すっかり日は落ち、月明かりが明かりのない部屋を照らす。
俺の眼下には一糸纏わぬ裸身のままベッドに横たわり、期待に満ちた眼差しを向けてくるフィネアが。
そしてその紫水晶のような瞳に映るのは、同じく裸の俺ただ一人。
互いの息の音と鼓動だけがいやに大きく聞こえ、見つめ合っている内に、それが一つに重なった。
言葉は無くとも、心が繋がっている。だから俺は、これから先あえて何も言わない事にした。
薄く紅が差した頬が、控えめに緩む。来て欲しい、と言っているのだろう。
だから俺は、半開きになっている艶やかな唇にキスをした。
最初は重ねただけだけど、すぐに舌を滑り込ませられるほど開かれた。舌を突き出せば、まるで俺を体内へ導くようフィネアの舌が絡んでくる。
甘い。ドロドロと舌に絡み、染み込み、さらにガムシロップよりも甘い。そのくせ、胸焼けを起こしそうにない自然な甘さが、舌の先から根元まで入念に塗り込まれていく。
もっと、欲しい。
そう思った矢先、フィネアの舌がより激しく動き出した。より先を、より奥を確かめるように深く、粘液の蛇は俺の口内に入り込む。今までが人の舌の動きと例えるならば、これは犬の舌の動きだろう。そんな気がした。
甘えるようなその可愛らしい仕草に俺は、より一層胸の高鳴りを感じた。
抱き締めたい。
両手をフィネアの背中に通し、身体を強く密着させた。胸を押し潰し、布団のようにのしかかり、さらに身近でフィネアを感じ始めたのだ。
鼻腔をくすぐる清潔感を覚える匂いが全身を包む。せっけんか、お菓子の匂いか、よく分からないが、心がとても安らいだ。
安堵に目を閉じ、僅かに開くと目が合う。
ふと左右から、滑らかな腕と柔らかな羽毛が俺の首元で重なった。僅かな面積しかない筈の羽毛が身体を温めていく。続いて腰の辺りに、柔らかな何かが巻き付いた。おそらくは、彼女の尻尾だろう。羽毛以上の面積で、厚過ぎない心地の良い感覚が広がっていく。
もっともっと、繋がりたい。
願うと同時に、下半身の滾りが限界を訴えてきた。おそらく見えない所で、フィネアの股に擦り付けるように硬く隆起したモノが先走り液を漏らしている事だろう。
だから俺は名残惜しくも片手を放し、華奢な身体に指を滑らせ、触れた秘所を優しく開いた。重ねた口元から嬌声が上がり、ますます興奮を促してくる。
フィネアからも動きがあり、片手が離れ、艶めかしく身体を指で舐めた後、肉の茎に指が絡められた。
挿れたい。気持ち良くなりたい。気持ち良くしたい。
既に浴場での行為にて用意済みだったのか、それとも抱き合って感じていたのか、裂け目の表面は溢れんばかりに愛液を流してふやけていた。
僅かに腰を浮かせる。俺が開いたフィネアの膣内に、フィネアが導く俺の肉棒がゆっくりと侵入していく。
鈴口が女陰に包まれた瞬間、全身を紫電が走り抜けた。剥き出しの神経を丁寧に、そして几帳面に一つ残らず舐めるような、暴力的とも言える快楽が脳を焼いた。人間が処理し切れる快感を明らかに凌駕した、人外の世界。
それを、インキュバスである俺は、余す所なく感じられる。そこで止まらず、むしろその上を心から激しく求めようとする。
肉の壺を押し進む内に、艶めかしい水音や、口端から漏れる甘い喘ぎ声が進む度に愛らしく発せられる。そして、俺の獣性を燃え上がらせる。
ゆっくりと、導かれるがままに腰を前に突出していき、ついに最奥まで辿り着いた。
お互いがそのタイミングで、性器に触れていた手を放す。そして、相手の腰元を抱く。
そこから俺達は、本能のままに乱れ始めた。
もっと乱れたい。もっと、乱れてほしい。
腰を引いては叩き付け、肉のヒダを掻き分けていく。愛液が絡み、より強い挿入を促す。
射精欲求がぐんぐんと込み上げてくる、というレベルの話ではない。フィネアとの交わりは、人外の精力を持っていてもなお最初から射精してしまいそうなくらい強いものである。
亀頭を、カリ首を、竿を刺激する肉膜は完全に別の生き物が何百、何千と住んでいるようで、そのどれもが異なる動きを以って射精を促す快感を与えてくるのだ。
突けば肉棒全体が激しく扱かれ、引き抜こうとすれば先端を重点的に舐める。こんな名器、十数回も抽挿出来る訳がない。
さらに、俺を迎えるフィネアは俺とのセックスを何十、やり過ぎてお互い意識が朦朧としている時もカウントすると百を超えているかもしれないくらい経験している。故に、俺が最も感じる場所を熟知しており、自らの意志で縦横無尽に膣内を蠢かせ、突き入れる度に違う角度から快楽を与えていく。
無音の空間に、肉のぶつかる音と水音、そしてお互いの荒い呼吸だけが響き渡る。
技術も何もない、獣同士のような交わり。
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