『ーー妹から『忙しいから運動会用の弁当作って来て!!!』って言われた』
えー、あの。お母様? 何の脈絡もなしにそんな事を言われても、どういう事かこの愚息には分かりませんですよ?
『で。面倒臭いからフィネアに作ってー、ってお願いしてくんない? 重箱とっくの昔に捨てちゃったし、作れないのよねー』
カーチャンカーチャン。最初に本音漏れてるって。
てか、妹? 叔母さんだよね。運動会? あー、もうそんなシーズンかー。小学校の頃、逆さてるてる坊主作ったり奇声上げながら雨乞いしてたなぁ。懐かしい。
つーかカーチャンよぅ。フィネアはお弁当屋さんじゃないんだぜ? 便利屋でもないんだぜ? 俺の彼女なんだぜ? そう易々と貸し出す訳には、
『あんたの彼女ならあたしの娘よ。面倒見るんだから、それくらい文句言わない。つーかあんた等、なんか初夜越したら節操なしになりそうなくらいあっついから、今の内に子供を見に行って人生設計考えなさいよ』
ほぁぁっ!?
『……何よ。何奇声上げてんの? 文句あんの?』
いえいえいえいえありませんですぞ!
……実際、節操なし、というあたりに反応したというね。だって、初夜迎える前からもう節操なしだし……。
『今週の日曜。◯◯小学校だから。んじゃ』
アッハイ。
えーっと、とりあえず、
『ーー構いませんよ? お弁当一つ作るなんて、キキーモラにとっては手間になりません。瞬きする間に出来ますとも』
おお、心強い。流石はフィネア。
でもゴメンねー。日曜日はデートする予定だったのに。
『いえ! 私はご主人様のお供が出来るなら、どんな所でも幸せです!』
俺もそうだわー。隣に君が居るなら国会議事堂すら遊園地だね!
それじゃあほどほどにお願いするよー。
『分かりました♪ ほどほどの完成度でお持ちします』
え、そういう意味で言ったんじゃないんだけど……。
『ふふっ♪ 私が全力で腕を振るう時は、あなた様のお口に入るものを作る時だけです♪ 私のご主人様が独り占めのお好きな、ちょっとワガママな方だと知っていますから♪』
……ぬぅ、ぐうの音も出ねぇ。
・・・・・・
熱い。暑い。あつい。あっつい!
ぐおおおおおおっ!!! あーつーいーぞーっ!!!
「良いお天気ですね、ご主人様。これなら無事に運動会が開催されるでしょう」
冷えた濡れタオルを受け取り額に巻きつつ、夏の太陽に叫ばざるを得ない。隣には、薄手の白ブラウスにヒラヒラと揺れる水色ロングスカートと、いつも通り自己主張の薄いフィネアが汗一つない顔で微笑んでくれている。
ところで、フィネアは暑くないの?
「ええ。従者たる者、この程度の暑さで根を上げませんっ。火山地方でいつもの服装のまま奉仕の修練を行った事だってあるんですよ?」
すげぇ。メイドってすげぇ。あの服絶対ムレると思ってたのに。
しかし、何と言うか……。
「どうなされましたか? 私の顔に、何か?」
いや、いつも通り可愛いんだけどさ。
ねえ、フィネア?
「はい」
今、俺が見てるフィネアの外見と、そこらへんの有象無象が見てるフィネアの姿って、確か違うんだよね?
「え? ええ。幻覚魔法を使って、目立たない女性の姿を『被って』いますので」
じゃあ、今ここで魔物の姿になってもその幻覚って続くの?
「はい。支障はありませんよ?」
……フィネアー。お願いがあるんだけど。
俺と居る間、ずっと魔物の本性出しっぱなしにしてくんない?
「……へ?」
俺さ、そのままでも可愛いとは思ってるけど、やっぱり本当の格好してるフィネアが一番好きなんだよ。一番いい装備なんだよ。モフモフイヤーに、フサフサ尻尾、モサモサアームにトリトリレッグを、いっつも見てたいんだよー。
「え、ええと……。わ、私としては大変嬉しいのですが、そ、その……。もし万が一、お母様方に見られたら……」
んー、幻覚にパターンを設けられない?
フィネアを知らない人間には地味子が映って、フィネアが人間だと思ってる人には魔物的特徴のないフィネアが映るような、そんな感じのさー。
「……」
あ、無理? いや、無理なら我慢するんだけど……。
「ーー出来ました」
ひょ?
うわっ!? 生えた! 何か私服でその状態なのすげぇ新鮮っ!
周りは……、よし! 誰もこっち見てない! いいねぇ、やっぱり君はこうでなきゃ!
「ありがとうございます♪ 流石はご主人様、人
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