ホワイトデー。
それは、独り身には関係のない、誰が決めたかも知れぬ謎の祭典である。
バレンタインデーが聖ヴァレンティヌスに感謝する恋人達の日だというのは、まあ、理解出来る。それが何で恋人や旦那さんにチョコレートを渡す日になったのかは皆目検討も付かないが、それは今はどうでもいい。どうせ製菓メーカーの陰謀とかそういうノリの何かだろうし。
本音を言うともっと語りたいのだが。義理チョコの存在意義とか、友チョコとかよく分からん事になってる現代のバレンタインとかについて、たぶん小一時間では話し切れない不満というか疑問というか、その辺の事があるんだが。
ちなみに俺は、バレンタインに恋人であるフィネアから甘さ控えめなチョコシフォンケーキ(魔界風)を頂いた後、テンションが愉快になって彼女と共に『ゴディバ夫人ごっこ』とかいう、後から考えるとまるで訳の分からない事をやった後目茶苦茶セックスしたのだが、まあそれはそれだ。フィネアを三角木馬(魔界風)に乗せるのはあれはあれで楽しかった。またやろう。
で、話をホワイトデーに戻そう。先に要点だけ話すが、これは一体何なんだろうか?
何で『バレンタイン』の反対が『ホワイト』なのか、とか、マシュマロとかクッキーとかキャンディとか、渡す物で意味が変わるとか、3倍返しの発端は何処のどいつだとか、他にもツッコミたい所は山ほどある。しかし、どうしてもこれについて考える必要があると、俺は思う。
世間一般ではバレンタインで恋人から貰った分のお返しの日として扱われているが、そもそも何故一ヶ月後なのか。貰ったらすぐさま返すべきだろう、普通。遅くても3日以内じゃないだろうか。こんな遅くに返す意味はあるのだろうか。魔物と恋仲になった今では最早理解に苦しむが、人間同士のカップルでは些細な事がきっかけで三年付き合った間柄が喧嘩開始から30秒で破局を迎えると聞いた。つまり、恋仲は何が起こるか分からないのだ。
『ゴメン、本当はホワイトデーまで取っておきたかったんだけどさ、お前への感謝の気持ちが、クリープ現象みたいに止まんなくてさ……』
くらいの事を言って渡せば、相手もきっとそんな事故を笑って許すだけでなく、喜んでくれる事間違いない。ホワイトデーにまた改めて別の贈り物をすればきっと高等裁判所に控訴されるほどの事故として喜ばれるだろう。
以上の事を踏まえて、俺の考察としてホワイトデーは『恋の締め切り』、という結論を出した。みんなもちゃんとこの日までに感謝の気持ちを正面衝突させよう。寸前でイナーシャルキャンセラー全開にされて回避され、電柱に玉砕しても気にするな。
で、俺自身フィネアにどんなお返しをするかというと、だ。
・・・・・・
「ようこそいらっしゃいました。さ、おあがりください」
はいはーい。今日も明日までお邪魔しちゃうよー。
お、玄関前の芳香剤変えた? 前の、テンションやたら上がる甘々な香りから、さわやかーな落ち着く香りになってるけど。
「はい、『玄関開けて即ハメルティ! なラヴい香り』から『もうアソコは準備出来ていまストイック! なラヴい香り』という新商品の試供品をいただきましたので。如何ですか?」
うむ、これはこれで。つーか商品名長すぎね? 最近のライトノベルクラスじゃないか。
まあいいや。フィネアー、お願いしてたもの、持ってきてくれた?
「滞りなく。ですが、『アレ』をどうなされるおつもりですか?」
まあ、それは後でのお楽しみ。先に遊ぼうよー。
この前デートでやった格闘ゲーム、挑戦したい、って言ってたから、わざわざ仕事帰りにゲーセン行って仕上げてきたんだからさー。
「今日こそ負けません……! それでは上着をお預かりします」
はいはーい。
・・・・・・
さて、そろそろ昼食だ。
あんまりにも強くなり過ぎてたフィネアに負け続けてちょっと泣きたくなったけど、気分を入れ替えねば。
フィネアー。アレ持っ、
「どうぞ、お願いされていたネバリタケのドリンクでございます」
……まだ最後まで言ってないのに。
「そろそろかな、と思いまして。それで、それをどのようにお使いになられるのですか?……いえ、それ以前に、『ネバリタケ』の存在をどうしてお知りだったのですか?」
えーとね? 勘。
「か、勘、でございますか」
そう。勘。
こっちの世界になめことかいう、それはそれはもうヌメヌメしてヒワーイなフォルムをしている菌糸類があるんだから、エロいという思想が概念レベルで浸透している魔界にはきっとそれ以上のヤバいものがあるんじゃないか、って
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