人虎さんの全身をくまなくもふり隊!!

驚いて足が止まる、なんて物語の世界だけだと思っていた。
でも今、実際に僕の足は地面に縫い着いたかのように動かない。
それ程までに、目の前の景色は、到底信じられない目を疑うようなものだったのだから。

「んっ……く、ふっ……はぁっ……」

吐息に合わせて、くちゃりと湿った水音。
まるで僕に服従するかのように高々と突き出された尻。
赤らんだ顔と、ふさふさとした獣毛の生えた腕、足。

まさか、人虎のお姉さんが、森の中で裸になって一人自慰にふけってるところに出くわす……なんて。

偶々森に散歩にでかけただけで、まさかこんなものを見ることになるなんて思ってもなかった。

これが発情期というやつ……なのだろうか。

「はぁっ……はぁっ……む?」

しかし、いくら発情期といえども、武人である彼女達を相手にずっと立ちつくしたままだったというのはまずかったらしい。

しまった、と思った時には既に、ずっと地面に向けられていた彼女の視線が、僕の視線と交差していた。

「……人間だぁぁぁぁぁぁっ!!」

驚いた顔をしたのも一瞬。
恐ろしい形相で飛びかかってきて、僕は為す術もなく地面に押し倒されてしまった。

「はぁっ、はぁっ!!この際、何故人間がいるのかなどとはどうでもいい!!くれ!!私に、濃い精液をいっぱいぶちまけてくれぇ!!」

息を上がらせながら、淫らな言葉遣いで僕を求めてくる人虎のお姉さん。

正直言ってしまえば……とても、嬉しい。
発情期だろうがなんだろうが、女性に言い寄られて喜ばない、ましては受け入れない男などいるものか。

「ま、待って!!待ってください、お姉さん!!」

だけど、そのまま受け入れてしまいたくはない、という気持ちが僕の中にはあった。
当然、そんなものを聞いて納得してくれる程、発情期の人虎というものが甘い訳はない。

「いやだ!!ようやく、ようやく男が捕まえられたんだ!!もう逃がさん!!私と交尾するまで、絶対に離さないからな!!」
「そ、そうじゃないです!!僕もあなたとエッチがしたくない訳じゃないですし、むしろ大歓迎なぐらいです!!でも、ちょっと待ってください!!」
「……む?じゃあ、何だ?」

勢いに任せて恥ずかしいことも言ってしまった気がするが、お姉さんもそこまで言えばようやく話を聞くぐらいには落ち着いてくれたらしい。
最も、顔が真っ赤になっているのがまだ収まってないから、別に性欲が消えた訳じゃなさそうだけど。

「で、ですけど、あなたのお願いを聞く代わりに、僕のお願いも聞いて欲しいんです。それぐらいなら……いいですよね?」
「……なるほど。まぁ、私も交尾してくれるなら、文句は言わん。それで、何が望みなんだ?」

二つ返事で了承してくれた人虎さんに、内心でガッツポーズをする。

そして、僕は一つコホンと咳払いをして心を落ち着かせると、ずっと心の中に秘めていた夢を暴露した。



「あなたの全身に……触らせて欲しいんです!!」


あぁ……ついに言ってしまったな……

何を隠そう、僕は近所に住んでる稲荷さんとかワーウルフさんとか、そういったものしか愛せない、俗に言えば重度のケモナーだった。
我が家で飼ってる猫がいつかネコマタになったら思う存分堪能しようかと思ったけど……目の前に、猫以上かと思うぐらいの毛並みの生き物がいるのだ。

それに触らずして、何がケモナーか。

「ふ、ふむぅ……?つまり、前戯をしたいのか?そういう事なら……ほら」

僕の性癖までは流石に分からなかったみたいだけど、人虎さんは特に何の疑問も持たずに地面に寝そべって、手と足も投げ出した状態で仰向けになって、動物で言う服従のポーズみたいな格好になった。
起き上がって、その姿を見下ろしてみる。

しかし……改めてみると、本当に綺麗な人だよなぁ……

普段は凛々しい表情をしているのだろう顔は、今は早く行為をしてくれ、とせがむように期待に満ちた目で僕を見ている。
腕は外側が黄色と黒の縞模様で、内側は真っ白になっていた。
足の方も、模様は一緒だ。
そして、手にも足にもついているのが、長く尖った爪と、桃色をした肉球。

……これを、自由に触っていいんだよな?

ごくり、と喉がなる。
そして僕は、恐らく彼女の期待とは全く違う場所、肉球に視線を集中させて身体を寄せ……人差し指で、つんと触れた。

「ぁっ……!!」

……すごい。触ってみると、本当に肉球独特の感触がする。
柔らかいようでいて、形を全く崩さない固さを持つ、猫科独特のそれ。
それがそのまま、人間大の大きさになっているのには、ある種の感動さえ覚えた。

小さい頃は、家の猫の肉球を触ってはこれがもっと大きかったらいいのに、なんて思ってたっけ……

人差し指だけでは物足りず、今度は親指を使って触れてみる。

ぷに、
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