好感度→→→→→┃→→→→

最初に言っておく事がある。
俺は犬を飼った事がない。もちろん実家でも飼っていない。それ故に、ペットとしての犬の扱いはロクに知らない。
だから今からやろうとしている事は、知っている限りの情報を掻き集めてそれっぽくしているだけである。
基本でもある『散歩』に行く為の用意としては、まず、暴れ出さないように身体を優しく抑え、

「きゅぅんっ?」

……大人しいなぁ、おい。
つ、次は締め過ぎず、かといって動いている内に抜けないよう首輪を嵌めて、

「わんっ♪」

く、首を差し出してくるとは……。
いやまあ、嵌めるの楽でいいけどさ。犬としていいのかコレ。
それだけ信頼されてるのか、懐かれてるだけなのか。まあ、どっちもな気がするけど。
で、首輪をした後しっかりリードで繋ぐ。引き過ぎて首を絞めないよう気をつける、と。

「わぉんっ♪ わんわんっ♪」

おおぅ、凄く『散歩に連れてって!』という意思が伝わってくるのが雰囲気で分かる。多分だが。
いやぁ人懐っこい犬だとこうしてて楽しいね。一挙手一投足が嬉しそうだからこっちも和む和む。

その、首輪で繋いでるのが全裸の恋人(フィネア)でなければの話なんだがな……!
いやぁもう精神的にヤバい。どうヤバいかって、直視してると5秒と持たずに犯せる自信があるくらいヤバい。

「わぅん?」

首をかしげてこちらの様子を伺うフィネアの喉を撫でながら戦々恐々としながら傍らに置いてあった本に目をやる。
……つーか何でこんな『鮭でも分かる、犬の飼い方』なんて本があるんだよ! 被飼育願望でもあったのかフィネア!? 言ってくれれば普通にやったのに!
でも言われて出来たか、と聞かれると無理! だって恋人の全裸を赤の他人に見せる事になるかもしれない、っていうのすげぇ納得いかないし! 俺他人に執着ないけど自分の大事なものに対しちゃすげぇ支配欲強い事最近分かったし!
それでもやっぱり、こういう支配願望ってのはある訳で。やってみたいと思う訳で。何せこちとら『屈服』とか『催眠』とか『支配』とかそういう単語が飛び出すエロゲをこよなく愛するマイスターだから。野外露出とか、隷属とか、首輪拘束とかそういうジャンル大好きだから。
でも正気のフィネア(こいびと)をそんな風に扱うのも何だかなぁ、と。先輩の無茶振りとかで疲れた時に甘えさせてくれたり、仕事が面倒で嫌になった時叱ってくれたりするフィネアを、そんな家畜のように扱うなど出来る訳がないから。
ただ、この状況は普段とは大きく異なる。何故なら、今フィネアは『正気ではない』。生物としての理性が極限まで縮小し、動物に近くなっている。つまり、『人馴れした狼』と同義なのだ。いやまぁ狼でもここまで肌をすり寄せてきたり匂いを嗅いできたり舐めようとしてはこないだろうけど、今はそんな感じで。
要するに今のフィネアにとって、この扱いは『正しい相手の仕方』なのだ。どうせ治るのだし、それならそれで彼女がストレスのない扱い方をするのが正解だろう。こっちとしても、普段はまず出来ないこのシチュエーションを精一杯楽しみたいゲスい気持ちがあるのだし。
後からバレて嫌われるんじゃないか、と思えなくもないが、そもそも理性が病気で縮小しているにも関わらずこれだけ懐かれてる、って事はフィネアが俺に対して抱いてる想いまで縮小してしまった訳ではないのだろうし、やっても怒られないだろう。たぶん幻滅もされないだろう。
まあ、一週間くらい恥ずかしがって顔合わせてくれないかもしれないが。
という事で、尻尾をパタパタ振りながら四つん這いで俺の前を嬉々として歩くフィネアの後を追う。
目の前には、玄関ドア。当然鍵は開いているし、その鍵は俺の手の中にある。その気になれば、このまま部屋の中で楽しむ事だって可能だ。
……だが、それじゃいつも通りだろう?

・・・・・・

エレベーターを降り、通用口を抜けると、そこは四方を壁に囲まれた屋外だった。
上を見れば満天の夜空。周囲にはおそらく木だと思われる、生物学に正面からケンカ売ってるような形状の何かや、ちょっと常識じゃ考えにくい色の芝生が、公園のような景観を作っている。
いやいや、これを公園と普通に考えてしまってる俺、ヤバくね? その上何かこの光景、妙に落ち着くんですが。どう見ても正気度が削れて行くような景観な筈なのに。

「わんっ!」

喜びの鳴き声と共に四足歩行モードのフィネアが駆け出す。
常識的思考を持っていたら『素足で外を走ったら怪我するだろうが! あの玉の肌を傷付けるとかありえねぇ!』とか考えるのだが、

「くぅん
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