観光地開拓を楽しんだ俺を待っていたのは、地獄だった。
度重なる夜勤、続く休日出勤。
フィネアに会えないストレスをヒロイン凌辱エロゲにぶちまけた、ここは畜生の組織。
次回、『来週も仕事』。俺の飲む緑茶は、苦い……。
まあ、そんな感じでこの所一ヶ月近くフィネアに会っていなかった。
何度もメールや電話はしているのだが、それでもリアルで会って、らぶらぶちゅっちゅ出来ないと言うのは超大きい。どのくらい大きいかと言うと、そりゃあもうテラーサイズ。地球の存亡よりフィネアとのいちゃいちゃタイムの方が重要に決まってるだろ常識的に考えて。
しかし、そんな苦しみとは今日でオサラバ。何せ久方ぶりの外泊だ。それも、金曜月曜に代休を突っ込んで休み抜ける最高の仕様にした。もはや誰も俺を止める事は出来ない……!
いざ行かん、マイヨメイドハウスへ!
・・・・・・
ふぁ、あ……。昨日の夜勤は中々大変でした……。まさかゴミ収集係のベルゼブブさんが酔っぱらって暴走するとは思いもよりませんでした。
おや? 今日はやけに身体の調子がいいですね。
最近ご主人様にお会い出来なかった事もあって、あまり調子のよい方ではなかった筈ですが。
……ひょっとすると、ご主人様が今日明日辺り来て下さるのかもしれませんね。ほら、早速携帯電話に連絡が入っています。
思わずはしたなくもパタパタと尻尾を振ってしまいますが、生理現象生理現象。ご覧になられるご主人様もきっとニヤニヤなされるだけでしょう。
そうと決まれば用意しなければなりませんね。そろそろ寒くなってきましたし、熱すぎず、しかし温かい飲み物と甘いお菓子がいいでしょう。
他には、ご主人様の御洋服も整えて差し上げねば。あまりそれに関心を持っていないご主人様は、すぐお洋服の繊維をほつれさせてしまわれますし。
おっと、先に私自身の身体を清めましょう。ご主人様にお会いする以上、常に清潔でなければ。早速試供品として頂いたこの、堕落の果実成分配合ボディーソープで隅々まで綺麗にしてから、それから……。
・・・・・・
しかし何と言うか。
思いかえせば、フィネアと付き合い始めて一年くらいになるんだなぁ。もう随分長い事一緒にいるような感じがする。
こうして電車に揺られながら恋人の家に行く事なんて、出会う前は考えた事もなかったな。
現実逃避を繰り返し、二次元に理想を追い求め、現実から、自分から目を背け続けて来た俺。そんな俺に、人生をちゃんと前向いて頑張れるよう変われたきっかけをくれたのは、他ならぬフィネアだ。
あの日メイド喫茶に入って、個別席に座ってフィネアと出会わなかったらどうなっていたんだろうか。考えるだけでもゾッとする。
まあまあ。出会えて、こういう関係になれたんだからいいじゃないか、俺。フィネアが居るなら最強じゃないか。
『サポーロ、サポーロ。オリグチハ、ミギデース☆』
おっと、そろそろか。
さてと。休みはフィネアと何をしようか。
ゲーム? トーク? お昼寝? おやつタイム? そ、れ、と、も、
「がっ・た・い、かしら?」
うわぁぁぁぁぁぁっ!? びっくりしたぁぁぁぁぁぁっ!?
何時の間に後ろに居たんですか有澤社長! というか社長職なのに公共交通機関なんて貧乏臭いもの使わないでくださいよ!
「あら、ごめんなさい♪ あなたの顔がとっても魔物の夫だったもので、つい♪」
ぬぅ、動じねぇ……。やっぱ弱点属性だわ、この人。
ん? 社長の背後に褐色肌で切れ長の美人さん? 見るからに秘書っぽいが、これまた電車に乗るべきアトモスフィアな人物じゃねぇよなぁ。
「――社長。三号車に『適性』のある者を発見しました」
「りょ・う・か・い♪ それじゃ、お邪魔したわね♪」
アッハイ。
……適正? 何の事……?
ま、まあ、いいか……。
・・・・・・
私とした事がとんでもない失態を犯す所でした。
それは、ご飯。近頃いらっしゃってなかったので、食材の買い置きがなくなっていたのです。
もうあと何時間もしない内にご主人様が部屋にお上がりになられる以上、急がなければなりません。されど食材選びに手を抜いてもいけません。間違っても街中で売っている一般用食材をご主人様に食べさせるなどあってはいけません。ここは魔界から仕入れている業者を頼らねば。
「――ありゃ。文恵じゃないか」
「あーっ! お姉ちゃんなのじゃ!」
え? この、下から聞こえてくる声は、まさか美枝さんと、瑠璃ちゃん?
「久しぶりなのじゃー! 何だか物凄い長い間会ってなかった気がするんじゃ!」
「全くだね。まあ、あたし等は職場移動になってないから仕方ないんだけどさ」
お久しぶりです。お元気でしたか?
「まーね。今日はこっちに観光に
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