#160;
#160;はぁ。
「1、2! 1、2! ーーオラァそこ! 何へばってるんだ!」
#160;
#160;あー。
「おい、ボーッとしてどうした? 早く運ばねぇと班付がうるせぇぞ」
#160;
#160;ん? ああ、うん。
#160;
#160;……はぁ。
「……本当にどうしちまったんだ? お前、昨日ギリギリに帰って来てからずっとそうじゃねぇか」
#160;
#160;あー、何つーか、ねぇ。
「随分歯切れ悪りぃな。何だ? ネカフェにエロゲでも忘れて来たか?」
#160;
#160;いやいや、違うって。
「じゃあ何だよ? 俺らが昨日お前に黙って合コン行ったのがそんなに気になってんのか? 仕方ねーだろ、お前二次元にしか興味ない、って普段から言ってるから誘わなかったんだぞ?」
#160;
#160;それでもない。あ、合コン楽しかった?
「おう! あのメイド喫茶の店員繋がりですんげー美人とメルアド交換したんだよ! 来週の土曜日早速遊びに行く事になっててな!」
#160;
#160;ああ、そう。それは楽しみだねー。あはは。
#160;
#160;とまあ、そんな乾いた愛想笑いをしつつ、会話が逸れた事に安堵する。ぶっちゃけ話してもいいんだが、説明が難しいというか何というか。
#160;
#160;こうこうこんな娘なんだぜー、と頼みもしないのに、知り合った女の子の特徴を教えてくれる班員に相槌を打ちつつ、現在気にしている問題を思い返す。
#160;
#160;分かりやすく言うとこうだ。
#160;
#160;小学校では乱暴者の女子にサンドバックにされ。
#160;
#160;中学校では集団でキモイキモイ言われ。
#160;
#160;高校ではついに存在を無視されてきた、魔法使いにジョブチェンジする事が確定していた筈の俺に。
#160;
#160;まさかの、リアルの彼女が出来てしまった。
#160;
#160;それも、綺麗で清楚でやや、いや結構エロくて、献身的で真面目で、優しくも厳しく、しっかりしているようで所々愛嬌のあるとても可愛い娘が。
#160;
#160;何が起こったんだ、俺の人生。何処でフラグを建ててたんだ、俺。
「っ!? 気を付けろ! 重い物運んでるんだから集中しろよ!」
#160;
#160;だが、ここで一つ問題がある。いや、問題と言えるかどうかは人それぞれだが。俺は別に気にしていないというかむしろバッチコイなんだが。
#160;
#160;彼女が、人間じゃないのだ。
#160;
#160;あ、インク製とか、ビニール製とかの話じゃなくてだな。知的生命体的な意味で、人間じゃないらしい。
『魔物』
#160;
#160;彼女は、フィネアは自分の事をそう言って、人にはあり得ない姿を、異形の自分を俺に晒した。
#160;
#160;犬のように大きな垂れ耳に、狼のようにフサフサな尻尾。手首からは羽毛が腕輪のように生えており、膝より下は人の形に習った鳥足。
#160;
#160;確かにどう見ても、人間ではなかった。ただのコスプレならまだしも、全てに触れて、動いている光景を目にしているから間違いない。
#160;
#160;俺は、そんな人外な彼女を、美しいと思った。綺麗だ、と思ったのだ。
#160;
#160;最近ネットで話題になっている『モンスター娘』というジャンルに熱中していなければこうはならなかっただろう。つくづく日本のオタク文化には頭が下がる。
「ーー危ねぇっ!」
#160;
#160;まあ、それだけならまだ分かる。いや、現代科学で理解出来ない存在だから、元理系としてはあんまり理解出来ないんだが。
#160;
#160;問題は、彼女たち魔物の習性だ。
『詳しい説明は今度、直接お会いした時に説明させていただきます。ですから、今は『このような存在だ』と思っていただければ問題ありません』
#160;
#160;先週、フィネアの家を出る前に教えてもらったのは『魔物達は皆好色で、でも思い込んだら一途で、隙あらば恋人とえっちな事したいと思っている子達』という、にわかには信じがたい事実であった。
#160;
#160;そんな男の欲望を絵に描いたような存在、と、昨日彼女の家に行く前に聞いたなら笑っていただろう。だが、今ならすんなり信じられる。
#160;
#160;何故なら、その、『好色で、思い込んだら一途で、隙あらばえっちな事をしたいと思っている』存在と同じベッドの上で、
「逃げろぉぉぉっ!」
#160;
#160;へ?
#160;
#160;・・・
「ーーご主人様っ!!!
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