「はいちょっと失礼」
「な、なんだ貴さっ!?」
崖上から飛び降りた私は、崖下にいる男の後ろに着地してすぐに手刀を放ち、男を無力化させる。
気絶させられた男が地面に倒れるのと同時、仲間4人が……若干1名マットを出して着地するというなんとも滑稽な方法を取ったが……同じように地面に着地した。
「さて、この男が例の?」
「ま、そうらしいわね。早速調べてちょうだい」
「了解了解」
マットを使って着地という滑稽な方法を取った星村が、倒れた男のポケットなどを探り、あるものを探す。
「あ、これかな?」
すぐに見つかったそれは、小さな鉄の箱。
星村がそれを見せると、ルゥちゃんが小首を傾げる。
「それが……ローラン君をさらった方たちの?」
「……って、話だよね」
ライカの話では、この小さな鉄の箱が、第四部隊のアジト……研究所……の入口、らしい。
教団内でも第四の研究所を知っている者は少なかったけど、まさか移動可能な異空間型の研究所だったとはね……
まぁとりあえず、調べてみようか。そう言いながら星村は自分のポケットを探って紙を取り出す。
「じゃ、ちょっと離れててね……文章省略メモ使用、発動“パラダイムシフト・ユノ=ルキア”!っと、“逢魔ヶ刻”」
テンポのいい掛け声をあげながら星村は紙……どうやらメモらしい……を空中の放り投げる。
と、メモから黒いなにかが荒れ狂ったように溢れ出し、そして一瞬、私たちの周囲すべてを覆い尽くし、消えた。
『ほい、準備完了っと。人払いもかけといたからしばらくは安心だ』
そう言っている星村は、いつのまにか薄い翡翠色の硝子球体のようなものに包まれていた。なのに、声は逆に澄んでいるかのようにしっかりと聞こえる。
さらに言うなら、黒が溢れたあと、私の目がおかしくなったのか、周囲の風景が、全体的に紫がかっているような感じに見えた……が、おそらく私の目ではなく、周囲が変わったのだろう。たぶん、星村のいっていた人払いの影響……だと思う。
「じゃあ、それの解析、お願いね」
『はいさー“アナライズ”開始〜』
頼むと、何でもないように星村は目を瞑って鉄の箱を宙に放る。
と、箱は宙に浮いたまま静止し、そして星村を覆っている硝子球体の前にまで移動した。
今回の星村の役割は、この小さな箱状の物体の解析、及び解錠。さらにその後で外から私たちの補助をすることだ。
戦えないわけではないのだけれど、やはりバックアップはあった方がいいと考えたための判断だ。
……中が迷路だったりしたら時間がかかるしね……
『うーん、これ自体はさほど難しいものじゃないけど、嫌ぁな感じがするねぇ〜まぁいいや。解錠しますよ〜』
星村がそう言うと、ポテッ、コロコロ……といった感じに箱が地面に転がる。
途端、箱が眩い光を発しながら、薄い正方形状の門のように真ん中に空洞を残して縦横に広がった。
「うわぁ〜すごいわねぇ〜」
「なんというか、私たちの街とは文化が違いますね……」
「そうですね、機械機械しいというか、なんというか……」
『まぁ、研究っていうと僕的にはこっちの機械機械しい方を思い浮かべるんだけどね。ともかく、さっさとその光くぐっちゃってください』
言われて見てみると、箱だった門みたいなものの空洞部分には、白と緑を混ぜたような光が溜まっていた。どうやらここを通ると第四のいる場所に行けるらしい。
「じゃあ、早く行きましょう」
『中に入ったらすぐに通信の確認をとりますね』
「了解」
3人は私に続いてね。と言ってから、私は真っ先に光の中に入る。
感覚的には、水の中を通ったような、そんな感じ。
視界は、白と緑に埋め尽くされる。
音は何も聞こえない……
そんな奇妙な感覚はほとんど一瞬のこと。すぐに私は、敵のアジト……教団師団第四部隊研究所の潜入に成功した。
目に入ったのは、研究所、というにはあまりにも明るすぎるくらいの緑豊かな地面……と、その場所にそぐわない鋼鉄の壁と扉。
どうやら、異空間と言っても、地面の上に建物を建てるという普通な建築方法を取ってるらしい。
しっかし、鉄の門のあとに鉄の扉かぁ……なんというか、面倒くさいわねぇ。
なんて考えていると、星村から通信が入る。
『テステス。デューナさん、聞こえますか?』
「ええ、聞こえるわ。これは……念話かしら?」
『まぁ、そんなものですね。他のみなさんは到着しましたか?』
「えーっと」
確認のために後ろを振り向くと、ちょうど三人が入った時と同じような門から出てくるのを確認できた。
「大丈夫よ、全員来たわ」
『そうですか、なら一旦全員に繋ぎましょう。みなさん、聞こえますか?』
「はい、聞こえます」
「大丈夫です」
「聞こえるよ〜」
『なら、大丈夫ですね。こちらはこの空間の情報を集めながら今回の目標に関し
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