第十三楽句〜超常の輪舞曲〜

「おや、ようやくいらっしゃいましたか“黄泉の神殿”」
「敵情視察よ。芳しい情報はなかったけど、それで許してちょうだい」
「……ふむ、まぁいいでしょう」

教団のアリュート侵攻の地上部隊本拠地。
街から離れた場所に設営されたその中の少々外に作るのは豪奢すぎる部屋に、私は今回サポートをするはずの部隊の部隊長……司祭と顔合わせをしにきた。
当の司祭は、呑気に紅茶などすすっている。
私が集合に遅れたことに、司祭は口ではなんでもないようにしていたが、顔では難色をありありと出していた。

「で、あなたが今回私がサポートすればいい部隊の?」
「ええ、そうです。よろしくお願いしますよ」

話している間、司祭はまったく私と目を合わせようとしない。

「しかし、なぜあんな一犯罪者のために戦争を?」
「あなたもわかっているでしょう?そろそろアレに利用価値がなくなるからですよ」
「しかし、それなら戦争でなくても……」
「戦争をすることで、こちらの戦力の練度が上がるんですよ。幸い、向こうは親魔物領ですから、
滅ぼしてしまっても構わないですしね」

……やはり、というかなんというか、下種な……

「それでも、なぜあなたみたいな高い位の人がこんな場所に?」
「……そんなもの、あなたは知らなくてもいいのですよ。あなたは黙って私の指示を聞いてればいいのです」
「……了解」

服従するつもりなんて微塵もないが、とりあえずはそう答えておく。

「……作戦開始まであと十分です。足でまといにならないよう、時間まで休んでなさい」
「……了解」

嫌味ったらしい言い方だな、と心中で悪態をつきつつ、私はその場を後にし、外に出た。
外では、今回投入される兵力……通称、強化兵が無表情無感動にただただ整列していた。

強化兵

人造勇者計画の後釜として作られた、命令に絶対である兵士……
私たち聖女と同じ……いえ、それ以上に悲惨な道を歩かされた、作られた存在……
何をされたのかはわからないが、その表情からは、人間らしい感情の一切を感じなかった。
その境遇には同情もするし、憐憫の情も湧くが、それでも私の力ではどうしようもない。だから、目を逸らすしかない。
……ごめんね。
そう心の中でつぶやきながら、私はまた、これから私たちが攻める街を見に行った。


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「……では、そろそろ時間じゃな。全員持ち場につくのじゃ」
『了解!』
「鶴城殿、海側は頼んだぞ」
「お任せを。メリカさんもお気をつけて」
「うむ。イーリスも頼んだぞ」
「それはこっちの台詞ですよ〜。私が領主なんだから〜」
「ははは、そうじゃな」

教団に対抗するための最後の会議が終わり、全員が持ち場へ向かって部屋を出る。
海には、鶴城さんたちスートの人たちが主に配置され、この街のギルドの泳げる人たちがサポート。
街、及び外周側は主にトートサバトの面々が行うらしい。

「さて、ではハーラデス殿も、移動しよう」
「ええ。えっと、クーさん、でしたっけ?よろしくお願いします」
「うん、よろしく」
「メリカさんも、こんな時なのに……ありがとうございます」
「なんの、気にすることはない。わしらがお主の役に立てるなんて、この街の住人として光栄じゃよ。それに、アミリも喜ぶじゃろう」
「ですね」
「いや、喜ばんかもしれんな」
「どっちですか!?」
「えっと、行かなくていいのかしら?」
「あ、そうじゃったな」
「行きましょう」

呑気に会話しているところをクーさんに言われて、僕たちはそそくさと移動をするのだった。


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「あ、おねぇちゃんお帰り!」
「うん、ただいま。準備はどう、アミリ?」
「すんごくいい調子だよ!」

様子を聞くと、アミリはメリカ様に作成してもらった専用の杖をくるくると器用に回す。
形状は短い棒の先端に黄緑色の魔石を埋め込んだ短杖。
アミリでは、ロッドタイプの魔杖は使えないという判断でメリカさんは形状をそのようにしたらしい。
しかし、短杖といえど製作者は我らがサバトの長、メリカ様なのだから、性能は普通のそれとは比較にならない。しかも、メリカ様はもっとも長い時間アミリと一緒にいたのだから、同調率も半端ではないだろう。
でも、わざわざ手製の杖を作る必要があるほどの相手、ね……
そうとう強い人と戦うみたいね、アミリは。

「他のお姉ちゃん達もみんな準備を終えて配置についてるよ!」
「そう、報告、ありがとうね」
「えへへへへ……はいなのです!」

お礼を言いながら、私はアミリの頭を撫でてやる。
なんというか、この子は本当に可愛がり甲斐があるわね……ついついお姉さんらしくしたくなるわ……お兄ちゃんの前でも。

「……いい
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