本心が垂れ流しになっているデュラハンに、男は軽く返しながら近寄った。
そして、掲げられた二本の腕に、首ガードの左右の鎖を通した。
腕の間を湾曲した鉄板が通り、首の断面を覆う。鎖骨の上をすっぽりと覆うように、首ガードが彼女の体に装着された。
「どう?」
「うーん・・・」
デュラ
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