#160;
#160;流石に恥ずかしい、との事で並んで歩く事になった。
「ご、ご主人様に抱き上げられながら街中を行くなんて……、『繋がりながら』の次ぐらい……、ほあぁっ!? ち、違います! 公共の場でやるべき事じゃないですよ!? いくら何でもーー」
#160;
#160;いや、俺そこまで言ってないんだけど。
#160;
#160;つーか冷静になってみると俺何やってんだ。あんまりにも嬉し過ぎて俺の中の何かがボルテッカしちゃったのか。反物質はヤバいって。せめてクラッシュイントルードにしなさい。装甲(ふく)だけで済むから。
#160;
#160;そんなこんなで今、フィネアが住むマンションの前まで来ていた。
#160;
#160;そーいやさ。
「いかがなさいました?」
#160;
#160;前聞いたけど、ここって君の職場の親会社が経営してるんだよね?
「はい。中に住んでいるのは職員とその家族でございます」
#160;
#160;て事はさ。
#160;
#160;この、エレベーターに書かれてる数多くの名称から察するにさ。中に住んでるのって……。
「……ご想像通りです。くれぐれも、私から離れないでくださいね? 一応私達は思い人持ちの男性を襲う事を控えるとしても、見境ない者は本気で襲って来ますから」
#160;
#160;りょ、了解。俺だってフィネア以外に襲われたいとは思わないし。
「お、襲っ!? そそそそんな事ーー、な、なくは、ない、です、が」
#160;
#160;だよねー。一番最初に攻撃仕掛けてきたの君からだし。
「うぅ……」
#160;
#160;エレベーターが地上から離れていく光景を流し見ながら、クールとクールの間に挟まれる総集編のように、衝撃のあの日をトレスする。
#160;
#160;……いきなりズボンを下ろすわ、俺がひるみモーション入ってる内にワンモア入れてきて手コキし始めるわ、終いには自分から乗ってくるわで。アレには本気で驚いたわー。
「……申し訳ありませんでした」
#160;
#160;あいや、怒ってる訳じゃないよ? そうでもしなきゃ恋愛童貞の俺には君と距離を詰める事なんて出来なかったと思ってるし。……むしろアレが夢だと最後まで思ってた俺の方が失礼だろう。
#160;
#160;そこでさ。あの時、初めて俺の息子にアイサツした時の感想聞かせてくれないかな?
「えっ!? ……そ、それは、その……」
#160;
#160;タイムリミットはあと5秒。はい、4、3、ヒャア我慢出来ねぇゼロだ!
「ちょ!?」
#160;
#160;はいどうぞ!
「ーーただ、『欲しい』と……、そう思いました」
#160;
#160;え、一言?
「……昔から、ご主人様となる人物の精はどういう味なのか、という事やご主人様との夜伽を前にするとどうなってしまうのか、と考えていました」
#160;
#160;うーむ、お嫁さん志望の夢見る乙女のような発言……じゃないな。魔物版夢見る乙女、的な?
「『この方の匂いに、ずっと包まれていたい』、『待ち焦がれ、はしたなくもこの身を貫かれる事を待ち焦がれてしまう』、『専用の雌として、孕ませられる事をただ望むようになる』。そんな、いろいろな感情が湧き上がって来るのでは、と、あなた様の無防備な姿を見て我慢が出来なくなる直前まで思っていました。ーーですが」
#160;
#160;ですが?
「精の香りを直接感じて、頭が真っ白になってしまったのです。余計な思考を全て吹き飛ばしてしまうくらいに強烈で、圧倒的で。……残っていたのは、心の底からの、飾りない願いだけでした」
#160;
#160;なるほどー。……俺のチンーコ、そんなに君にクリティカルヒットしたのかー。きゅうしょにあたった、こうかはばつぐんだ! ってか。俺さっきからテンパってない? 大丈夫? 不審者っぽくない?
#160;
#160;エレベーターが到着を知らせる電子音を鳴らす。チンーコの話の途中に『チーン』って音は何か作為的な物を感じるなぁ。
「も、もちろんそれだけでなくご主人様に付き従いたいという気持ちも本心です! 決して身体だけが目的ではありませんからね!?」
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#160;大丈夫。微塵も疑ってないから。でなきゃ俺は逃げてる。
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#160;本当に、感謝してるよ。強引にでも俺に気持ちを伝えてくれて。
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#160;下らない偏見や勘違いを捨てさせてくれた部屋へ繋がる扉を通る。鍵が閉まり、完全に邪魔の入らない二人だけの空間になった今、この感謝の気持ちを全力で伝えよう。
「ーーきゃっ!?」
#160;
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