「……好き、だよ。ずっと前から、君の事が――」
二人分の台詞が、狭いアパートに流れる。
こくり、と俺とあいつの唾を飲み込む音がやけに大きく響いた。
「……」
俺も、あいつもそこから先を告げられないままで居た。
このシーンは、あの映画のラストシーン。
ここから先の台詞はない。
物語の終わりは、『めでたし、めでたし』で終わる。
けど、俺達が知りたいのは、ハッピーエンドのその先だった。
「「……なあ」」
殆ど同時に、声が出た。
「あ、お前が先でいいぞ」
「い、いや……別にキミが先でも」
「「……」」
何となく、気まずくなって。
さらに長い沈黙が流れて……
「……ふふっ」
「ははっ」
思わず、笑ってしまった。
あいつを見れば、同じように笑ってて。
久々にあいつの笑う顔が見られて、嬉しくなって。
「なあ」
「何だい?」
「……お前のこと。好きだ」
だから、もう一度、口に出した。
演技じゃない、自分の言葉。
きっと、今だけしか、こんなに自然に出てこない。「好き」という言葉は、たった二文字の癖にこんなにも重たい。演劇では、何でもいったはずなのに。掠れた、小さな声になった。
けど、1度出てしまったそれは、決壊したダムのように感情とともにあふれ出てくる。
「本当に。口に出してみて、ようやく分かったんだ。−−好きだ。大好きだ。……男に言われるのは、ちょっとイヤかもしれないけど。本当に好きだ。……好きで悪かったな、このヤロー!」
何度も、何度も壊れたテープレコーダーみたいに何度も繰り返して。最後には逆切れ気味に言ってしまった。
きっと今の俺の顔は林檎みたいに真っ赤なのだろう。
表情で嘘を付けない身体が恥ずかしくて。同時に心が伝えられたんじゃないかと、少しだけ嬉しかった。
「……オレも、好きだ」
そんな、ぐちゃぐちゃになった俺を、あいつは優しく抱きしめてくれた。
くしゃり、とあいつの大きな手が俺の頭を撫でる。
分厚い胸板から、とくん、という鼓動が聴こえてきた。
そんな、あいつに触れたせいか。俺の鼓動がバカみたいに鳴っているのが聞こえてくる。
同時に恥ずかしい思いが、じわじわと溢れてくる。
「−−あの、さ」
「どうしたの?」
「……俺……いや、『私』、もう、限界みたい……」
とん、とあいつの胸を押して。畳の上に押し付ける。
俺のアソコからは、下着の色を変えるくらいの愛液が滲んで、ぽたりと床に染みを作っていた。
「あの時の続き……しよ?」
自分でもありえないと思うほど、妖艶に笑んだ俺に。
あいつは戸惑ったように、頷いたのだった。
−−−−−
ぷちりぷちり、寝巻きのままのあいつのボタンを一つずつ丁寧に外す。
逞しい胸板が、呼吸に合わせて力強く動くのが見える。
演劇は体力勝負だ。
俺と一緒に、随分と走りこんだことを思い出す。
あいつが頑張っていたことを、俺は知っている。
「……んっ、ふっ……」
「お、おい、汚っ……」
衝動的に、舌を這わせる。
走ってきたせいか、汗の混じったしょっぱい味がした。
赤い舌が腹筋から胸を通り、首筋を撫でる。銀色の道が月明かりに照らされてきらきらと光った。
耳を軽く唇で挟むとぴくりとあいつの体が跳ねる。
「美味しい……」
そのまま、触れるか触れないかのところで乳首を撫でてやるとさらにあいつの顔から余裕が消えていく。
こうした男の扱いが、勝手に脳に浮かんでくる。
きっと−−俺はそういう魔物になったのだろう。そんな考えが奥の方に浮かんで消える。
本来の食料を口にしたためだろうかか、いつの間にか翼の傷は消えていた。
「っ、この……」
「……っ!?」
考え事にふけりかけた俺の体がいきなりびくりと反応した。
尻の付け根から襲い掛かる圧倒的な快感。
感じたこともないそれは、尻尾の方から伝わってきたもの。
見れば、あいつがぎゅっと俺の尻尾を握り締めていた。
「ひゃ、ひゃうぅっ」
「おっと」
へなへなと力が抜けて倒れこむ俺を、あいつの手ががっしりと捕まえる。
そして、そのまま俺の上にあいつが圧し掛かる。
あいつの顔は、見たこともないくらい嗜虐的で……それだけできゅうと身体の奥が疼く感覚がした。
「……ふふ、今度はオレの番だ」
「ちょ、ちょっと……!?」
こしょり、と尻尾の根元をなで上げられる。
そんな軽い刺激でびくりと軽く俺は絶頂してしまう。
「本当に、エロいな」
「っ、私の、せいじゃ……」
そんな俺に追い討ちをかけるように囁かれる。
一流の役者だけあって、こういう言葉を言わせると本当に凄くて。
俺の体がかあっと熱くなる。
思わず耳をふさごうとした手を掴まれて、逃げ場
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