それは、三年前の記憶。
教団の師団訓練施設の一室で、私と、私たちの部隊を統括する私の上司に当たる男性が対峙していた。
統括は、椅子に腰掛けながら、教団の一部の司教などの下卑たものと違った、人当たりの良い笑みを浮かべながら私に話しかける。
「さて、休養日明けだけれども、どうだったかな?息抜きになったかい?」
「ええ、まぁ。お陰様で落ち着いた時間を過ごさせていただきました」
「と、言うことはやっぱり愛しの彼のところにいったのかい?」
「愛しのって、何を言ってるんですか……彼はそういうのじゃなくて、良き友人ですよ」
「おやおや、顔を赤くして……乙女だねぇ……」
「っ!!そっ、そんな話をするために私を呼んだわけではないですよね!?」
「ああ、そうだったね。すまない」
統括の指摘に気恥ずかしくなって、私は本題を出すように促した。
と、それまで部屋に充満していた教団の戦闘部隊に似合わぬ普通に和やかな空気が、急に暗く冷たいものに変わる。
「……また、任務だよ」
「ターゲットは?」
「大丈夫、ただの大罪人さ。近隣の町で目撃情報があったから、さっさと見つけてやっちゃってってさ。はいこれ資料、移動中にでも見といて」
「わかりました。すぐにでも向かいます」
「……すまないね」
部屋を出ようとする私に対し、統括は謝ったため、私は足を止め、振り返った。
「何故謝ってるんですか?」
「……本来なら、君たちはまだ訓練と調整が必要でここにいるべきなのに、無理させちゃってるし、それに……嫌な仕事、押し付けちゃってるからね」
そんな統括の言葉に、私は苦笑をした。
まったく、この人は本当に優しいな……
まだ訓練が終わってないからと、そう言って私たちに回された仕事を減らして残りを突っぱねたり、私たちの負担になりすぎないように楽な仕事ばかりを選んでくれてたり。
この人の方が私たちの何倍も苦労してるのに、それでもすまないと言う。
まったく本当に、この人の下につけてよかった。
そう思いながら、私は何を言ってるんですかと言う。
「元々私たちはそういう仕事のために訓練してるんですよ?だから、いい実践訓練になります。それに、そんなに嫌じゃないですよ。……罪のないヒトを殺すより、ずっとマシですから」
「……ありがとう」
「では、いって参りますね」
統括の礼を聞いて少し微笑みながら、私は今度こそ部屋を出て、任務への準備をする。
……あの頃は、すごくとまで言わなくても、でも、幸せだった。
いい上司に恵まれ、私のことを知ってなお普通に接してくれる友人がいて……少し、恋もしていたりして……
でも、そんな幸せは、それから二年も……いや、一年と続かなかった。
結局それは、三年前の話なのだ。
今とは、違うのだ。
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「……ほれ、ココアじゃ。暖まるから飲むとよい」
そう言ってメリカさんが出してくれたココアを、ありがとうございます。とお礼を言ってから僕は飲み始める。
エルが去って、僕は話を聞くために、とメリカさんの部屋に連れてこられた。
ココアの温かさが体に広がっていき、ほぅとため息をつく。
「……どうやら、幾分か落ち着いたようじゃの」
「ええ、まぁ」
「……そしたら、いいかの、話を訊いても」
「……はい。何から話した方がいいでしょうか?」
僕が訊くと、メリカさんは、ふむ、そうじゃの……と少し考えたあとで訊く。
「まずは、なにがあったのか、じゃの。アミリの様子から、よくないことが起きたのは明白じゃがの」
「アミリちゃん……?が、どうしたんですか?」
「む?知らんのか。わしらはアミリが廊下で倒れてたのを見つけて急いでお主を探したんじゃが……その時は一緒しなかったのか?」
「え?倒れたってまさか……!!」
「大丈夫じゃ。弱ってはいたが気絶ですんどる。外傷もない」
「そう……ですか」
そう答えながらも、僕はアミリちゃんはきっと襲われないだろうとたかをくくって一人でその場を後にしたことを後悔した。
あの時一緒に逃げてれば、アミリちゃんを危険な目に合わせないですんだのに……!
「まぁ、気がついてこちらに来れるようなら来いと伝えるように言っておいたから、あとでここにくるだろう。さて、話が逸れたな。結局なにがあったのじゃ?」
「そうですね……お風呂を出た時にアミリちゃんに会って……」
そして、僕は今までの経緯を話す。
僕の部屋に侵入者がいて、僕を殺しに来ていて、あの部屋まで逃げたこと……
流石に死のうと思っていたとかそういうことは省いたけど、状況を飲み込めるような説明をするように努力する。
そして、説明を終えた僕はすぐにメリカさんに頭を下げて謝る。
「……すみません、メリカさん。アミリちゃんを危険な目に合わせてし
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