第七話 『英雄の街』の片隅で

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……自分でも、陳腐な名前だと思った。

『ふぁいあーすとらいく』。

チカが言っていた言葉に『攻撃』を付け足しただけの、咄嗟につけた名前。

誰にでも考えつきそうなぐらい単純で、センスなんか欠片もない……だけど、私だけの名前。

叫んだ時、確かにあった高揚感。
いつもと何も変わらないのに、あの時の術は本当に強くなったような気がした。

初めてこの術を使った時の事を、思い出す。
この姿になってから、初めて練習した術。
魔力の制御も放出も、何度やっても上手くいかなくて。
ようやく炎が出せた時の……あの、嬉しさ。

何年も前のあの時の気持ちが、また蘇ったみたいで。

この名前を大事にしていきたい。
強く……そう、思った。



……そのせいで私は、浮かれていたんだと思う。
自分で手放したものの大切さを……忘れてしまっていたのだから。


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「……っつーわけで、今回の依頼はリラちゃんに盗まれたもん引き渡して無事終了、ってわけだ」

ギルドに帰ってきた俺達は、ブラウのオッサンにエリーの監査結果の報告を行っていた。
つってもまぁ、経過に問題なんぞなかったからな。
報告っつっても、やった事を一から十まで詳しく伝えたぐらいである。
偶に自分の失敗を客観的に聞かされたエリーが恥ずかしそうにしたりもしていたが、それはさておき。

「……マーチカ、何か補足はあるか?」
「ううん、概ね問題ありませんよ!!まぁ、強いて言うなら若干リッ君によるお嫁さん補正が入ったりしてましたけど!!」
「ホントに!?わぁい!!」
「んなもんあってたまるかぁぁぁぁ!!」

こんな時だろうと、チカちゃんは笑顔で爆弾を放り込んでくれる。
おかげさまで、周囲の冒険者の目がすっかりロリコンでも見るような目をしてやがる……この視線、いつかなくなるんだろうな?

「ほう……まぁ依頼人からの連絡もあったから、実際に依頼を無事こなした事は証明されてるしな。この依頼は監査人も含めて全員達成と見て、問題ないだろう」
「じゃあ……!!」
「あぁ、いいだろう。これで今日から嬢ちゃんも……冒険者の仲間入りだ」

その言葉の意味が、エリーの頭に届くには少々の時間がかかり。

「……やったぁ!!やったよ、お兄ちゃん!!」

手をいっぱいに上げて、全身全霊を込めてエリーは喜びの声をあげた。
真っ先に俺の方を向いて、純粋にキラキラした目を向けてくる。

……ったく。そんなにはしゃがれると、こっちまで嬉しくなってくるじゃねぇか。

「おめでとうレンちゃん。今日からは、一緒に働く仲間だね!!」
「うん、マーチカもありがとう!!これでエリーも、お兄ちゃんと一緒に冒険できるよ!!」
「俺が一緒にいるの前提かよ……」

この期に及んで図々しいなこの野郎は。
……そうだ、ちょうどいい機会だし聞いておくか。

「おいオッサン、冒険者用の寮って今空いてっか?こいつ、少なくとも今日も泊まる家ねぇからよ」

今日こそ依頼がさっさと片付いたらこのガキをいっぺんサバトへと帰そうと思ってたんだが、マユちゃんを見つけるのに手間取っちまったからな。
おかげで今はすっかり夜になって、帰そうにもできやしねぇ。

昨日みたいに、俺の家に泊めてやってもいいんだが……ただでさえロリコン扱いされてんのに、これ以上家から一緒に出るところとか見られたくねぇし。

だからこそ、冒険者なら格安で泊まれる寮の出番って訳だ。
そこならエリーの今日の報酬だけだろうと、一日ぐらいは余裕で泊まれる。
どこの誰だか知らんが、その建物作った奴に感謝するぜマジ……

……そんな風に軽く考えていたものだから、次のオッサンの言葉に反応が大幅に遅れた。



「……何言ってんだルベル?しばらくその嬢ちゃんには、お前んちに泊まってもらうことになるんだぞ?」
「……は?」



「ふんふふんふふーん♪ふふふふっふふーん♪」
「どうしてこうなった……」

夜の街を、足取りを重くして歩く俺。
その隣にいるのは、結局離れることがなかったガキが一人。
……溜息をつかずにはいられなかった。
このガキが一緒にいる理由は勿論、ブラウのオッサンのとんでもない言葉が原因である。

『おいおい、俺が許してやったのは冒険者になることまでだぞ?その子の正式な処分について、まだ決めてなかったろう。その結果を報告してやったまでだ』
『い、いや待て!!それでどうして、俺の家に泊めるって事になってんだ!?』
『正確には”最低一名による二十四時間の監視”だな。そのお嬢ちゃんもお前に懐いてるようだからな、俺からギルド長に推しといたんだよ。そしたら、あっさりオッケーもらえたぜ?』
『あんの無責任リーダーがぁぁぁぁぁ!!』

うちのギルドのギルド長はいつも、何かの都合でどこかへと出
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