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#160;20XX年! 日本は魔物の魔力に包まれた!
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#160;海は(性的な意味で)荒れ、地は(ジャンル論争により)割れ、男は旦那に、女は魔物になり、人間という種族は(いろんな意味で)壊滅しようとしていた!
「ーーフィネア。君は、侵略者側の魔物だったのか……!」
「ええ、そうでございますわ。私の愛しきご主人様」
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#160;今、俺の前に立っているのは、普段の由緒正しいメイド服を着こなした、微笑みの似合うフィネアではない。
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#160;漆黒のメイド服を身に纏い、妖しげな笑みを浮かべる妖艶な魔物、ダークサーヴァント・フィネアであった。
「あなた様が、全てあなた様が悪いのですよ? 本当は、この国の情報を集める為だけにあなた様に近づいたというのに……。ーーこんなに、こんなにも私を本気にさせてしまった。本気で私を、あなた様だけの『従者』に、『雌』にさせてしまった、あなた様が」
「……フィネア。そう思ってくれているなら、その箒を引いてほしい。こんな、次元侵攻なんかやめて、俺と暮らそう。俺と、生きていこう? な?」
「ご主人様は、お優しいですね。……ですが、この、肌の色が違うだけで差別の対象になる世界で、私達異形の存在が認可されるとでもお思いですか?」
「それは……」
「私達は違います。たとえ相手が世界的有名な企業の社長であろうと、職を失ってしまったサラリーマンであろうと、罪を犯してしまった方であろうと、それが愛しき人であれば見下したりはしません。私達は、そんな理想の世界を広げる為にこうして魔力を散布しているのですよ。ーーそれが、間違っているとでも?」
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#160;俺は彼女の問いに、答えられなかった。
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#160;確かに彼女の言っている事は真実だ。そして、彼女達の望む世界も、素晴らしいものだという事は分かる。
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#160;だが一方で、理性が告げていた。『人間という生き物は、そう単純なものではない』と。
「ーーさあ、私の手をお取りくださいませ、ご主人様。その手の武器を捨て、私達と行きましょう……? そうすれば、私はまた、あなた様の側に侍る事が出来ます……。それも、未来永劫、お側に」
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#160;フィネアが手を差し伸べてくる。
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#160;どうすればいい。俺は、どうすれば。
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#160;その、禍々しくも美しい姿を前に、俺は。
・・・・・・
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#160;薄暗い部屋の中、俺はまだ重い瞼を抑えながら呟いた。
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#160;変な夢見た……!
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#160;そして何気なく股間を見た。
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#160;元気……! あの黒くて露出多いメイド服も、また良し……! おのれ、俺に絵の才があれば仕立ててもらうというのに……!
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#160;そんな、週末三日前の早朝。
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#160;フィネアと再会してから三日経った日の事であった。
・・・・・・
「ーーという事がありまして、今の場所の『ロミ・ケーキ』に配属になったのです」
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#160;なるほどねぇ。
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#160;新店舗作ったから全国の『ロミ・ケーキ』より数名ずつ集めてスタッフにした、と。
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#160;社長絶対分かってて後から言ったよね、それ。
「でしょうね……。全く、もっと早く言って頂ければ別れを悲しむ必要はなかったというのに……」
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#160;まあまあ。アレもいい経験という事でさ。こうしてまた会えるんだし、いいじゃん。
「ご主人様がそう仰られるなら……。ところで、これからどちらに向かわれるのですか?」
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#160;ああうん、到着してからのお楽しみ。……楽しめるかどうかは分かんないけど。とにかくもうちょっとで着くよー。
「???」
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#160;しかし今日も可愛いねー。白いブラウスに茶色の、……何て言うんだこの薄手の上着。あと紺色のロングスカート、高すぎない黒のヒール。うーむ、どこかのお嬢様みたいじゃないか。似合ってる似合ってる。
「あ、ありがとうございます……♪」
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#160;休日の午前中。俺はフィネアを連れ、外に出ていた。
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#160;彼女の新居に向かう、という訳ではなく、またデートという訳でもない。彼女を、でもあるが、彼女に紹介したい人物が居るのだ。
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#160;今日の、この大事な日の為に色々考えてきた。結局何て言えばいいのかネットで調べてもロクに出てこなかったので何も考えずその場の勢いで言えばいいんじゃないか、という事を考えたのだ。
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