『豆まきをいたしませんか?』
仕事も終わり、さあ寝るぞという時にフィネアからそんなメールが入ってきた。
豆まきか。正直言ってあまり乗り気ではない。
だいたいこういうのは、男女どちらかが鬼役をするか、外部の人間を鬼として招き豆をぶつけるというものになりがちである。お遊びとはいえ、お互いに豆をぶつけるなどという残虐非道な行為が出来る訳がないので前者は完全になし。
後者に関しても、俺に(すぐ来れるような距離にいる)友達は居ない為、必然的にフィネアの関係者になる。となると、ほぼ12割の確率で魔物が出てくるだろう。アカオニとかアオオニとか、素で居そうだし。そんな、善意で来てくれた人に投げるなんて傍若無人な行いを俺は行えない。
よって、いくらフィネアの誘いといえど脊髄反射で頷く事は出来ないのだ。
『ご主人様のお考えは理解しているつもりでございます。ですが、私がお誘いしているのは『魔界風豆まき』です』
魔界風?
ロミ・ケーキでよく目にしていた形容詞だった。基本的にこの単語が付くと、魔力が込められていたり、特殊な製法で作られていたりする。そういえばフィネアが持ってきた食材を食べてるカーチャン達は大丈夫だろうか。まあ大丈夫だろう。カーチャンだし。
『詳細はお話し出来ませんが、少なくともご主人様もきっと楽しんでいただける催し物でございます』
……ならいいか。
参加の意を表す返信を送りつつ、どんな行事なのかを夢想する。
豆。豆か。豆といえば陰核、クリ
amp;リスだ。うん。そんなの撒けない。一瞬千切って投げる所を想像しちまった。
当日の楽しみにする、と言う事で考えるのはやめよう。
そうして、いつも通りベッドに横になった。
・・・・・・
いやまあ、ね?
魔界風、といかがわしい形容詞が付いている以上、とってもえっちいイベントになるとは思っていたけどね?
『そ・れ・で・は! 第23回、魔界風豆まきグランプリを開始するわよーっ!』
ああ、ノリノリだよ有澤社長。しかもそれにノって周りのカップル達もわいわいガヤガヤし始めたよ。あ、あそこのカップルもう脱ぎ出した。あそこに関してはもう胸揉み始めてる。
つーかこの騒ぎ、23年前からあったんですね。すげぇ。
「はい、ご主人様」
サーブされた皿を受け取り、既に乗っていた料理を箸でつつく。うむ、フィネアのご飯程じゃないがそこそこ。
しかし、すげぇ人だかりだね。ロミ・ケーキ貸切にして全席開放してもまだ立ってる人居るし。
「人気行事の一つですから。いろいろと凄いんですよ?」
何が?
「そ、それは主催者の方からの説明を聞いてください」
……フィネアが言い淀む、って事はエロイベントなんだろうなぁ。
まあ、別にいいけど。今日は汚れてもいい服で来たし。
「ご主人様方はあまり汚れないのですが……」
うーむ、よく分からん。
「今日初めての魔界夫婦も居ると、お・も・う・の・で、ルールの説明をしまーす! で・す・が!? 最初に確認!」
確認?
社長が客席側にマイクを向けて、
「今日撒く豆は!?」
落花生? インゲン豆? ソラマメ?
そんな事を考えていると、観客は、
「「「「「精子!!!」」」」」
……ホァイ?
あのー、フィネアさん?
「……」
いやいやいや、顔真っ赤にして顔背けないでよ。
まるで意味が分からんぞ。説明してちょうだい!? 何で白くネバつくアレが豆扱い!?
「ほら、豆って胚珠じゃない? つまり種子じゃない?」
あ、社長自ら説明してくれるんですね。まあ、そうですけど。
「という事は、種=豆! 逆説的に豆=種! そして、あなたのオチンポから出るのは!?」
一応、分類上種に当たるものですね。というかセクハラめいたクイズするのやめてもらえません?
「そう! 今日は鬼(おにくのぼう)は外! つまり挿入は禁止! で・も・で・も! 福は内! つまり!? 子宝を得るには内に出さなきゃならないわ!」
えぇー……。何というこじつけ……。
「この魔界風豆まきは、『挿入をせず』! 『一定距離離れて射精し』! 『パートナーの子宮に命中させる』! そして、『一番早く福が来た人』が優勝という、とってもえっちなイベントよーっ!」
豆、まき……? 種まきとも違うような、ええと、何だコレ。とっても(頭の)愉快なイベントの間違いじゃないですかね。
つーか福が来た人って。受精したら、って事? そんなん、枯死するまで射精しても確
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