竜翼通り。
ドラゴニア皇国の顔ともいえるこの大通りでは、観光客や旅の商人、地元の竜族などが行き交っていた。ある者は伴侶と共に食事を楽しみ、またある者は店先に並べられた装飾品を眺めている。通りの所々には赤いマントを羽織った騎士が控えており、辺りを見回っているようだ。
――そんないつもとなんら変わりのない日常は、一組の夫婦により壊されることとなる。
「こら、人前なんだから離れなさい」
「やぁん
#9825;」
大通りの真ん中で、一人のドラゴンゾンビが背後から男に抱き着いていた。だらしなく緩んだ体を摺り寄せながら、決して離すまいと両の腕で男をしっかり押さえつけている。男は抵抗しようとするものの、竜の力に抗うことはできないようだった。
「だめだって、ここじゃいくらなんでもまずいって」
「やぁだ
#9825;ここがいいの
#9825;」
男は振りほどこうともがくものの、ドラゴンゾンビの体は離れることはなかった。逆に男が抵抗したことで彼女の嗜虐心に火がついたのか、ドラゴンゾンビはますます男の体へとその身をこすり付ける。
周囲の人や魔物娘はその光景をじっと、或いは横目で窺っている。しかし、彼らの中には夫婦のいちゃつきを止めようとする者は誰もいなかった。
「うお……こんな通りの真ん中で……」
「ねえ、ちょっとあれ見てよ……
#9825;」
彼らの視線を受けてドラゴンゾンビの動きはますます激しくなる。彼女は男の耳元に口を近づけ、ふぅと息を吐いた。男の体が急な刺激に震えたのを見るとにんまりと口を歪める。
「ねぇ、気持ちいいでしょ
#9825;」
男の返事を待つことなくドラゴンゾンビは耳へとその口をのばす。そして大きく口を開けると
「は〜むっ
#9825;」
男の耳を包み込んだ。
「あむ、んむ
#9825;……んっ、くちゅ、ちゅぱ……
#9825;」
耳を舐め、吸い、甘く食む。耳を愛撫するドラゴンゾンビの口からは、悩まし気な吐息と粘液が滴る音が漏れだしている。彼女は時折耳から口を離すと、桃色の吐息を吹きかけて男の反応を愉しむ。
動いているのは口ばかりでなかった。
ドラゴンゾンビは体を動かすと、己の胸を男の背に擦り付けるようにした。豊満なだらしない乳房がぐにぐにと形を変える。
ドラゴンゾンビが胸での奉仕を繰り返すうちに、次第に彼女の肌に珠のような汗が浮かんできた。汗は肌を伝い、鱗を通ってポタポタと地面に落ちる。汗が通ったところはどこか妖しげな光沢を放ち、地に落ちたそれはすぐに霧へと姿を変えていった。
「……っと、えいっ
#9825;」
ドラゴンゾンビは男を抱いている腕を動かし、男の衣服を裂く。そして男の肌に赤黒い爪を立てると、ゆっくりと傷をつける。己の所有物であることを示すかのように、痕をつけるように線を引いた。
「くっ……うあぁっ」
男が呻き声を上げる。男の肌に刻まれた赤い線は、まるで体の中に溶けるように消えてしまった。竜がつけている魔界銀製の爪は男から魔力と抵抗する心を奪い、代わりに快楽とそれを欲する思いを流し込むのだった。
「れろ……あみゅ、ちゅぷ……じゅるるるるっ
#9825;」
初めは抵抗していた男だったが、耳を貪られる度に、吐息を吹きかけられる度に、体を嬲られる度にその抵抗も弱まっていく。やがて観念したのか、ドラゴンゾンビのもたらす快楽にその身を委ね始めるのだった。
そんな夫婦のやりとりを見守るかのように竜翼通りはいつの間にか静まり返っていた。喧噪はすっかり収まり、夫婦のやりとりの音だけが辺りに響き渡っていた。
――滴り落ちる汗と竜が吐き出す桃色の吐息で、辺りに妖しい霧が漂い始めた。
「おい!」
二人のやりとりを見ていたドラゴンが大声を上げる。それは通りの真ん中で交わっている二人にではなく、目の前で共に食事を楽しんでいた自分の夫に向けてだった。
「お、お前はあれを見てだな、何とも思わないのか!?」
首を傾げる夫に対し、ドラゴンは怒ったように声を張り上げる。
「き、気が利かないやつだな! 仕方ない、大人しくしていろ!」
そう言うが早いか、ドラゴンはテーブルへと身を乗り出した。
「馬鹿者め……竜たる者、どんな時でも誇りを持たねばならぬのだ! それでだな……」
「それで?」
夫が言葉端を繰り返してその先を促すと、ドラゴンは顔を真っ赤にして叫んだ。
「あいつのように自分から求めるなどというはしたないことはしないのだ!! だ、だから……」
「だから?」
夫はドラゴンの意図が分かったのか意地悪く笑みを見せた。
自分の主の態度に業を煮やしたのか、ドラゴンは俯いて体をふるふると震わせる。そして、
「お、お前が察してだな……その、えっと…
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