魔物娘達がこの世界にやってきたのは、数年前のことだ。
最初は異形な彼女たちに警戒し、距離を取って接していたらしいが……いつの間にか隣に住んでいるのが当たり前なほど友好的な存在になっていた。
そして、そんな時代の流れに沿って、学校でも魔物娘を見かけるようになり……今では、それが当たり前のことになっている。
だけど正直言って、僕は……魔物娘のことが苦手だ。
異形な身体に拒否感を抱いている訳ではない。むしろ、可愛いと思うほどで、見た目に関しては好印象しかない。
でも、僕の学校は私服登校ゆえなのか、いわゆる『派手な魔物娘』ばかり集まっていて……そう、僕としては怖いのだ。異性経験が全く無い僕からすると、性に奔放そうな彼女らが別世界の住民のように感じられて……苦手だ。
教室でたむろって会話しているのを聞き耳を立ててみたことがあるけど、彼氏と何回ヤっただとか、このファッションめっちゃエロいだとか、彼氏欲しいだとか……そういう話題しか出てこなくて、やはり僕とは別世界に住んでいるのを実感してしまう。
そんな魔物娘たちの中でも、特に苦手なのが……隣の席に座っている『パイロゥ』という種族のアリサさん。褐色の肌が映えるようなフード付き白パーカーを羽織っているけど、その下は黒のマイクロビキニ姿。更に、スカートもほぼ無いに等しい短さのモノを履いていて、とてもエッチな格好をしている。
そんな彼女は僕のことをよくからかってくる。わざわざ僕のことを『ハジメくん』って下の名前で呼んできて、ビクッと体を震わせてしまうのをニヤニヤとした目で見てくるのだ。イタズラっぽい顔……その顔が頭から離れない……
今日だって『ハジメくん、おはよっ』ってわざわざ挨拶してきたかと思ったら、僕の机に腰をかけて、むっちりとした褐色太ももを目の前に晒してきた。すべすべの太もも、思わず頬ずりしたくなる絹肌感……そんな光景に釘付けになっていると『あれれ〜
#9825;返事はどうしたのかな〜
#9825;』『ちゃ〜んと挨拶できたら、ごほうび、あげよっかな〜
#9825;』ってニヤニヤと見下しながら言ってきたのだ。
こんな風にからかわれてしまうと、ドキ、ドキ、と心臓が破裂しそうなほど脈打って、全身から変な汗が噴き出てきて、何故か股間のナニが大きくなって、どうしたらいいのか分からなくなって……今日もトイレに行くとか
#22099;をついて逃げてしまった。
甘い香りが鼻をくすぐり、自然な微笑みが心をくすぐり、意地悪な声が脳をくすぐる。
そんな小悪魔的な……いや、本当に小悪魔な彼女の隣にいるだけで、心身ともに疲れ切ってしまって……大変だ。
その疲労のせいで、うっかりしてしまうことが多くなり……今日だって、宿題のプリントを机の中に入れっぱなしにしてしまった。幸いなことに校門を出る前に気が付いたので、こうやって楽に取りに戻ってこれたけど、もし家に帰ってから気づいたらとても大変だっただろう。
そんなことを思いつつ、階段を一段一段登っていって、教室のある三階まで辿り着く。そのまま教室まで歩いて近づいていくと……中から話し声が聞こえてきた。
「〜〜って感じらしいよー」
「うーわ、そんなに進んでるんだ〜、あたしも聞いてこよーかなー」
「それで……ミーシャはどうなのよ?」
「ん?どうなのって……あいつのこと〜?」
「そうそう、付き合い始めてしばらく経ったでしょ〜、どんな感じなのか聞いてみたいなーって」
反射的に体を屈めて、そろ〜っとドアの窓から中の様子を伺うと、アリサさんと、同じく『パイロゥ』のミーシャさんが二人きりで会話をしていた。
ミーシャさんも例に漏れず派手な魔物娘で、僕からすると怖い存在だ。アリサさんよりも強気で勝気な性格で、物言いがちょっと強めなのも怖いし……それに、ミーシャさんは僕の友達のユウトくんに無理やり絡んでいるのをよく見かけていて……正直、いい印象があまりない。あの行為が好意ゆえに、ということならその印象はかなり良くなったと思うけど、今の話を聞く限り、どうやらすでに彼氏が居るみたいだから、やっぱり面白がっていただけなんだ……
そう思うとなんだか胸がズキズキしてきてしまう。アリサさんだって、単純に僕の反応を見てからかっているだけなんだ、気まぐれに弄ってきてるだけなんだ……と思ってしまって……
すぐに立ち去りたいけど、プリントは教室の中にある。この教室に入る度胸はとても無いし……今は、彼女と顔も合わせたくない。
だから、仕方なく、そのまま話を盗み聞きすることにした。彼女らが出そうなタイミングになったら、適当なところに身を潜めたらいい。盗み聞きぐらいいいだろう。毎日弄ばれているんだ、こんぐらいならいいだろう。
そう心に言い訳をしつつ、鈍く痛む胸を抑えて、聞きたくもない話に耳を
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