「おい、メーリン」
「なんですか、サーニャ様?」
「今日は黒ミサじゃが、お前相手いないよな?」
「………………」
ミラーサバト、その中心であるサーニャ様は、ボクを呼びつけてすぐに、それはなんの嫌がらせなの?と言った感じの質問を投げかけてきた。
いきなりの言葉に、ボクはグサッとなりながらも、とりあえず答える。
「ええ、まぁ……たしかに、相手いないからお酒飲む気ですけど……」
「む、酒を飲む気じゃったか。ならちょうど良い。今夜、ここに行ってくれないか?」
そう言ってサーニャ様はメモを手渡す。
どれどれ、と内容を確認してみると、書いてあることは、場所を示すには少し不思議な書き方をしていた。
「あの……サーニャ様、行き方を書いてあるのはいいんですけど、肝心の店の名前が……」
「うむ、それは仕方がないのじゃ。わしも知らんからの」
「え?知らないって、どういうことですか?」
「いやの、わしも人に頼まれての?場所のメモを受け取って、ここに誰か行かせてこいとな。じゃから、詳しいことはわからんのじゃ」
「そうですか……」
うーん、サーニャ様にそんなことを頼める人がいるとしたら、他のサバトの長達か、または……ラインのあの人達とか、かな……?
サーニャ様の話を聞いて、そう思いながら、ボクは曖昧に頷いた。
「じゃが、一応、酒は飲めると聞いたの。今日はサバトの経費で落としてやるから、行ってはくれんかの?」
「……わかりました。そこまで言うなら、行きます」
「すまんの、黒ミサの日なのに別のことを頼んでしまって……」
「いいですよ。どっちにしたってボク一人で飲むつもりだったんで」
「……すまんの」
どうせ、ボク以外に相手がいない魔女なんていないから、一人で飲むしかいもんね……
悲しい現実にどんよりしながらも、ボクは承諾するのだった。
××××××××××××××××××××××××××××××
黒ミサが始まる少し前に、ボクはサバトからでて、近くの街に来た。
幸い、メモに書いてあるところは、現在のサバトの拠点の近くの街であったため、移動にさほど時間はかからなかった。
というか、サーニャ様に依頼した人は、サバトの拠点とこの街が近かったからサーニャ様に依頼したんだろうなぁ……
まぁそれはともかく……
今日はもうこれ以外の仕事はないし、お酒飲めるそうだし……
「思いっきり息抜きしよ〜っと♪」
と、言いながら、ボクは満面の笑みを浮かべた。
ふっふふんっふっふふんっ♪と鼻歌を歌いながら、ボクはスキップしてメモに書いてある場所へ向かう。
仕事の終わったあとのボクのこの様子を見て、子供っぽいとか、落差が激しすぎるとか、演技じゃないの?とか言われるけど、ボクの本来の性格はこんな感じだし、そもそも見た目は完全に子供なんだから、どこもおかしいところはないと思う。
まぁ、それはともかく、書いてある場所に向かってるには向かってるんだけど……
「路地裏の突き当たりって、すっごい怪しい場所よね〜」
そもそも、メモに書いてあること自体あまり信用出来ない。
とりあえず、路地裏の突き当たりに青い扉があるから、そこに入ればいいよ☆
って書いてあったから、なぁ……
というか、言葉でいうならともかく、文章で書かれてるとすっごいムカつくなぁ……
せめて、このメモを書いた人が女の人だといいなぁ……
男の人だったら、なんかおかしい気がするし……
と、そんなことを考えていると、路地裏に到着した。
そして、目の前には……
「……なんで、扉しかないの……?」
たしかに、青い扉があった。
だけど、青い扉しかなかった。
……いったいどうすればいいのかな……?
笑えば、いいのかな?
と、思ったのも束の間。すぐにボクは扉が普通のものとは違うことに気がついた。
扉から、光が漏れてる……
てことは、どこかに通じてるってことかな〜?
まぁ、入れってメモに書いてあるから……
「ノックしてお邪魔しま〜す」
とか言いつつ、ノックしないでボクは扉を開け、中に入った。
「いらっしゃい」
扉をくぐると、その先には、酒場のような、しかしそれよりも静かで落ち着くような雰囲気の場所にボクはたっていた。
カウンターの方にいる、店主みたいなおにーさんが声をかけてくる。
「お嬢さんが今日のお客さんやね?初めまして。われは北岡 銀次(きたおか・ぎんじ)いうもんや。よろしくな」
「初めまして!ボクはメーリンです!よろしくなのです!」
姿を見てみると、別段悪そうな人には見えないため、ボクは少し安心しながら挨拶を返した。
と、おにーさんはおや?と首を傾げた。
「僕……って言ってるってことは、あんさん、その格好で男の子なんか?」
「むぅ、違うよ〜!ボクはちゃんと見た目通りの女の子だよっ!」
「ああ、すまんすま
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