「ーーはい、私特製のカフェオレが入りました。こちらのマフィンはサービスですっ♪」
質素な一人用のテーブルに座る俺の眼前に、茶色の液体が注がれたコップと小さなカップケーキが置かれた。
どんな種類の珈琲でもいい、という事なので思いついた単語をお願いしてみたらマジで出てきた。しかもおまけで焼き立ての、しかも見るからに手作りのお茶受けまで出てくるとは。
……どうしてこうなった。というか、何処で一生異性と関わらないはずの未来が変わってしまったんだ?
何故俺は知り合いの、やたら俺に親身になってくれる女性の家に上がり込んでいて、呑気にティータイムといこうとしているのだろうか。どう考えてもヘタレ童貞野郎が平然とやっていい事じゃない。何だこのリア充みたいなイベント。このまま、『次は君を頂こうかな(キリッ』なんて言うんですかそうですか。
言えるかそんな言葉……!
「どうされましたか? まさか、何かお気に召さない事でもーー」
いやいやそんな事ないデス。あまりにも自分のイメージからかけ離れた行動をしてる最中なんで思考が太陽に向かって走り出してた所デス。あ、今帰ってきた。
「ーーそうでしたか」
ああ、胸を撫で下ろして安堵する所とか、本当に可愛いなぁ。もっと困らせてみたいなぁ。
……何を考えてるんだ、俺。確かに俺はエロゲの中でもかなりハードなジャンルをエンジョイする鬼畜変態野郎だが、リアルの女の子を困らせて喜ぶクソ野郎じゃないだろう俺。妄想と現実の区別がつかなくなるような年じゃないだろう?
いやまあ、冗談抜きでフィネアは可愛いと思う。俺が人生二十数年の中で見た異性の中でぶっちぎり、いや別格、いやいやもう同列と考えるのも失礼なんじゃないか、と思うような感じだ。
知り合ってまだ三週間だから本音までは分からないが、俺みたいな無精無能卑屈人間を相手にしても馬鹿にする事なく、献身的に支えようとしてくれるなんて、間違いなくいい子か危篤な子だろう。
こんな子を彼女に出来れば、それはそれは人生薔薇色、むしろ虹色になるんじゃないだろうか。
あ、珈琲冷めちゃうね。飲まなきゃ(使命感)。
……ち、違いの分からない男でも、これは分かる。今まで俺が飲んでいたのはどうやら『珈琲』ではなかったらしい。『ポーピー』とか、『ウド』とか、そんな感じの何かよくわからないものだったんだろう。コクってか、そういうものじゃなく、根本的な所が違う。それくらいに、味わい深い。
これ、何処の豆ですか? ブラジル直産?
「いえ、魔か……、知り合いから頂いたものです」
え、今何か言おうとしなかった?
「な、何でもありませんよ?」
……まあ、いいや。
じゃあ次はマフィンを頂こう。触れるとまだ温かいし柔らかい。冷やして身が締まった奴もいいけど、こういう出来たても大好きです。しかも程よく温かい、って所が猫舌の俺に優しい。前に店で猫舌だって事ちゃんと聞いててくれたんだなぁ、としみじみしながら一口。
結果的に、買って食べるお菓子の種類が減った。やべぇ、美味い。
#160;
#160;来てよかったなぁ、このお店……じゃないな。フィネアの家だな。
#160; つーか、本当に質素な内装だねー。装飾も何もなくて、必要最低限のものしかないじゃない。女の子の家って、もっとこう、可愛らしいイメージがあったからさ。
「……ご主人様は、地味で可愛げのないこの部屋はお嫌いですか?」
#160; とんでもない。フィネアらしくて素敵だと思うよー。
#160; ちなみにさ。
「はい、何でございますか?」
帰って来て早々、何でメイド服に着替えたの?
「主人にお仕えする時は必ずこの服装であるべき、と教えられましたので。……お気に障るようでしたら、着替えますが?」
#160;
#160;ああ、そうなんだ。違和感が微塵もないからそのままでお願いします。
#160;
#160;あとさ。家の人とか、他に居ないの?
「はい、この家には私一人しか住んでいません」
#160;
#160;あー、そうなの。って事は二人っきりかー。
#160;
#160;……へ。
「……ふふっ♪」
#160;
#160;あの。このコーヒー、挽いた豆しか入ってませんよね? 何でか分かんないけど、君の笑顔が怖く見えるんだけど。
「え?」
#160;
#160;あゴメンゴメン。ちょっと懐疑的だったね。ちょっと前まで女を信用出来ない病気を持ってたからね。
「……」
#160; あ、もう一杯頂けるかな。
「かしこまりましたっ」
#160;
#160;メイド姿の彼女がキッチンに消えていくのを見
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