『おはよー』
「まただよ」
『あいさつはちゃんと返さないと、はい、おはよー』
「はいはいおはよーございます、学校行くぞ」
『お外出たくない』
「二階の窓から吊るされてる奴が言う事じゃない」
『お日様の光に当たると元気出るんだもん』
「アウトドアな引きこもりだなあ、中蒸し暑くならないの?」
『なるよ、だから今全裸』
「服着ろ」
『ほら、ちゃんと着てないでしょ。寝る時はシャネルの5番派だから』
「どろっどろの消化液を香水呼ばわりするな」
『だから服も溶けちゃうんだ、てへっ』
「葉っぱ一枚あればいいから」
『どっち隠すの? 胸、股間?』
「怒るか恥じらうところだぞ?」
『今更恥じらいも何もないでしょ』
「俺が恥ずかしいんだよ、周りの視線が生暖かくて居たたまれない」
『パンツ取ってくれたら着てあげてもいいよ?』
「人の話聞いてたか? そういうプレイか?」
§
「ほら制服(耐溶性)入れるぞ」
『お外出たくない』
「憂鬱なのは分かるけど出席日数足りなくなるぞ」
『私を元気づけてくれたら着てあげる』
「具体的に」
『お姫様抱っこで連れてって』
「重さ的に無理」
『女の子は砂糖菓子で出来てるんだよ、ふわふわしてるから大丈夫いけるって』
「スパイスの量が重すぎてトントンだな」
『消化液はそこまで刺激的じゃないよ』
「無味無臭無刺激に遅効性で服だけ溶かすのはトラップだと思う、人間頑張ればケンタウロスからも逃げ切れるのは知りたくなかったけど」
『刺激的だったでしょ』
「お前さっき自分が何言ったか覚えてる?」
『女の子は砂糖菓子で』
「引きこもりスタイルで自称女の子はあまりにおこがましい」
『女の子だもん! おーんーなーのーこーだーもーんー!』
「5×kgが暴れるな!」
『何で太ったの知ってるのさー! あほー! デリカシーなしー!』
「自爆してんじゃねーよばーか! ばーか!!」
§
『わたし恥ずかしがり屋だもん』
「知ってる」
『すぐ顔が真っ赤になっちゃうもん』
「そうだな」
『それをみんなにからかわれたくないもん』
「(手遅れだぞ)そりゃな」
『だからこうやって工夫してるのにみんな笑うんだもん、ひどいやい』
「足首残してウツボカズラ被ってりゃそりゃそうよ、前見えてんの?」
『繋いだこの手を離さないで』
「掴んでんのは蔦だぞ」
『段差があったら肩とんとんしてね』
「肩見えねえって」
『あいたっ!』
「言わんこっちゃない、ほらこっちおいで」
『ふーっ! がるるる、ふーっ!!』
「街路樹に威嚇する犬は初めて見るなあ」
『わたしのたーくんに色目使ってんじゃねー!』
「まさかのドリアードさん?」
『になられたら困るから威嚇してる、がるるる、ばうばうっ!』
「吠えるな唸るな蔦でぺちぺち叩くな」
『そんなことしなくてもずっと一緒に居るよくらい言ってほしい(ぷくー』
「どんな肺活量すればそんな膨らむんだ葉っぱ」
『りぴーと、あふたー、みー! さん、はい!』
「そんなことしなくても(放っておいたら何するか分からんから付かず離れずの距離をとった上で)ずっと一緒に居るよ」
『言質はとったのでそれじゃあさっそく実践してもらいましょう』
「は?」
§
──はい出席とるぞー……何被ってんだお前ら。
『わたしを被せてます』
「被せられてます、たすけて」
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