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炎を避けたのは、あの人が初めてだった。
だから、私を睨んで怒鳴りつけるあの人の事が、ひたすら怖かった。
それから色々と作戦を実行したけれど、どう頑張ってもあの人に炎は当たらなくて、恐怖ばかりが増していって。
でも、あの人は最後、私の炎を避けなかった。
自分の身体を投げ出してまで、私の誤解を解いてくれた。
ルベルクス=リーク……あの人の名前。
私の全てを、変えてくれた人の名前。
……あれから私は、冒険者というものが何なのか、自分なりに調べてみた。
冒険者――――未開の地を旅し、道なき道を切り開き、街の人の助けになる、そんな人達。
それを知った時は、今更ながらに自分がとんでもない勘違いをしていたことに気付いて、頭が真っ白になったものだ。
……だからだったのだろうか。
全てを吹き飛ばすような、あの人の笑顔を思い出したのは。
知らなきゃいけないって、思った。
冒険者のことを、あの人のことを、もっともっと。
それが……私が傷つけた人達にできる、せめてもの贖罪だって、思うから。
けれど、あの人は私の話を聞いてくれるのだろうか。
他でもない、この手でその身を燃やした私の言うことを。
……それならば、せめてあの人が喜ぶことをするべきなのかしら。
でも、どうすれば喜んでくれるのだろう……男の人が、喜ぶ事……
……お嫁さん、とか?
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「アホか!!却下に決まってんだろうがそんなもん!!」
とりあえず昨日の事を思い出してみた結果、こういう結論に至る。
つうか……思い出してみても結局、こいつが何でこんなこと言い出したのか、何もわかんねぇよ!!
どうやったらあそこから「お兄ちゃんのお嫁さんになりにきたの♪」なんて台詞が飛び出すんだこいつの頭の中は!!
「え……なんで?お兄ちゃん、嬉しくないの?」
だが、こいつはそれを聞いても納得するどころか、首を傾げるだけ。
これだから、ガキの相手はめんどくせぇ……!!
「つい先日俺目がけて炎ぶっ飛ばしたばっかのガキに求婚されて喜ぶ奴がいんのか?あ?」
「あ、えっと……それは、ごめんなさい……」
睨みを利かせてやると、流石に反省しているらしく目を逸らしながらも謝罪の言葉を告げるガキこと、エリー。
つってもまぁ……それに関して言えば、本当はそれ程気にしちゃいねぇけどな。
被害者も意識不明ってだけで生きてはいるし、俺だってこの通り数日ですっかり元の調子に戻れてはいるのだ。
いつまでも根に持つほどの事じゃねぇ、とは思う。
「……んで?求婚しにきただけならもう帰れ」
「ち、違うよぉ!!エリーは、お兄ちゃんにお願いがあってきたの!!」
とはいえ、用事が無いなら好き好んでガキと絡みたいわけでもないので早々にお帰り願おうと思ったのだが、どうやらこいつの用事はそれだけではなかったらしい。
「お兄ちゃんに、教えて欲しいの!!『冒険者』さんの事!!」
「……はぁ?」
それで、わざわざ俺を頼ったっつーことか?理解できねぇこともねぇけど、他にやりようなんぞいくらでもあるだろ。
例えば……
「そんなら、俺に頼るよか先に本屋にでも行ったらどうだ?そっちの方が、よっぽど為になると思うぜ?」
「もう行って、本なら沢山買ったもん!!『冒険者』って言うのは、街の人の依頼を解決してギルドからお金を貰って生活する人でしょ!!」
このガキの言うことは、確かに冒険者の定義からすれば何も間違っていなかった。
本当に、勉強したのだろう。だが、俺にはそんなことは、今はどうでもいい。
「……そこの本はやっぱりてめぇかぁぁぁぁ!!」
そう言って俺が指差すのは、玄関の扉を開けた瞬間に目に入った物。
……俺の身長より少し低いぐらいの高さまで積み重なった、山積みの本。
『冒険者入門〜これで君も、明日から冒険者だ!!〜』『〜麗光〜伝説の冒険者の記録』『グランデム史伝〜冒険者ギルドができるまで〜』……どれもこれも、冒険者絡みの本である。
俺自身でそれらの本を買った覚えはねぇから、当然犯人はこいつしかいない訳だ。
「だってお兄ちゃんを玄関で待ってるの、退屈だったんだもん……」
「そもそも不法侵入だろうがてめぇはよぉ!!」
他人の家に無断侵入した挙げ句散らかすとかどんな神経してんだこいつは!?
「むぅ、せっかくお兄ちゃん喜ぶと思ってエリーずっと待ってたんだよ……?……って、あいたたたたた!!痛い痛い痛い!!」
「可愛く言えば許すとでも思ってんじゃねぇぞ、クソガキが!!」
むかついたので帽子越しに頭を掴んで、潰す勢いで握りしめてやった。
「それに、どっから入りやがったんだてめぇ!!」
「痛い痛い痛い!!ま、窓からだよぉ!!」
「窓ぉ?ふざけたこと言っ
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