「……その、さ。はじめようぜ」
「う、うん」
ベッドの上で、二人向かい合う。
月明かりの下でも分かるくらい、あいつの顔は真っ赤だった。
いつもそうだ、こうやって向かい合うとなんと言うか、恥ずかしくなってしまう。
なし崩しじゃなくて、自分がどんな事をするのか、実感してしまうからだろうか。
そうして、居るうちに。俺の中の「私」が、完全な淫魔となった心がむくむくと大きくなっていく。
「ーーっ、ふう、あっ……」
衝動的に、あいつの唇にキスをする。
突然の奇襲に怯えるあいつの唇をこじ開けるように舌をぬるりと差し込み、口内を蹂躙していく。
縮こまったあいつの舌に絡ませるようになぞり、吸い上げると、あいつの唾液がぬるりと咽喉の奥に零れ落ちていく。
「あっ、はぁ……ふっ」
甘い。
味覚がそう感じるわけじゃない。けど、たらりと食道を落ちていくそれが、ぞくぞくする甘い快感を内臓の中に残していく。
夢中になってすすり上げるとあいつの匂いに包まれて、幸せな気分になる。
歯列をなぞるように舐め上げ、舌同士を絡ませるたびに、それだけでイってしまいそうなほどの快楽。
いつの間にか強く抱きしめられていて。気持ちよさが倍増する。
攻めているはずが、いつの間にか攻められていて。
舐め上げられる快楽に、嬌声が漏れて止まらなくなる。触らなくても分かるくらい、あそこが濡れて、染みを作っているのがわかる。
快楽から逃げるように私も強く抱きしめ返すと、もっと気持ちよくなって、キスだけで何度も、何度も達してしまう。
本当に、キスが上手い。
演劇の中で、色々なヒロインとキスをしてきたからだろうか。
そう、他の女とキスをした。彼はキスNGの役者ではないから。そんなことは当たり前の事。
私も他の演劇でキスをした事だってある。
舞台の上では、どんな人間とだって恋仲になれる。
私が女になったとき、この人と同じ舞台を目指したのは、きっとそんな理由。
けれど、今はそれだけじゃ足りない。
舞台の上でも、舞台の外でも−−この唇を独占するのは、私で居たい。
そんな、黒い思いを絡めるように、私は彼の唇を貪り返していた。
「……ぷはっ」
「はぁ、はぁ……はぁっ」
長い、長いキスが終わると、唾液で出来た銀色の橋がきらりと月明かりの舌に光る。
落ちていく唾液がもったいなくて、私は無意識のうちにぺろりと口の周りを舐め上げていた。
……足りない。
唾液も、美味しいけれど。
もっと、直接的で、美味しいモノが欲しい。
しゅるり、というシーツの音とともに、彼を押し倒す。
「−−ふふ、美味しそう」
視線の下には、彼の男根がぴくぴくと動いていた。
以前に比べて大きくなったそれは、透明な先走りを垂らし、今か今かと刺激を待ちわびているかのようで。
私は思わず舌を延ばして、赤い先端を舐め上げていた。
くちゅ、ぐちゅぐちゃ……。
エラの隙間を、尿道の先端を。全体を嬲るように、根元の毛をなぞるように。時には玉を優しく愛撫しつつ。胸まで使って。
口全体を使って、愛撫する。
味蕾に伝わるのは苦味、塩気、そして雄臭さ。
男だった頃は、絶対にイヤだと思っていたけれど、今の私にとっては愛おしさしかない。
まるでご馳走を前にした子供のように、ただ一心不乱にそれを舐めしゃぶる。
「う、うわっ……あっ」
「ふふっ、出たっ♪」
限界が訪れるのは。早かった。
数回ぴくりと痙攣したと思うと吐き出されるのは、沢山の白濁。
そのどろりとした粘度の高い液体をのどの奥で受け止め、こくん、と飲み干す。
たったそれだけなのに胃の中が、強い酒をのんだ見たいにかぁっと熱くなる。
昔、精液には媚薬の効果があるって聞いたことがあるけれど、ホントなんじゃないかって、今なら信じられる。
「ご馳走様っ」
「っ、どう、いたし、まし、て……」
ばさり、と翼を広げながら笑みを浮かべる。
以前よりもずっと翼が艶やかなのは、きっと良質な栄養を与えられたからなのだろう。
人間から離れた身が−−何故か、愛おしかった。
「でも、今度は……こっちで、食べたいな」
くちゅり、小さな水音とともに、自分の秘所を開く。
一本の毛すら生えていないそこは、一度も触れられていないにも関わらずどろどろで、今か今かと男の象徴を待ちわびていた
そして、本能に抗うこともせず、未だに萎えない彼のそれを自分のそれにあてがうと−−。
「「あ。あああっ……あっ!!」」
一気に奥まで導いていく。
ペース配分も何もない、自由落下に任せるがままの侵入。
貫かれる雌肉が摩擦に悲鳴をあげ、快楽が頭の中に弾ける。
二人分の叫びが、狭いアパートの中に響く。
「−−はいっ、たぁ
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