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あのビリヤードが皮切りだった。
これから毎日、という言葉に偽りなく、一緒に遊ぶようになったのは。
彼女はホントに魅力的で……そして、不思議な奴だった。

『そうそう、面白いお店を知っていてね、シンプルなんだけどなかなか奥深い遊びを楽しめるんだ』

『これはね、卓球っていう遊びで、この板がいわゆるラケットなのさ。これでラリーをするんだけど、簡単に回転をかけられるから、こんな風に……え?知ってる?』

期待を煽るような前振りで連れられたかと思ったら、行き着いたのはバー付きの卓球場、なんてことがあった。
昔取った杵柄ということで、色んなサーブやショットを披露してあげたら、目を輝かせていたのをよく覚えている。
他には……

『ねぇねぇ……はい、チーズ!』

『突然なにって……コレだよ、コレ。ボクも手に入れたんだ。ホントに不思議だよね。トランプみたいに薄っぺらいのに、これだけで写真も撮れるし、電話も出来て、更にはパソコンと同じことも出来るなんて』

『……あ、そうだ、連絡先交換しようか。友達だから、当然だろう?』

スマホなんて見慣れた物だろうに、まるで初めて使うかのようにはしゃいでいたこともあった。けれども、片手でスルスルと操作する姿はどう見ても使い慣れたようで……

『じゃ、今度は二人で……はい、チーズ!』

『……そういや、どうしてチーズって言うんだろうね?』

ヤケに近い距離感で接されるようになった。
ただ、それは単なる後輩としては『近い』というだけ。親しい友達という意味であればあり得る距離感。

そして

『ふぅ……あぁ、もうこんな時間だね』

『それで、この後はどうしようか?』

毎日、夜遅くまで遊ぶようになり……その帰り際に、決まって、こう尋ねられるようになった。
それが何を示唆しているのか、分かってはいたが……薄暗い臆病さのようなナニカが、背中で止まって「まあ、帰るしかないな」みたいなことを返し

『ふふっ……それもそうだね』

『じゃあ、悪い狼を食べられないよう、途中まで送ってあげるよ』

なんて含み笑いと共に、手を握られて、毎日一緒に帰路を辿っていた。
他愛ない会話の一つ一つがじんわりと心に染みて、途中で別れた後はどことなく淋しさを感じ、家に着いたらすぐに寝支度をして、少し薄い布団にくるまって

『おはよう、今日もいい一日になるといいね』

次の日を迎え、彼女と出会う。

『じゃ、素敵な時間をよろしくね、先輩さん』

その距離感が

『ふぅ……今回の卓球はボクの勝ちだね!いやぁ、これで師匠の先輩さんを越えた訳だ、冷たいお水がいつもよい美味しく感じるよ……
#9825;」

「……え?ホントは4ゲーム先取とかでやるの?』

お調子者な一面が

『ダーツの投げ方はこうやってね……あぁ、ダメダメ、そんなに固くなったらだーめ、ボクがほぐしてあげるよ』

教え好きでフランクな一面が

『おっと、汗ばんでるね、ボクが拭いてあげるから……ほら、ジッとして』

お世話焼きで、優しい一面が

『ふふっ……友達同士なんだから、そろそろコレにも慣れたらいいのに。どれだけ触れちゃってもボクは気にしないよ……
#9825;』

その美しさを押し付ける艶やかな一面が

『お、ナイスストライク!いえーい!……ふふっ
#9825;こんぐらい喜んだ方が楽しいだろ?じゃ、次、ボクはストライク取ってくるから、ちゃんとご褒美用意しといてね
#9825;』

無邪気さと淫靡さを兼ね備えた一面が

『頼まれてた仕事、終わったよ。それと、これと似たような仕事って結構来るみたいだから、半自動的に記入できるフォーマットを作ってみたんだ。ちゃんと動くか一緒に確認してもらってもいいかな?』

冷静で優秀な一面が

『ビリヤードで大切なのは堅実さと正確性……だから、ボクは気が抜けない。悪いけど、最後の一勝負は本気で行かせてもらうよ』

ストイックで真剣に戦ってくれる一面が

『じゃ、また明日も遊ぼうね』

変わらずに毎日を楽しませてくれる、後輩が、彼女が……
俺はとても怖


「『先輩さん』」


凜とした声が横から投げかけられ、ハッとする。

「これ、終わったよ」

「あぁ、ありがとう、次は……」

「もう、そんなに次は次は……ってやる必要は無いんじゃないかな、ここらで早めのティータイムと洒落こもうじゃないか」

「いや、流石に早すぎるだろう、まだおやつの時間にすらなっていないし」

「そんなお堅いこと言ってたらダメダメ、別にティータイムは一日一回限りだなんて誰も決めていないんだし、何よりボクが飲みたくてしょうがないんだ、パパっと淹れてくるね」

「あっ、勝手に……まあ、いいか」

そう言葉を残し、勝手に席を立ち、どこかへと去っていく。
その後ろ姿を見送って、ふぅ……と
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