リベアと遊ぶようになってから、一ヶ月経った。
その間には特別なことなんて何もなかった。川で水浴びをしながらリベアに魚を捕るところを見せてもらったり、かくれんぼ以来やってみたくなった木登りをリベアに教えてもらいながらみんなでチャレンジしてみたり。
リベアがいることはおれにとって当たり前になっていて、そんな特別じゃない、けど楽しい毎日はあっという間に過ぎていった。
今だって、ついさっきリベアと会ったばかりような気がしているのに、もう夕方。赤くなった空は、今日も一日の終わりをおれ達に知らせてくれていた。
「んー…今日はこの辺で終わり、かな」
ライバが空と時計を交互に見ながら、つぶやく。
誰も何も言わなかったけど、それはみんなもそう思ってるからで、さびしがっているからというわけじゃなかった。
最初の頃は終わりの時間がくる度にしずんでいたリベアも、最近はおれ達が毎日来ることを全く疑わないようになったのか、笑顔のままでいてくれるようになった。
ただ、今笑っているのはそれだけではないと思うけど。
「また明日な、リベア」
「うん!!バイバイ!!」
ライバが代表してあいさつして、おれ達はリベアと別れた。
リベアがおれ達の帰る時必ず使ってた「また明日」っていうあいさつを使わなかったことの意味に気づいたのは、おれだけだった。
「あーっ!!」
しばらく歩いたところで、急にさけびだしたおれに、みんながびっくりしながら目を向けてくる。
「ご、ごめん!!みんな、先に帰ってて!!」
「おい、どうしたんだよコウワ?」
「わすれ物しちゃったんだよ!!取りに行ってくるから、みんなは先に行って!!」
「なんだよ、そんなことか?いいよ、少しぐらいなら待っててやるよ」
やれやれ、と肩をすくめながらライバは優しく言ってくれるが、その優しさはおれにとってもどかしいだけだった。手をぶんぶんふって、いらないことを態度にして表す。
「ううん、別に今日はいいよ!!とにかく、みんなはもう早く帰れよー!!」
返事を待たないでみんなに背を向けて、おれは一気にリベアと別れたところへと走りだした。
「なんだあいつ。ま、あぁ言ってるしオレ達はもう帰ろうか……ん?何くすくす笑ってんだ、ロッサ?」
「べっつにー?早く町に帰ろ!!…………リベアちゃんのためにも、ね」
「ロッサぁ、わたしよく聞こえなかったんだけど最後何て言ったの?」
「何でもなーい♪」
「ふぅ……」
後ろから誰もついてきていないことをかくにんして、ほっとする。
わすれ物なんか、してなかった。そもそも、おれは山に遊びに行く時に何かを持ってきたことなんかないし。さっきはちょっと強引だったかもしれなかったかな……誰にもばれてないといいんだけど。
「おーい!!コウワー!!」
…ばれてるのかなぁ、とっくに。
遠くから、笑顔のリベアが大声で呼ぶ声が聞こえてきて、冷や汗をかきながらおれは走るスピードを上げた。
「よかったー!!コウワが」
「り、リベア!!お願いだから…静かに……」
自分でもおどろくスピードでリベアのそばまで一気に近づいて、息もたえだえにお願いすると、はしゃいでたリベアはハッとする。
「そっか、みんなにはないしょなんだよね。ごめんね」
「はぁ…多分みんな帰っただろうから、いいけど…ちょっと、きゅうけいさせて…」
言い終わるよりも先に、おれの体は草っ原にたおれこんでいた。
背中につぶされた地面の草が、なんだかくすぐったく感じる。
「ちょっとだよ?ちょっとだけ休んだらすぐ行こうね、コウワのお家!!」
「わかってる、よ……はぁ……」
楽しそうにはしゃぐリベアを横目に、おれはため息を一つ吐き出した。
今日、おれの家にリベアが泊まりに来る。そんな話が出たのは、昨日のことだった。
特にやりたいこともなかったのでみんなバラバラに遊んでいた時に、おれは一人でリベアに呼び出された。
「人間の生活が知りたい?」
「うん!!ぼく、君たちと会うまで人間はお父さんしか知らなかったし、お父さんの家には遊びに行ったことないから……人間ってどんなおうちに住んでるか、気になるんだ!!」
「でも、なんでおれなんだよ?ほら、エネシャとかロッサとかなら同じ魔物だし、そっちの方がいいと思うけど」
向こうの方で楽しそうにおいかけっこをしている二人を指さしたけど、リベアは首を横にふった。
「ううん。ぼく、コウワのおうちがいい」
「な、なんでおれ?」
ちょっとだけ、リベアがもしかしたらおれのこと好きなんじゃないかって期待しながら聞くと、何故かリベアはしまった、って顔をして言葉につまった。
「あ…そ、それは、えっと…そうだよ!!今日、コウワかけっこで一等賞だったでしょ?あれすごかったなぁって思って、だからだ
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