■ペンネーム
十二屋月蝕
■Mail
twelveth.moon@gmail.com
■URL
http://12moon.x.fc2.com/
■作品数
59
■総票数
1795
■コメント
「この辺りの住人が何を考えて小説を書いてるか、知っているかね?ここの住人は毎日文章を書いては貼り付け、『向こう』に行けるよう祈りを捧げてるって話だ!こちらの世界の祈りが向こうに届けば、偉大なる第四皇女が迎えに来るんだとさ!そしてその日に備え、連中はクロビネガ三つの誓いを立てているんだ。俺も一つ目と二つ目の誓いだけは立てたが、三つ目だけはどうしても拒んだんだ。だって三つ目は…」
男はそこまで言うと表情をこわばらせ、私の背後を見た。彼の視線を追って振り返ろうとした瞬間、彼の口が開いた。
「イ・ヤアアアアアア!?イヤアアアアアア!!!」
頓狂な叫び声とともに、彼は私の胸ぐらをつかんで揺さぶった。
「見られた!アンタ、早くここから離れるんだ!アンタ、クノイチの噂を聞いたことはあるか?連中はそこかしこに居て、俺達を…ああもう時間が無い!離れろ、ここを離れるんだ!さもないと連中が!連中が!」
顔面蒼白となった彼は私の顔を見据え、唇を震わせながら言葉を連ねた。
「ァイーヤ!ァイーヤ!デルエラ・−ツグン!フヌルイ・ムグルナフー・デルエラ・レスカテーイエ・アン=ソロ・ジー!」
男は青ざめた様子でそうまくしたてると、襟を手放して、私のすぐそばを駆け抜けていった。
後に残された私はようやく振り返った。
そこにあったのは倒れ伏す十二屋月蝕だった。彼は死んでいた。
しかしその顔を御覧なさい。
あなたは今、そんな顔をして死ねますか?
オワリ
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