「旦那さまぁ、肩こってませんか?」
お仕事でかたかたキーボードを叩いていたら、白蛇さんから声をかけられた。椅子に座ったこちらの肩を、ぽんぽん叩いて存在をアピール。
「旦那さまぁ、肩こってますよね?」
細い指が肩甲骨をすりすり撫でまわす。さわりさわりとなぞられて、くすぐったさと恥ずかしさ。
「だんなさまぁ、聞いてらっしゃいますぅ?」
ついにはお胸を押し付けて、さすりさすりと擦られて。頭の中に煩悩が、もやもやもやと湧き上がる。
「だんなさまぁ、無視しないでくださいよぅ?」
ごろごろ喉を鳴らしそうな、蛇なのに猫みたいな甘ったるい声。仕事にならないと言い訳してから、しぶしぶ後ろに向き直る。
「やぁっとこっちを向いてくれました
#9825;」
にこにこ悪気のない笑みを向けている。尾っぽがぱたぱた嬉しそうに揺れている。
「お仕事も大事ですけど、せぇっかくお家にいるんですから、私も構ってほしいですぅ
#9825;」
わんこかにゃんこかどっちで構うべきか分からないので、とりあえず顎の下をくしくし撫でる。くるくる喉を鳴らしたので、どうやらこれでよかったらしい。
「さあさ、お仕事なんて放っておいて、もっとも〜っと構ってくださいな
#9825;」
しょうがないので席を立ち、彼女の手を引きすたすた歩く。お仕事部屋に用はなく、ごろごろするなら居間でいい。
「もうすぐお昼ですからね、それまで時間をくださいな
#9825;」
さんさん日差しの当たる窓辺で、ごろんとお先に転がり込む。それ見た彼女も見習って、両手を広げてにこにこダイヴ。
「ばったーん
#9825;」
はいはいばったん、ばったーん。おっきな子供をしっかりキャッチして、ころころ左右に転がりじゃれる。
「なぁんにも考えなくていいのは楽しいですね、旦那さま
#9825;」
そうだねぇ、とうんうん相槌を返す。お仕事から解放されたおかげで、転がっているのにふわふわ浮かんでいるような心持ち。
「ずーっとお仕事とにらめっこしていると、肩ひじ張っちゃいますからね」
それに、わたしとイチャイチャだってしてくれないんだから、人に跨りぷりぷり怒るその様に。可笑しくなってくすくす笑う。
「そうですそう。私にとって、笑ってる旦那さまが一番なんですから。ほら、もっとリラックスしちゃいましょう
#9825;」
ぽかぽか陽気に照らされて。ぽわぽわ笑いながらそう言って。
「さあさ、旦那さまもにゅいーんってしましょう、肩こりにいいんですよ
#9825;」
雌豹のポーズで背筋をのびのびしながら、訳分からんこと宣った。いやいやだってそのポーズ。
「私が手とり足とり教えて差し上げますからね、旦那さま
#9825;」
誘ってますか誘ってますよねと内心こっそり思いながら。体のこりをすっかりしっかりほぐされたのでしたとさ。
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