まずデートで行くとしたらウインドウショッピングだ。何かそういう感じで一般的に言われているので、そういう店の前に来てみた。
基本、服は量産品の店に行き、サイズを見て着心地がいいかを見て丈夫そうか確かめて購買するという、デザイン完全無視なのが俺の主流だが、今は隣に女の子が居るのだ。そうも言ってられない。
しかし何というか、
「……」
いやぁ、あの服高そうだねぇ。あっはっは。
「そ、そうですね! 使っている生地も柔らかすぎて動きにくそうです!」
だよねぇ。
……。
「……」
き、気まずい……っ!
どうした俺! 普段なら、『それでもフィネアなら似合いそうだよHAHAHA』とか言えるはずなのに、何で今日に限って頭が回らねぇんだ!
「あ、あの、ご主人様?」
な、何かな。ひょっとして楽しくない?
「い、いえ! そんな事は! 決して、そんな事は、ないです……っ」
そう言って、沈黙してしまった。
うわぁぁぁぁぁぁ息が詰まるぅぅぅ!
誰だ生まれつきエロい宿命背負わされた春夏秋冬発情期キーモラな子にエロ禁止なんて言った奴ぅぅぅ! この子ド級の真面目さんだから、エロい発言及び思考をしたらスイッチ入っちゃうかもしれない、って萎縮しちゃってるじゃないかぁぁぁ!
くぅっ……! 一刻も早く打開せねば、今日という日はよく人の名前を間違えるスピード狂のオールバックな走り屋のようにすぐに走り去ってしまう!
だがこの、俺にとって完全アウェーな洋服店通りでは打開出来る訳がない! かといって、『ゴメンアレなし!』なんて言った日にはフィネアに余計な気を使わせてしまう! それだけは避けねばならん……!
「あれ? お前、こんな所で何やってるんだ?」
誰だお前はっ!?
振り返ると、そこには見覚えがある……、ような気がする男が居た。
何処かで見たような、けど名前も何処で会ったかも思い出せない、そんな程度の存在。正直かなり反応に困る部類の相手だ。
こんなのに構っている場合ではない。誰だ、何て聞いた日には会話文の無駄になる事間違い無いので適当に、久しぶりだなー元気してた? などと返しておく。
「おう、元気元気。今上の階でバイトしててさ。ーーで、その子は何だ? 彼女か? クラスで一番そういう気配のなかったお前がなぁ……」
そうだよ悪いかよさっさと帰れよダレカ=サン。
仕事中なんだろ? クリスマス商戦で忙しいんじゃないのか?
「おっと、そうだった、いけねーいけねー。それじゃ、頑張れよ!」
おい走り去りながらグッと、人差し指と中指の間に親指を差し込んだ変形サムズアップをするんじゃない。ウチのメイドはそういうのにBINKANなんだから。
「ーーご主人様?」
ステイステーイ。気にする必要はないんだよー? アレはバカがサムズアップと間違えてだね?
「親指を人差し指と中指の間に挟むのが正常なら、もしかすると中指と薬指の間に挟むと後ろの穴に……?」
うおーい、言っちゃいけないような思考が漏れてるよー?
「ほあぁっ!? ……わ、わた、私今……」
あの誰だか知らない馬鹿の所為で余計に萎縮してしまったじゃないか……! ゆ゛る゛ざん゛!
こうなったら最後の手段だ! 丁度手頃な所に目的の物を取り扱っている店がある。
やるしかない……! 行くぞ、覚悟しろ俺!
フィネアー?
「は、はいっ!?」
見て見てー、クリスマスツリー。
「……へ」
深緑のコートを試着しながら、すぐ隣にあったクリスマスツリーの電飾コードを頭から被る。さらにそのまま両手をナナメ下に伸ばす事で、より完成度は高まり、最後に頭の上に落下しないよう星を乗せて完成!
そうだ、俺自身が、ツリーになるのだ……!(混乱)
「……へ?」
ほ、ほらほら、丁度乳首の辺りに電飾が! チカチカ光るよ! すっごい光るよ! らめぇぇぇ光っちゃうのぉぉぉ!
………………何か、その、……ごめん。
「ーーぷっ」
ほぁい?
「ふふ、ふふ、あはははははははっ!」
え、えぇ……。
思った以上に笑って頂けてるんですが。変なツボに入ったかな。
あまりにも惨めな俺を哀れんだが故の演技? いや、フィネアが演技を出来る程器用な性格しているとは思えないし。つーか表情がガチ笑いだし。
「つ、ツリー、ふふ、ご主人様ツリー、あははは……っ!」
口元抑えて笑い堪えようとしているが収まる気配がない。
え、えーと、……似合ってる?
「は、
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