久々に連れ込み宿に入った。部屋に入るなり、互いの体を触りながら風呂に入り、互いの体を洗いながら一回、湯船の中で一回。風呂から上がって移動しながら一回、ベッドで五回体を重ねた。
アタシの体を心地よいダルさが満たし、彼もほどほどに満足できたようだった。
気だるさに身を任せ、うつ伏せになって羽と尻尾をほどほどに伸ばす。
「あぁ・・・これなら宿泊より休憩と延長一回の方が安かったな・・・」
天井を見ながら、彼はそう呟いた。
「もう、こういうときにそういう話しないでよ・・・」
せっかくいい気分になっていたのに台無しだ。だけどアタシの抗議に、彼は軽く肩をすくめながら応えた。
「でも、料金折半だろ?俺は料金が安い方がいいし、お前もそうだろ?」
「そうだけど・・・ほら、雰囲気とかあるじゃない」
「雰囲気?お前、恋人みたいなこと言うなあ、ははは」
彼はそう笑った。あざ笑うわけでも皮肉で笑うわけでもなく、単純に面白い冗談を聞いたように、だ。
それもそのはず。アタシたちは恋人や夫婦などではない。単に、体を重ねることがあるだけの、友達同士のつきあいだった。
「でも、雰囲気とか贈り物とか記念日とか面倒くさいのは嫌いだって、お前言ってただろ?」
そう。面倒くさいつきあいは嫌いだから、友達の延長線上でいようと言い出したのはアタシだ。
「そういや、そうだったね・・・」
付き合い初めの頃の発言を悔やみつつ、私はどうにか笑顔を作った。
そうだ。この関係はアタシが望んだことなのだ。
「それでさ・・・ついでだけど実は話があるんだ」
「なに?」
若干の居心地の悪さを忘れるべく、アタシは寝返りを打って体ごと彼の方を向きながら、続きを促した。
「実はだ・・・好きな奴ができたんだ・・・それで、この関係を終わりにしようと思うんだ」
「え・・・?」
耳元で、何かのひび割れる音が響いたような気がした。
「ほら、流石に恋人がいるってのに、お前・・・サキュバスと酒飲んだり、互いの部屋やこう言うところに泊まったりするのは・・・まあ相手我なんて言うかはわからないけど、マズいと思うんだ」
どこか照れくさそうに彼は言うが、言葉はアタシの耳を通り抜けていくばかりだ。
「それで、普通の友達レベルの付き合いにしたいんだが・・・どうだ?」
「・・・うん、そうか、そうだね・・・」
アタシはどうにか、そう返答した。
「結婚したり、好きな人ができたときは、潔く終わりにする、だったね・・・」
そのために、気持ちよく関係を終わりにするために、記念日だとか贈り物だとか、面倒なことは避ける。
そんな約束ごとを、アタシは今更ながら思いだした。
「おい、大丈夫か?」
アタシの気分に合わせて、力を失ってへたりこんだ翼と尻尾に気がついたのか、彼がそう尋ねる。
「大丈夫・・・でも、もう少し早く言ってほしかったかな・・・」
そうすれば、もう少し心構えができただろうに。今日みたいにたっぷり愛し合った後で言い渡されるより、ずっとましだっただろう。
「ああ、一応向こうに告白・・・というか俺の気持ちはまだ伝えてないから、本当に終わりになるのはもう少し先・・・だと思う」
「そうなの・・・?」
彼の発言に、アタシは日が射したような気がした。
「なーんだ!てっきり告白までして、その子と付き合ってるかと思ったじゃない」
そう、まだ付き合っていないのならば、まだ可能性はある。
「それで、その子とはどのぐらいまで行ってるの?」
「とりあえず、互いに顔見知りだし、何度か彼女の部屋に行ったり俺の部屋に来たりしたこともある」
「け、結構仲いいじゃないの・・・」
予想以上に積極的な相手に、少しだけ先行きが曇る。
「それで、相手は・・・?」
「サキュバスだ」
アタシとこんな関係を続けて、今更人間に戻るとは思っていなかったが、まさか同種族とは。
「だがなあ、そこそこ話はするんだが、彼女が俺のことどう思ってるかとかさっぱりなんだよ。向こうが好意を持っているのが確実なら、告白すればOKなんだろうけど・・・」
「特に何とも思ってないなら、当たって砕けて終わり、になるわね」
できることなら、砕けて終わってほしい。
「それで、俺はとりあえず気持ちを伝えて、お試しで付き合ってもらおうかと考えたんだ。だが、問題はどうやって伝えるかだ」
「どうやってって・・・相手の前に出て気持ちを伝える、だけでいいんじゃないの?」
「いや、今の向こうとの付き合いだと、冗談だと思われるかもしれないんだ。それに中途半端だと、そういう関係だと思っていなかったって、今の付き合いも切れてしまうかもしれないし」
「そう・・・」
彼の言葉に、アタシは思わず自分を彼に重ねてしまっていた。
自分で課したルールに甘え、中途半端な関係を続けながらここまで来てしまったアタシ。
愛の告白が冗談だと思われるレベルの関
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