その日、俺は思い出した――。
「ご主人様! コレをお受け取りください!」
この世界は辛く、厳しい現実が積み重なっている事に……。
「この道具ならば、きっと……!」
ああ、やり遂げて見せるさ!
俺と君の、光り輝く未来の為に……!
「ご主人様……!」
うおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!
「気を付けてください、そこには……!」
まだだっ!
「全体をまんべんなく攻撃するんです!」
こいつもくれてやるっ!
「目標まで、あと半分!」
バンカー! 撃ち抜くっ!
「ご主人様!? その武装にはそのようなものは搭載されていません!」
どんな装甲だろうと、ただ、うち貫くのみ……!
「そこが最後です!」
これで、トドメだぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!
つ、疲れた……。このくらいの深さで大丈夫?
「はい。それだけ深ければ問題ないかと。お疲れ様でした」
なーに。現迷彩ベレーの俺は隠れる為の穴を何回も掘ってるからね。フィネアにはおいしいご飯を作ってもらうという大事なお仕事があるんだし、土仕事はあまりさせられないよ。
それにしてもさ、この道具――、つーかスコップ凄くね?
地面に突き刺したら土がだいたい一立方メートルのブロックになって、しかも勝手に纏まるとか。明らかにコレ魔界製品だよね?
「『サンドボックス・ショベル』ですね? コーポレーション内の工業系企業が、最近とあるゲームを見て思いついた製品との事です。あのトラックに乗せてありましたので、ご主人様の負担を少しでも、と」
いやー、ナイスパスだったよー。普通のスコップでやったら明日筋肉痛で、キミに騎乗位で楽にしてもらわないといけない所だった。
「ご、ご主人様っ!」
HAHAHA。これなら右腕が動かなくなるだけかな! 独り身時代だったら死活問題だった。
と。俺の身長三つ分ほど掘ったけど、どうやって出ようか。
「ご主人様? その場を動かないでくださいませ」
へ?
「『疾風よ、無より出でて我が愛しき君を救いたまえ』」
い、愛しき? 呪文にそういうの入れると、こ、こう、テレ――、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!? 下からゲームの巨大扇風機よろしく、スゴイ=ツヨイ風がっ!?
ぬわーっ! ゴールキーパーのようにふっとばされるーっ!
「――はい、もう大丈夫ですよ。驚かせて申し訳ありませんでした」
う、うん。→驚愕した。とっても→驚愕した。
でも絶叫マシーンのようで楽しかった! 今度またやって!
「ええ、喜んで。――では、落としますね」
そう言って、フィネアはカバンから手のひらサイズの、真っ黒い立方体を取り出し穴へ投げ込んだ。
フィネア―。アレが『発芽』するのっていつごろ?
「そうですね……。基本的に一定以上の魔力を受けなければ発芽しませんので、ここのリゾート化が終わってから二、三年は掛かるのではないでしょうか」
むう……。俺の知ってるジャパーンがどんどんドリームランドに近付いている気がする……。
「ふふっ、楽しい事が増えますね♪」
全くだねー。それじゃ埋めるよー。
……しかしまあ、社長も随分とトンデモな布石を打つものだ。
『魔界の種』なんてヤバげな物、絶対一般人からすれば侵略だよ。
・・・・・・
遡る事前日。
釣った魚を美味しく夕食として頂いている最中、俺は突然現れたスクミズハンギョヨウジョに手渡された謎の立方体をフィネアに見せてみたのだ。
「それは、『魔界の種(デモニック・シード)』ですね」
どうやらコレは大地に埋め込むとその地の成分を魔力的に作り変え、魔物達が住みやすい土地『魔界』に作り変える為のものなのだそうだ。というか何だそのルビ。カッコいいな。
フィネアに聞くと同時に携帯に社長から『ヨ・ロ・シ・ク
#9829;』って来てたし、つまりはここをそうしろという事なんだろう。
まあ何と言うか、つまり。
ジャパーン侵略計画……!?
「間違ってはいないのでしょうが、そこまで悪意ある言い方では無いと思われますよ?」
まあいいんだけどねー。キミ達に奴隷のように扱われる人間とか、見ててニヤニヤしそうだし……! 見ろ、人がブタのようだ!
「もう、趣味が悪いですよ? 奴隷になど絶対ありえません」
あっはっは。分かってるよー。
・・・・・・
で。
公務員にも関わらず自国の侵略行為をみすみす見逃すばかりか幇助までした俺は、あんだーざ真夏の太陽で、汗だくになっていた。フィネアから受け取ったフワッフワなタオルで身体をのうのうと拭いているのであった。
まあ、この国がみんな幸せになるならいいよね別に。
「ご主人様、お風呂を用意いたしました。お入りになられてはい
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