人形遣いと若き竜・上

……それはそれほど離れていないそう、大体10年程前の出来事だ。

『さぁさ、よってらっしゃい見てらっしゃい。人形劇が始まるよ〜!』

ある一つの町で、一人の人間が小さな人形劇を開いた。
子供達は皆それを見て喜んでいた。
私も、その時は子供で、まるで生きているのかのように動いていた人形達を見て興奮し、はしゃいでいた。
しかし、そんな中で人形師の背中に隠れて、私たちのことをじっと見ている男の子がいた。
普通に育った私は、何故皆と一緒に楽しまないのだろうと不思議に思い、彼に話しかけた。

『ねぇ、一緒に見ようよ』

それが、私と彼の最初の出会い。


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「さぁさ皆さん、楽しい楽しい人形劇が始まりますよ〜!」

僕が舞台の用意をし終えると、可愛らしいフリルの着いてる服を着た10歳くらいの少女、クーが周りの人達によく聞こえるように声を張り上げて言った。
すると、周りから沢山の人達が集まってくる。
……ここは、山の麓の町、“トーラ”。国境にある鉱山の麓に位置するため、貿易や鉱山資源なんかで発展している町だ。
僕こと蓮杖 智也(れんじょう・ともや)は、仲間達と一緒に、故郷である街、“ライン”に帰る途中、ここに立ち寄り、人形劇を開いたのだ。

「ほらっトモヤ、お客さんどんどん集まって来てるよ!さっさと始めて!」
「勝手に君が呼び始めたんじゃないか……まぁいいや。はい。いいよ始めて」
「ん。了解。……それでは皆さん、人形師、蓮杖 智也の人形劇、どうぞお楽しみください!」

クーの掛け声と共に、僕は手を動かす。
それに合わせて舞台上に置かれていた、大体僕の手から肘くらいの大きさの人形達が立ち上がり始めた。

「さぁみんな、お客さんに挨拶しなさい」
『こんにちは!今日は僕(私)達の劇を見に来てくれてありがとう!』
『おお〜!』

立ち上がった人形達は、僕があいさつを促すとパタパタと可愛らしく手を降って喋りだし、お客さん達を驚かせた。
ちなみに、舞台に立っている人形は全部で10体弱。
劇は“シンデレラ”という何処かの街の子供向けの話をやる。

「じゃあみんな、早速始めようか」
『は〜い!』

僕の呼びかけに人形達は応え、劇が始まる。
喋ったり、まるで人間のように動く人形達を見て、人々は目を輝かせながら、一体どうやってるんだろう?とか、凄いよ凄い!なんて言ってる。
誰も彼もが楽しそうだった。
そして、人形劇は終わる。
沢山の人の拍手の音を聞きながら、僕は人形達と一緒にお辞儀をする。

「さて、面白いと思ってくれた方はここに自分のいいと思った金額を入れて下さ〜い!」

ちゃっかりとクーが箱を持ってお客さんからお金を回収していた。
どうやら誰もが面白いと思ってくれたらしく、沢山の金額が箱に溜まっていた。

「みなさんありがとうございました!また劇を開いた時にはよろしくお願いしますね!」
『みんなありがとう!』

クーが言うと、人形達がまたお客さんに手を振る。
お客さん達はまた拍手をしてから、少しずつ散っていった。

「お疲れ、トモヤ!」
「うん。お疲れ様。にしても、お金は別に取らなくてもよかったんじゃないかな?」
「いいじゃない。稼げる時に稼いでおいた方が後々楽になるんだから」
「そんなもんかな……?」
「おい、そこの人形師」

舞台の片付けをしながらクーと雑談していると、不意に誰かに声をかけられた。
振り向いてみると、そこには女性がいた。
背は僕より少し高いくらい。
綺麗に整った顔に、銀色の長髪。碧玉のような瞳。
服装は、ズボンにTシャツというあまり女性らしくないラフな格好だが、体つきは……出るとこは出て引っ込むとこは引っ込んでる、かな?
……綺麗な曲線美でした。

「……?はい、なんでしょうか?」
「……お前、たしか蓮杖と名乗ったな?」
「ええ。そうですけど……」

正確には、僕ではなくクーが言ったんだけど、まぁそんな瑣末なことはどうでもいいか。
肯定すると、彼女はもう一度確認するかのように僕の名前を確認してきた。

「……蓮杖、智也、だな?」
「ええ。間違いなく僕は蓮杖智也ですが……?」
「…………ああ、やっと会えた」
「…………?」

嬉しそうに彼女は笑っているが、僕は全く状況が飲み込めずに首をかしげてしまう。
そんな僕の様子を見て、ああ、そう言えばまだ名乗ってなかったなと彼女は言って、自分の名前を名乗った。

「私はナギ。ナギ・ラミエルだ」
「ナギさん、ですか……?」
「…………?覚えて、ないのか?」
「…………??」

申し訳ないけど、あなたみたいな人は見覚えが……
と、言おうとして、ふと、何かが引っかかった。
なんか、彼女の顔は見たことがあるような気がしたのだ。
しかし、誰のもの
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