お日様が、たくさんの葉っぱの間からちょっとだけ見えた。
「あ痛たたた……」
すり傷や切り傷が手足にできているみたいで、ちくちくと痛んだ。がまんして立ち上がって、辺りを見回してみる。
「ここは…………」
まず目に入ったのが、たくさんの木。おれの身長の十倍はあるんじゃないかと思うほど高くて、深い緑色の葉っぱがよく茂った木があまりにたくさんあるもんだから、葉っぱがかげになって昼間だっていうのに奥の方はうす暗くてよく見えない。ふり向いて見ると、砂でできた高いがけがあった。
…………そうだ。
おれ、みんなとかくれんぼしてて、どこに行こうか考えながら走ってたら、ここから足をふみ外したんだ………。
こんな高いところから落ちたんだな、と思うとぞっとした。足下のいっぱいある木の葉のおかげかな、すり傷だけですんで、ラッキーだったな………
「あれ、そういえばなんか足が寒いような………………って、えぇ!?」
おれ、パンツもズボンも履いてない!?
なんでだよ!?落ちる前はちゃんとはいてたのに!!
…………落ちる前は?
あわてて近くにある木を見上げると、探しているものはすぐに見つかった。
上から強い力で押されたように折れた枝が縦に何本か並んでいるその木のてっぺんに近いところにある枝に、葉っぱにまぎれておれのパンツとズボンが引っかかっていた。
そっか、この木の枝が落ちるおれを受け止めてくれたんだな………って、そんなことどうでもいい!!取りに行かなくちゃ!!
ゴツゴツした木の幹に両手両足を回して、登ろうと力を込める。
「ふんっ…………っと、うわぁ!!」
けど、木登りなんてろくにやったことのないおれは、ちょっと登っただけで手が滑って地面にまた体をぶつける。
ろくに登ってないせいで痛みはそんなになかったけど、ちっともうれしくない。
それから何回も木に登ろうとしては滑るのをくり返したけど、五回やる前にはもうあきらめがついていた。
悔しくて木をにらみつけたり、叩いたりしてみる。もちろん、何も起きない。ちょっと幹が揺れて、数枚の葉が落ちてきたていどだ。
どうしよう……………今日、というよりいつものことだけど、おれ達が遊ぶやつの中には女の子もいるんだ。こんな格好、見られたら………………
「ねぇ君、なんでおしり出してるの?」
「うわぁ!?」
や、やばい!!女の子の声だ!!とりあえず、なにか言わないと!!
「お、おれだって好きでこんな格好してるわけじゃない!!って………おまえ、誰?」
振り向いた先にいたのは、おれと同じぐらいの年に見える女の子。
頭の上にちょこんとある小さな丸い耳、ふかふかしていそうな茶色い毛皮の生えた手足と、そこから伸びる黒い爪。熊と人が混ざったような見かけだ。
名前はたしか……………グリズリー、だったっけ。
いつも一緒に遊んでいるから魔物なんてめずらしくはないけど、おれ達が今いる場所は街からすぐの所にある山を、ちょっと道から外れたところだ。
遊んでいる時におれ達以外の人を見たことがなかったから、知らないやつに会うなんて思わなかった。
「ぼく?ぼくはリベア!!君の名前は?」
「お、おれはコウワだけど」
「ふーん。よろしくね、コウワ!!」
にっこりと、リベアがうれしそうに笑う。
……………可愛いな、なんてちょっとだけ思った。
「ところでコウワ、なんでさっきからずっとおしりだしてるの?」
「え?……あ」
不思議そうにおれの下半身を見るリベアにそう言われて、自分がズボンとパンツをはいてないことを思い出す。
……顔が熱くなるのとほぼ同時に、茂みの中に急いでかくれた。
「こ、これはえっと、ちがくて、こういうの好きとかじゃなくて、すずしいことはすずしいけど、いやそうじゃなくて、えと、そのぉ!!」
「あはっ、コウワって面白いねー」
「わ、笑うなぁ!!」
顔だけ出して、頭の中がぐるぐるして言いたいことが上手くまとまらないまましゃべったら、リベアにくすくすと笑われる。馬鹿にされてるみたいで、余計に顔が熱くなった。
「おれのパンツ今、あそこなの!!」
「えー?上?」
「そうだよ!!それで、木に登って取りにいこうとしたけど駄目で、おれ困ってんだ!!」
「あっ、あれかぁ。へー、なるほどねー」
指差して一気に説明したら、リベアはわかってくれたみたいだ。けど……………うぅ。口に出してみると、おれすごい格好悪い……………
「それじゃあ、コウワはあのパンツが欲しいの?」
「そうだけど………………この木、すっごく滑るし無理なんだよ…………」
「そうなの?うーんと…………これなら余裕かな?」
リベアは熊の手でしばらくペタペタと木の幹をさわった後、おれの方を向いて言った。
「ぼくに任せて!!パンツとズボン、すぐに持ってきてあげる!!」
「
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