森の奥深く、苔むし、ツタに覆われた古塔の地下に、一組の男女の姿があった。
「あらあら、もう終わり?」
黒いローブに袖を通し、三角帽子をかぶった二十半ばほどの女が、石畳の床に膝を突く、鎧姿の少年にそう尋ねる。
「まだ、まだ・・・!」
少年は顔を上げ、幼ささえ感じさせる整った顔に闘志を宿しながら、そう呻いた。
しかし、立ち上がるその両足は小さく震え、両腕は剣を掲げることさえできそうにない。
たっぷりと、女が歩み寄って軽く鎧に覆われた胸を小突くほどの時間をかけて、少年はどうにか立ち上がった。
「あらぁ、がんばるのねえ」
剣を持ち上げきれず、下段に構える少年に、女は心底感心したように賞賛の言葉を口にした。
「そんなにがんばっちゃうボクには、お姉さんがご褒美上げちゃう!」
そう言いながら、女はすたすたと無造作に少年に歩み寄った。
「この・・・!」
声を紡ぎ、どうにか少年は切っ先を持ち上げた。すると、未だ鋭さを保っていた剣の先端が、女のローブに触れ、その奥に食い込んだ。
剣の柄を伝わって、柔らかな手応えが少年の手に伝わる。しかし、女は足を止めることなく、ズブズブと刀身を腹に食い込ませながら少年に歩み寄った。
「な、え・・・!?」
ようやく女に打ち込めた刃だったはずなのに、女になんのダメージもない。手応えと女の様子の矛盾に、少年は混乱し、剣の柄から手を離してしまった。
しかし、少年が退くより先に女は前に進み、ついに少年を抱き抱えてしまった。
「つかまえたぁ」
少年の鎧に剣の柄が当たり、女の腕の力で剣が彼女のどうに根本まで食い込む。それどころか、張り出している鍔さえもが彼女のローブに飲み込まれていく。
「ふふふ、ここまで来て、あんなにがんばるなんて偉いわぁ。きっと一杯今までがんばってきたのね。いい子いい子」
少年より頭二つ分背の高い女のため、抱き寄せられることで彼女のローブの胸元に、少年の頭が埋まった。
布地越しの予想外の柔らかさに、少年はようやく今まで刃を向けていたのが女だということに思い至った。
「わ、わ・・・!」
物心ついてから初めての異性からの抱擁に、少年は手足をばたつかせて逃れようとした。
「大丈夫よぉ。ここには私たち以外誰もいないんだし、少しぐらい甘えてもいいのよ?」
女の言葉に、少年はぴくりと手足の動きを止めた。
考えてみれば、親元を引き離されてからこの歳まで訓練続きで、誰かに甘えた記憶などほろんどない。夢うつつの中、毛布の端を無意識のうちに吸って、寂しさを紛らわせるほどだった。
だが、この女は甘えていい、と言ってくれた。そう、誰も見ていないのだ。だったら・・・
「・・・!」
少年は、顔に押しつけられていた柔らかさに飲み込まれそうになっていたが、とっさに正気を取り戻すと、籠手に覆われた両手で、女を突き飛ばした。
「きゃ!」
予想外に強かった少年の力に、女は腕をほどき、よろめきながら数歩退く。
「だ、誰がお前の誘惑に乗るものか!」
少年は腰から予備の短剣を抜きながら、女に向けて声を上げた。
「僕には少年騎士団の誇りがある!魔物なんかに負けないぞ!」
「あらあらあら・・・」
心を奮い立たせながらの少年の宣言に、彼女は少しだけ困ったようにそう呟いた。
だが、その顔に浮かべていた泣きわめく迷子に困っているかのような表情を消すと、彼女は何かいいことを思いついた、とでも言いたげにニヤリと笑った。
「あなたがそういうつもりなら、こうして上げる」
彼女は両手をローブの腹に触れさせると、へそのあたりに指先を埋めた。丁度、先ほど少年の剣が深々と突き刺さり、柄まで飲み込まれていったあたりだ。
すると彼女は、ローブに食い込ませた指先をそのままに、両腕を左右に開いた。黒いローブの生地が縦に裂け、少年のめに赤いものが晒される。
「うわ・・・!」
「ほら、どうかしら?」
一瞬、女の内蔵がさらけ出されたのか、と少年が声を漏らすが、彼女は痛くも痒くもない様子で少年に問いかけた。
よくよく見れば、彼女の胸の下から両足の付け根までに生じた亀裂の内側には、赤い肉が詰まっているものの、明らかに内蔵ではなかった。むしろ、ひしめき合い、狭い空間に押し込められたその様子は、少年が未だ見たことのない女陰に似ていた。
「うふふ」
胸の奥を騒がせる赤い亀裂に、少年が本能的に目を釘付けにしていると、女が低く微笑んだ。すると彼女の亀裂の奥から、ひしめき合う肉をかき分けながら幾本もの紐状の肉が顔を出した。
粘液に塗れ、ほのかに湯気を立ち上らせる触手は、少年めがけて一直線に伸びた。
「しま・・・!」
亀裂に意識を囚われていたため、反応が遅れた彼の体に触手が巻き付く。人差し指ほどの触手は、どこにそんな力を秘めていたのか、少年の四肢を封じた。
そして、少年の腕がひねり上げられ、痛みによって握っ
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