僕の妻との馴れ初め話

「ねえねえ、お父さんとお母さんの“馴れ初め”ってどんなのだったの?」

僕たちの娘がある日突然聞いてきた

「なんだ、もう恋愛に興味が出てきたのか」

娘は今年で10歳になる
他の家の娘たちと比べて早いのか遅いのかは僕にはわからないけど、
人間でも初恋はそんなんだろう

「ち、違うよ!別に恋愛なんてまだ・・・」
「隠さなくてもいいよ、別に悪いことじゃない」

違うもん、違うもんとつぶやく娘を見て確信する
これは好きな男ができたな、と
別に僕個人としてはこの子が好きになった男なら基本的には認めるつもりだ
二人がちゃんと愛し合っていればそれでいい

・・・でも必要最低限のマナーとかはちゃんと見る
挨拶のときに全てが適当な男だったら絶対認めない

「そうだな、僕たちの“馴れ初め”ってやつはね・・・・」

そして僕は語る
妻との出会いを






僕こと南城水無樹(なんじょうみなき)が妻のアリーと出会ったのは高校二年生の時
魔物と人間が共学である我が校の文化祭が終わってからだ

「ね〜え〜、歌ってよ〜、お〜ね〜が〜い〜」
「しつこいね、君も」

僕は一人の女の子に付きまとわれていた
この付きまとっていた女の子が僕の妻だ

「いーじゃん〜、一回ぐらいさ〜」
「人前で歌うほど上手くない」
「あ、それは私が上手いって保証するから大丈夫!」
「・・・・・でもダメ、諦めて」
「いや、諦めない。諦めないよ私は!」
「・・・・・」

僕が何故彼女に付きまとわれてるかというと、先日の文化祭が原因だ

「あんなに心にビビンとくる歌は久しぶりに聴いたよ!」
「そーですかい、それは光栄ですよ」
「なら歌って!」
「嫌だ」

僕は先日の文化祭の閉会セレモニーの時に中学時代の友人と演奏をした
(開会と閉会の時に事前応募による発表会みたいなのがある)
友人に勝手に応募され、オーディションに合格してしまった

中学時代は軽音楽部だったのでその経験を生かした
ちなみに当時はバトミントン部だったけど

それの時の演奏を聴いて彼女はもう一度聴きたいとせがむようになった
なんでも歌を得意とする種族であるセイレーンの彼女にすばらしい演奏と言われるほどよかったらしい

「ぶ〜、なんでこうも歌ってくんないの?」
「人前で歌うのが恥ずかしい」
「文化祭では歌ったじゃん」
「緊張のしすぎで逆に落ち着いた」
「・・・・・う〜た〜え〜!」

なんでこんなにも僕の歌に固執するのだろうか
セイレーンの彼女に興味を持たれるほどの演奏だったとはあまり思えない

「じゃあさ、なんで開会じゃなくて閉会の時に歌ったの?」
「開会で盛り上がりたい時にバラード演奏するバカがどこにいるんだい?」
「それもそっか。じゃあここは夕日をバックに演奏を・・・」
「しないから」
「ぶ〜ぶ〜」
「・・・はあ・・・」

彼女とクラスが同じなので、隙があればせがまれる
クラスの友人には「おあついねぇ〜」とか言われるが、彼女と恋人関係になった覚えはない
てか会話らしい会話も今まで大してしてないし



昼休み
彼女が猛攻を仕掛けてくる時間でもある

文化祭の前までは友人と昼ご飯を食べていたが、その友人たちは文化祭の時にそれぞれ彼女ができたらしく、毎日学校の陰でよろしくヤッているのだろう
・・・・羨ましくなんてないよ

「さあさあミナキ君!歌いたまえ!」
「・・・・・」
「ほらほら〜歌っちゃいなよ〜」
「・・・・・」
「・・・本なんか読むなー!」

取り上げられてしまう
だが甘い。別の本がある

「スペアだとっ!?」

こんなやり取りが習慣になってしまっていた
後に知ったことだが、このやり取りが“夫婦漫才”と名づけられていたらしい

「そういえばさ〜、バラード以外にはどんな曲歌うの?」
「・・・バラード以外はあまり歌わない」
「ドラマの主題歌とかアニソンとかは?」
「ほんの少し嗜む程度」
「・・・よく中学で軽音やれたね〜?」

そう、そこだ
僕が高校で軽音楽部に入らなかったのはそれが理由だ
バラードを好む学生はとても希少で、実際中学で僕以外にバラードを好む人はいなかった
高校でも同じだろうと、あえて入らなかった

「まあそのバラードがよかったんだけどね!さあそうとなったら」
「歌わないよ」


こんなやり取りが2週間続いたが、結局日に日にアピ−ルの激しさが増していき、僕のほうが折れた

「もう、わかったわかった。歌う、歌ってあげるよ」
「本当!?」
「本当だからとりあえず腕を離して・・・」

廊下で腕に胸を押し付けながら抱きついてくるとかどんな羞恥プレイだ

「じゃあいつ!?いつ歌ってくれるの!?」
「今日以外ならアリーさんの都合のいい日でいいよ」
「じゃあ明日でいい?明日ならバトミントン部休みでしょ?」

確かに明日は部
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