好感度→→┃→→→→→→→

世の中には、動物園と呼ばれる施設が存在する。
本来ならその地方には生息していない筈の動物を飼育し、観客に見せる為の施設なので、わざわざ外国に行ったり大自然の中に身を投じるなどといった危険を冒さずとも、普段写真でしか見られない動物の生きた姿を見る事が出来る。
間近で見る、動物によってだが触れられる、生体を知れるといった利点がある一方で、リピーターが出来にくい、経費がかさみやすいといった難点も存在する為、場所によっては経営が立ち行かなくなり廃園となる事も珍しくはない。その為、動物園側は様々な工夫を凝らす事に日々血眼になっているようだ。

とまあ、これが俺が動物園に抱くイメージである。
年明け早々何を言っているのかって? そんなの俺が聞きたいね。
だってさ。

「ご主人様、ほら、あそこですよ? 木陰に居るじゃないですか」

いや、見えないって。一面真っ白でフクロウなんか何処にも、

「うーん、それではこの指を見てください。動かしますのでゆっくりと視線をズラしてくださいね? ーーはい、この位置です。その位置のまままっすぐ、よく目を凝らしてみましょう」

そんな事言われても、居るようには。
……あれ? 何か不自然な横線が、3本あるな。上に2本、下に凄い短いのが1本あるけど。

「はい、それですよ。その部分だけ、輪郭が丸いように見えませんか?」

うっわアレ!? 分からんよすげぇ擬態能力!
つーかフィネア、よく一目で見つけられたね。

「私もメイドの端くれですから。目だけで物事は見ておりませんよ」

メイドってすげぇ……。天井裏にニンジャが居ても気付きそうだな。
しかし何というかこう、随分とユルい顔のフクロウだね。

「ええ。見ているだけで和んでしまいます」

カメラで撮って、何処にいるか分かるかなコレ。

「それを探すのも、また違った楽しみがあるのではないでしょうか?」

まあ、それもそうか。

親戚への挨拶回りが終わった後、何を思ったのか俺たち。
来ちゃったんだもん。動物園に。

・・・・・・

元旦を告げる鐘の音を聞きながら、俺は実家のリビングにてあけおメール(『あけましておめでとうございます』という謹賀新年の意を伝える旨をしたためたメール)を友人知人同期などに送信していた。

「どうぞ、皆様。お雑煮が出来上がりました」
「ありがと。あと大掃除お疲れさんー」
「いいえ、好きでやっておりますから。ご主人様も手伝って下さいましたし、楽に終わりました」
「んー。この超要領悪いボンクラでも使い物になったのね。よかったじゃないの」

カーチャン正月から辛辣ですね心折れるんでやめてもらえませんか。
湯気が立ち込める容器が全員に行き渡ったのを確認して、外出用服装のフィネアが声を上げた。

「皆さん、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします」
「はいはい、こちらこそー。……まったく、アレも新年くらい家に居りゃいいのに。魚釣りなんて寒い中ご苦労さんだわー」
「今年も愚弟を頼むぞ。母上、父上の釣り好きは今に始まった事ではないだろう?」

家族の発言が地味にグサグサ刺さる。ちょっと泣きたい。
それはともかく、こちらこそあけおめ、今年もよろしく。

「はいっ。それではどうぞ、召し上がって下さい」

父親を除いた全員がフィネアお手製『魔界風雑煮』を口に含む。事情を知っている身としては、ウチの家がプチ魔界化しないか非常に心配せざるを得ない。

「こ、これは……! フィネア、この餅は何処から!?」
「ま……、叔母の方から届いた物です。農家を営んでおりまして」
「ほほー、餅米の質が違うね。こりゃ美味いわ」
「それだけではありません母上。雑煮のツユもまた格別……!」

相変わらず美味いなぁ、フィネアの料理。
てか君、和食も作れるんだね。

「メイドたる者、古今東西全ての料理を作れなくてはなりませんから」

はい、今年のほっこり笑顔頂きましたー。ごちそうさまです。

「お代わりもありますよ?」

胸焼け胃もたれ確定だわー。これはもう回避不可だわー。

「なーに夫婦漫才してるのさ。イチャつくなら部屋でやんなさい部屋で」

フヒヒサーセン。
あ、隣に座るフィネアがこっそり手を絡めてきた。顔と口調に出せない分、行動で漏れてきたか。望む所……!

「……っ♪」

密着した指が徐々に熱を持っていく。
しかも、わざわざプレゼントした水色の髪飾りを見せつけるように、ちょっとずつ頭をすり寄せ
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